金谷駅から1駅3分。大井川鐵道の本社と車庫がある、観光SL列車の始発駅。島田市は静岡県の中部に位置する、人口約10万人の宿場町。市内を大井川が流れ、架橋が禁止された江戸時代に両岸の宿場町が栄えた。茶の生産と関連工業が盛ん。駅弁は駅前の鉄道会社の商業施設での販売。1927(昭和2)年6月10日開業、静岡県島田市金谷東2丁目。
静岡駅からJR東海道本線の電車で約30分。JR線と大井川鐵道の乗換駅。駅弁は新金谷駅弁の一部が、小さな駅舎の売店で売られたが、売店の閉店により2020年代からは売られない。1927(昭和2)年6月10日開業、静岡県島田市金谷。
新金谷駅から電車やSL列車で1時間強。大井川本線と井川線の乗換駅で、観光SL列車の終着駅。川根本町は静岡県の中部で大井川の上流域を占める、人口約7千人の町。茶の産地として名高い。駅弁は新金谷駅弁のごく一部が買える。1931(昭和6)年12月1日開業、静岡県榛原郡川根本町千頭。
大井川鐵道では2016(平成28)年の秋に発売。ここでは土休日のみの販売。北海道日高産のつぶ貝と日高昆布のだし汁で炊いた御飯につぶ貝を載せ、焼鮭、玉子焼、花れんこん、漬物を添える。つぶ貝の駅弁とは珍しい。貝のクセや歯応えはそれほど強くない、おとなしい貝飯。鮭がうまかった。価格は2017年の購入時で980円、2022年4月から1,000円。
2001(平成13)年に当時の北海道日高支庁が日高オリジナル弁当コンテストを実施、9月から道の駅で販売したグランプリ作品「日高つぶめし」は連日完売の人気となり、翌2002(平成14)年には日高本線の静内駅でも販売、2005(平成17)年には京王百貨店の駅弁大会で実演販売もされた。調製元のホテルが2013(平成25)年に破産して終売したが、このホテルの経営を引き継いだ会社が翌2014(平成26)年に、この弁当の販売を復活させた。
ここで、沿線人口や乗客の減少で約半世紀も経営難の大井川鐵道では、2013(平成25)年の国土交通省のツアーバス規制で団体客が激減し危機が深刻化、2015(平成27)年に官製の地域経済活性化支援機構により、エクリプス日高をスポンサーとして再建することとなり、同年に同社の子会社化、2017(平成29)年に完全子会社となった。
その北海道の日高つぶめしの調製元と、大井川鐵道の親会社は、同じ会社。公式な発表はないが、北海道日高の弁当と同じようなものが大井川鐵道で売られるのは、これが縁なのではないかと考えている。こちらの調製元は大鉄フード改め東海軒大鉄フード改め東海軒金谷工場で、さすがにツブ貝の量は北海道の半分ほど。
※2022年4月補訂:値上げを追記2016(平成28)年までに発売か。既存の「大井川ふるさと弁当」と同じような絵柄の掛紙で、大きく平たい容器を包む。中身は日の丸御飯に7区画のおかず、エビフライやローストチキンやマグロ照焼と玉子焼とかまぼことタラの芽天、ナスピーマン味噌、黒はんぺん揚げとわさび漬、サクラエビ佃煮、五目豆、抹茶わらび餅。下の「川根路三色弁当」や「味くらべ」と同じようなものが入るお弁当。価格は2017年の購入時で1,150円、2019年時点で1,200円、2022年4月から1,250円。
※2022年4月補訂:値上げを追記2005(平成17)年の春頃に発売。過去には要予約の駅弁とされたこともあった。醤油飯でなく文字通り緑茶で炊いた茶飯に、焼マス、黒はんぺん揚、マグロ照焼、タラの芽天、かまぼこ、きんぴらごぼう、山芋の酢漬、サトイモやタケノコなどの煮物、サクラエビ佃煮、わさび漬などのおかず。抹茶系の渋みや苦みはなく不思議な冷涼感が漂う。
緑茶の名産地である静岡県の中でも、大井川鐵道の走る大井川沿いで栽培される、川根茶は最高級品としてブランドネームを確立する。そんな予備知識がなくても、このあたりで買える市販の安茶や缶茶はなんとなく美味い気がする。高級茶はデパートでも通販でも日本中どこでも買えるので、お茶を静岡土産とするならば、地域のスーパーで地元の市販品を買うとよいと思った。価格は2017年の購入時で1,080円、2019年時点で1,150円、2022年4月から1,180円。
※2022年4月補訂:値上げを追記2005(平成17)年7月30日に購入した、金谷駅弁のふた。上記の12年後と、見た目や中身はほとんど同じ。当時の調製元は大鉄フードだった。
2004(平成16)年度に発売。静岡の方言を記した竹皮編み柄のボール紙製容器に、SL列車の絵はがきを1枚添えて、SL列車の写真でデザインした掛紙を巻く。中身はおにぎり2個、ヤマメ甘露煮、タケノコやシイタケなどの煮物、サトイモ田楽、鶏唐揚、サクラエビ佃煮、ヤマイモ、オレンジなど。見た目どおりの味。この体裁はSL列車にも似合う。価格は2012年時点でおそらく950円、2013年時点で缶茶付きで1,050円、2014年4月の消費税率改定で1,100円へ値上げ、2017年時点で本体のみ1,080円、2019年時点で1,150円、2022年4月から1,200円。
※2022年4月補訂:値上げを追記2012(平成24)年9月8日に購入した、金谷駅弁の掛紙。当時の調製元は大井川鐵道の子会社である南アルプス産業「大鉄フード」であった。鉄道会社の経営難で2014(平成26)年2月に弁当部門を静岡駅弁の東海軒へ身売り、「東海軒大鉄フード」の名称を一時的に使い、ほどなく東海軒金谷工場と表記するようになった。価格と調製元の表記を除き、5年後とまったく同じ。
2005(平成17)年7月30日に購入した、金谷駅弁の掛紙。上記の2012年のものと中身も含めて同じだが、食品表示ラベル上の商品名が「SLカゴ弁当」となっているほか、容器はボール紙製でなく竹皮編みであった。
弁当にはSL写真の絵葉書が添付され、購入時は「さくら」のヘッドマークを付けるC11形蒸気機関車の姿。ローカル線向けの小柄なタンク機が天下の寝台特急を牽引したかな?と一瞬考えたが、そういえば昭和40年代に3年間だけ、短区間だけ列車の進行方向が逆になる佐世保線の早岐駅と佐世保駅の間で牽いていた。さすがSL動態保存運転の先駆者、やることがしっかり史実に基づいている。東京駅と長崎駅を結んだ寝台特急列車「さくら」は、佐世保駅発着分が1999年12月に、列車そのものが2005年3月に廃止された。
2012(平成24)年7月に、夏休み期間限定に予約販売する弁当として発売か。市販の仕出し弁当向けボール紙製容器をそのまま使用、中に詰めた9区画のプラ製トレーに、のり、ふりかけ、五目っぽい三色の白飯、サクラエビ佃煮と玉子焼、山里の天ぷらという揚げ物、かまぼことマグロ照焼とわさび漬、鶏唐揚と黒はんぺん揚げ、サトイモやタケノコなどの煮物、オレンジとさくらんぼが入っていた。駅弁というよりはむしろ、SL列車に乗りに来る客などの、団体向け仕出し弁当という雰囲気。価格は2017年の購入時で1,200円、2019年時点で1,250円、2022年4月から1,300円。
※2022年4月補訂:値上げを追記東海軒の仕出し弁当向けボール紙製容器をそのまま使用、12区画に仕切られた中身は、のり、サクラエビ、五目の三色の御飯、マグロ照焼とれんこんとかまぼこ、マカロニサラダ、ナガイモの酢漬け、エビチリ、チャーシューと玉子焼、サトイモやタケノコなどの煮物、鶏肉巻やウインナーなど、黒はんぺん揚げとわさび漬。上の駅弁「川根路三色弁当」の上等版のようなものか、中身の少なからずが共通で、雰囲気もやはり団体向け仕出し弁当という雰囲気。値段を見ると高級な駅弁だが、印象はどうも安っぽい。
金谷駅の売店で、駅弁とともに販売されていたお惣菜。スーパーの惣菜弁当向けなプラ容器に、おかかのおにぎり、さけのおにぎり、たくあん2切れを詰めていた。これを竹皮に包んで、汽車の時代、明治時代の駅弁を再現!と煽れば、話題と注目を得られるのではないかと思った。
大井川鉄道でのSL列車は1976(昭和51)年7月9日(金)の運転開始。1927(昭和2)年の開業時は蒸気動力であったから、正確には復活である。1942(昭和17)年から北海道のローカル線を走り、1975(昭和50)年11月に釧路から新金谷へやってきた蒸気機関車C11227が、オハフ33+オハ35+オハフ33の3両の古い客車を牽引し、金谷11:41→13:01千頭、千頭14:21→15:53金谷の一日1往復のダイヤで、金土日月曜日の運転と火水木曜日の整備・保守というローテーションで走り始めた。以後、1979(昭和54)年8月の国鉄山口線が続き、大井川鉄道でもSLや客車を増やし、現在では北海道から熊本県まで全国各地で行楽期や週末を中心に観光SL列車が走る。それでもほぼ毎日のようにSLが走る路線は、国内ではいまだに大井川鐵道のみである。
昭和40年代、国鉄の動力近代化計画により蒸気機関車がその数を減らすにつれて、蒸気機関車の姿を写真機や蓄音機などで記録しようという人々が駅や機関区や線路際に押し寄せるようになった。北海道目名、岩手県奥中山、岡山県布原などの山奥に三脚の山ができ、SL関連の雑誌や書籍やレコードなどが乱造され、そのブームは過熱した。そんな中で1975(昭和50)年12月の室蘭本線や夕張線での最終列車、翌年3月の追分機関区での運転終了で最高潮に達し、京都の梅小路蒸気機関車館の中を除いて生きた蒸機がいなくなる。木材やダム建設資材の輸送に活躍し、沿線の過疎化と交通の自動車への転換により貨客の減少に苦しんだ大井川鉄道がここで、全国初となるSL保存鉄道に進出し、経営の立て直しを目論んだのである。
金谷駅の売店で「日替り弁当」の名前で、駅弁とともに販売されていたお弁当。スーパーの惣菜弁当向けなプラ容器に、日の丸御飯、揚げ物、焼売、焼き魚、ウインナー、玉子焼、かまぼこ、わさび漬けカップ、酢の物などを詰めていた。
2017(平成29)年か、その前年の発売か。2018年時点でも「新発売」の扱いで販売している模様。持ち帰り寿司向けの薄く平たく小さな容器に、川根いなりの名と特徴でデザインした掛紙を巻く。中身は五目酢飯を油揚げに包んだ、直角二等辺三角形のおいなりさんが3個と、五目豆と生姜。
川根いなりとは、2010(平成22)年から静岡県島田市川根町、大井川鐵道の駅でいうと家山駅や抜里(ぬくり)駅のあたりで、地域ぐるみで取り組まれているプロジェクト。2011(平成23)年1月に地域で結成された「川根いなりで包んであげ隊」では、川根いなりのルールを「形は三角形で川根を囲む山々を表すべし」「加盟店が思う“川根らしさ”を1個だけ取り入れるべし」「川根茶とともに振る舞うべし」で、食べ方の提案を「必ず川根の空気も一緒におなかに入れながら食すべし」「大切な人と食すべし」「食べて思いだした何か、を人に伝えるべし」と定義、後者がこの駅弁の掛紙にも記される。ネット上では2012年以降は表だった活動が見えないが、川根温泉の食堂で提供されたり、こうやって駅弁のようなものになったりしている。この駅弁は、2022年からは売られていないかもしれない。
※2023年4月補訂:終売を追記大井川鐵道のSL列車「きかんしゃトーマス号」の運行開始に合わせて、2014(平成27)年7月に麦茶付きで950円の予約専用弁当として発売、翌年6月に中身を買えて単体で一般販売を開始した模様。パッケージの絵柄はもちろん、イギリスの幼児向けテレビ番組「きかんしゃトーマス」のキャラクター。上面のトーマスとジェームスは、大井川鐵道の蒸気機関車を装飾した実物の写真である。
キャラクター柄でない水色の折箱に収めた中身は、ツナの太巻きと、カニカマと玉子焼の細巻き、ハンバーグ、エビフライ、スパゲティ、ウインナー、フライドポテト、オムレツ、肉団子など。子供向けというか、ジャンクフードというか、まるで冷凍商品の詰合せ。そんな中身が何であれ、キャラクター列車を彩る関連グッズで、トーマスに会いに来た子供たちの記憶に残ることだろう。駅に加えて列車内でも売りに来た。なお、きかんしゃトーマスの駅弁は先に新神戸駅で出ている。2020年の夏までに「きかんしゃトーマスランチボックス」と交代し終売。
きかんしゃトーマス号は、2014(平成26)年7月12日の運行開始。鉄道会社とソニー・クリエイティブプロダクツとのライセンス契約により、C11形蒸気機関車227号機をトーマスの姿に改装、客車をオレンジ色に塗り替えて、大井川鐵道の新金谷駅〜千頭駅で走り始めた。千頭駅に静置する9600形蒸気機関車49616号機はヒロの姿に。翌2015(平成27)年にはC56形蒸気機関車44号機をジェームスの姿に改装し一日2便化、千頭駅ではC12形蒸気機関車208号機がパーシーになった。2016(平成28)年には路線バス向け小型車両を改装したバスのバーディーが登場し、SL列車と併走し始めた。
鉄道マニアやSLマニアは、2012(平成24)年にC11227を真っ青に塗った「SLくん」の時と同じく、貴重な蒸気機関車を、真っ黒であるべきSLを、こうも無残に汚して穢してしまったと、憤慨したようだが、列車はチケットが即日完売の大盛況で鉄道会社の再建に貢献し、3年の契約を延長して毎夏の運行を続ける。切符の入手は今も難しく、ネット上でダフ屋の餌食となる。
※2021年3月補訂:終売を追記島田商工会議所青年部の監修・企画により、2009(平成21)年4月1日に静岡空港の空弁として発売。実際には同日から金谷駅と新金谷駅で販売を開始。価格は発売時にはお茶付きで1,050円。上記の駅弁「大井川ふるさと弁当」と同じボール紙製容器を、島田の自慢や名所名物と思われるイラストをちりばめた掛紙で巻く。
中身はサクラエビを混ぜた御飯の「富士山むすび」、ウナギ蒲焼を刻んで巻いた巻き寿司「うなぎロール」、マグロのメンチカツ、山里の天ぷら、タケノコやサトイモなどの煮物、わさび漬カップ、缶詰みかんなど。宣伝文や解説でうまく見せれば、おしゃれな駅弁になる気がした。2013年までの販売か。
※2015年10月補訂:終売を追記1996(平成8)年12月21日9時の調製と思われる、昔の大井川鉄道金谷駅弁の掛紙。大井川鉄道といえばSL列車、この駅弁も主にSL列車の乗客に向けて販売されているようで、名前も価格も観光客向け。