上野駅から特急列車で1時間ちょっと。水戸市は茨城県の中部で那珂川が流れる、人口約27万人の城下町で県庁所在地。江戸時代に徳川御三家のひとつ水戸徳川家が収める水戸藩が置かれ繁栄した。駅弁は明治時代から3社が競い賑やかだったが、2000年代に撤退、休業、倒産ですべて消えた後、2011年に地元の居酒屋が進出し駅弁が復活した。1889(明治22)年1月16日開業、茨城県水戸市宮町一丁目。
JRグループの観光キャンペーン「茨城デスティネーションキャンペーン」の開催に合わせ、2023(令和5)年10月1日に、水戸、勝田、東京、新宿、上野、大宮の各駅で、「常陸牛のすき焼きと常陸の輝きの生姜焼き辨當」(1,380円)「秋限定水戸印籠弁当さつまいもごはん」(1,300円)とともに発売。
長方形のプラ容器に白飯を詰め、牛カルビ焼肉と豚肉の味噌焼きを載せ、人参ナムル、小松菜ナムル、紫キャベツのマリネで補い、れんこん、しいたけ、くりを添える。御飯は茨城県産米、牛肉は茨城県常陸牛振興協会が認定した黒毛和牛「常陸牛」、豚肉は茨城県畜産センターが開発し2018年から販売されるブランド豚「常陸の輝き」と、食材の大部分を茨城で固めたものの、掛紙を読まずに食べれば茨城でも日本でもない、豚肉もある韓国風焼肉弁当となる。キャンペーンや現地での存在感はいかに。
2021(令和3)年3月27(日)に水戸駅と勝田駅と東京駅で発売。2019(令和元)年10月の台風19号による災害のため、袋田駅〜常陸大子駅で運休していたJR水郡線が、同日に全線で運行を再開することに合わせたもの。長方形の容器に炊込飯を敷き、しゃも肉そぼろ、玉子そぼろ、きんぴらごぼう、しゃも焼き、山菜、長ねぎ焼で覆い、大根桜漬を添える。茨城県には奥久慈の常陸大子駅に、昭和時代からの名作「しゃも弁当」があり、こちらはそれとは量でも質でもだいぶ異なる、ジャーキーのような硬い肉を少量だけ詰めた感じ。価格は2021年の発売時や購入時で1,100円、2023年時点で1,250円。
※2023年6月補訂:値上げを追記2021(令和3)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売。スリーブに駅弁の調製印のような「上野駅−仙台駅2020.3.14全線復旧開通記念」の印刷があり、2020年3月の発売に見えるが、そうではない。また、「常磐街道味めぐり」という駅弁の名前から想像しがたい、肉と肉と肉の弁当である。さらに、常磐街道という交通路が現状あるいは歴史上に存在したことはないと思う。
スリーブの絵柄は、東北本線を含めた旅客案内上のJR常磐線の路線図、特急ひたちの写真、3種の肉の名前と絵柄、観光キャンペーンなどのロゴマークなど、情報量が多い。中身は白飯を常陸牛の牛肉しぐれ煮、川俣シャモの鶏塩こうじ焼、仙台を思わせる牛たん焼で覆い、ニンジン、シイタケ、クリ、梅れんこん、いわき名物「長久保のしそ巻」などを添える。主役であるはずの肉たちが、水戸駅弁よりもどれもいまいちでこの価格。催事場でなく現地での味はどうだろう。価格は2021年の発売時や購入時で1,500円、2023年時点で1,680円。
※2023年6月補訂:値上げを追記「牛べん」と同じく、2011(平成23)年4月までに水戸駅で発売か。見た目はその「牛べん」とそっくりで、ボール紙パッケージのインクが深い青色から茶色に変わり、商品名と御飯を覆う肉が牛から豚に変わるくらいしか差がない。風味も「牛べん」と同じく、肉がぐにゃぐにゃとパワフルであり、他の駅弁にない個性を持ちながら、豚の臭みがなくスッキリしていた。価格は2011年の発売時で950円、2014年時点で1,000円、2023年時点で1,180円。
宣伝はされていないがパッケージに書いてある「ローズポーク」とは、全都道府県で五指に入る養豚県である茨城県で1970年代後半頃から生産される、全国農業協同組合連合会が商標を持ち、その茨城県支部ないし茨城県銘柄豚振興会が豚と飼料と農家と販売店を管理あるいは支配する銘柄豚。
※2023年6月補訂:値上げを追記JR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2016」へのエントリーに向けて、2016(平成28)年10月に発売か。とはいえ、この年の1月から3月まで売られた下記の駅弁「いばらきいいものとりあい弁当」と、名前も価格も容器も中身も調製元も同じである。写真を使う横長の掛紙が、イラストを使う縦長に変わった。味については、中央に据わる鶏照焼の味付けが、まるでタレから塩になったくらいに軽くなった気がした。2020年3月までの販売か。
※2020年12月補訂:終売を追記2018(平成30)年4月20日に購入した、水戸駅弁の掛紙。絵柄と名前と中身と味と価格は、1年半前と変わらない。従前の掛紙にあった茨城県の宣伝文が、ごっそり消えていた。
茨城県とJR東日本水戸支社の観光キャンペーン「気になるイバラキ」の開催期間に合わせて、2016(平成28)年1月1日から3月31日まで販売。掛紙にもキャンペーンと販売期間の情報が載り、中身の写真を茨城県形にくり抜いて掲載する。
中身は、白御飯の上をとりそぼろと錦糸卵で覆い、鶏照焼、玉子焼、花れんこん、梅干し、シイタケ、クリ、きんぴらごぼうを散らすもの。茨城県が日本一だという栗やレンコンや鶏卵などを詰めたというが、おおざっぱに言うと鶏丼。上記のとおり、水戸駅弁に牛丼と豚丼があっても鶏丼はないので、このまんま売り続けてもよいのではと思った。
2013(平成25)年8月の発売。同じ水戸駅の駅弁「豚べん」と名前が似るが、見栄えも内容もまったくの別物。コンパクトに感じる正方形の容器の半分が白御飯、半分が茨城豚ローズポークのうめカツ、チーズカツ、ヒレカツが計5切れと、梅と煮物。これはつまりトンカツ弁当で、よく見れば掛紙の中央に小さな文字でそう書いてある。トンカツ弁当らしい中身で、しかし外観も中身も駅弁らしく、ボリューム満点。水戸を感じられなくても、良い車内食。2016年までの販売か。
※2019年8月補訂:終売を追記2002(平成14)年の初頭頃に発売。丸い容器に御飯を敷いて、楕円形のトンカツに特製デミグラスソースをかけて千切りキャベツなどとともに載せる。駅弁の売店で売られても、見た目は掛紙の内コンビニ弁当であり、旅心はまるでない。しかし出来立ての牛丼が280円で食べられるような時代には、従来の体裁に凝った高価な弁当に加え、普段の駅の利用者にも買ってもらえるこの手の弁当も求められたのだろう。
この駅弁は2008年5月頃の調製元の休業により売られなくなり、2010年1月に駅弁売店そのものが閉店したため、今後は入手できないのではと思う。
※2010年3月補訂:終売可能性を追記2007(平成19)年夏の発売か。竹皮タイプのボール紙容器に商品名を書いた掛紙を巻く。中身は黄門米コシヒカリの白御飯の上に、おかかと海苔を敷いて鶏竜田揚を転がし、ミョウガとシシトウとタクアンを散らすもの。鶏の衣の味付けはとても濃く、痛みやくどさを覚えた。そんなB級グルメは良いか悪いかは別にして、印象に残るもの。この駅弁は2010年1月の調製元の撤退(倒産?)により失われた。
※2010年3月補訂:終売を追記日の丸御飯に、ヒレカツをふたつと、紫蘇巻かつという薄切豚肉としその葉を巻いて揚げたカツを2個に、野菜とレモンと、マスタードと醤油と、ミニカップゼリーと大根桜漬。ふたの見た目どおり、まさにとんかつ弁当という内容で、シンプルこの上ない。カツはすっかり冷めてもジューシーでおいしく、地味な駅弁として放置しておくにはもったいない感じ。この駅弁は2008年5月頃の調製元の休業により売られなくなり、2010年1月に駅弁売店そのものが閉店したため、今後は入手できないのではと思う。
※2010年3月補訂:終売可能性を追記細長い容器に白飯を詰め、鶏肉のきじ焼きと青のりと錦糸卵で覆う。たれが香り分厚くコシのある鶏肉が印象的。駅弁として水戸駅でも全国的にも無名の鶏飯だと思うが、実力はある。この駅弁は2010年1月の調製元の撤退(倒産?)により失われた。
※2010年3月補訂:終売を追記2008(平成20)年秋の発売か。上記の駅弁「鳥めし」と同じ意匠の容器を使用、中身は白御飯の上に鶏肉のぶつ切りとマイタケ、錦糸卵やパプリカを少々置いて、シイタケときんぴらとたくあんを添えるもの。「鳥めし」のリニューアルとしたら、値段が4割も上がったのに鶏肉の分量が寂しくなったので、軍鶏の使用とか舞茸入りとか黒酢蜂蜜ダレとか、パッケージに記されるグレードアップがあるにせよ、個人的には鳥をたくさん喰えた以前のタイプが好み。この駅弁は2010年1月の調製元の撤退(倒産?)により失われた。
※2010年3月補訂:終売を追記