鹿児島中央駅から特急列車「はやとの風」で約1時間半。吉松駅は、かつて鹿児島本線が日豊本線を分けた、南九州で屈指の鉄道結節点であった。駅弁は国鉄時代からの駅弁屋である吉松駅構内営業が、九州新幹線部分開業に伴う観光列車の整備を機に駅弁立売とホーム上売店を再開し、日中は駅弁が買えた。2018年9月限りで閉店。1903(明治36)年9月5日開業、鹿児島県姶良郡湧水町川西。
底面に経木を使った正方形の容器を、駅周辺の俯瞰イラストを描く掛紙で包み、ビニールひもでしばる。中身は前回収穫の「おべんとう」と同じく、ホカホカ御飯と冷蔵おかずの組み合わせで、細長日の丸俵飯にかき揚げ、揚げナス、かまぼこ、玉子焼、ゴーヤーなど。他の収穫報告を見ると、おかずの種類は一定していない模様。駅弁文化を楽しむためのお弁当。「九州鉄道構内会」公式サイトによると、吉松駅の幕の内弁当は3種類が存在するというが、この1種類しか見たことがない。駅弁屋の閉店により、2018(平成30)年9月限りで終売。
2004年3月の九州新幹線の部分開業に伴い、西鹿児島から改称された鹿児島中央駅と吉松駅を結ぶ観光特急「はやとの風」2往復が新設されたほか、吉松駅と人吉駅を結ぶ観光鈍行「いさぶろう」「しんぺい」には観光向け車両が投入された。同時に吉松駅では、長らく閉店が続いていたホーム上売店の営業が再開され、駅弁の立ち売りも復活し、幻の駅弁が約5年ぶりによみがえった。
※2018年9月補訂:終売を追記吉松駅の幕の内弁当。正方形の容器の半分は白御飯で、残り半分はトレーに入ったおかず。かぼちゃやごぼうの煮物に蒲鉾や玉子焼などよく見る食材と、葉の衣揚げのようなあまり見ない食材が、多種類折り重なる。
吉松駅は明治時代、鹿児島本線と日豊本線を分ける鉄道の要衝であった。昭和に入ると、現在の鹿児島本線と日豊本線が全通し、それらの旧線は肥薩線と吉都線に名称を変え、一転してローカル線となった。それでも熊本と宮崎を結ぶ急行列車「えびの」3往復が長い間この駅を経由し、列車の停車時間に合わせて駅弁の立ち売りも実施された。
しかし高速道路の整備により利用者が減少したため、2000年3月のダイヤ改正で急行列車が廃止される。以後は毎時1本ほどの普通列車のみが発着するだけの、1日の利用者が数百人の駅は、広い駅構内をさらに持て余す。駅弁も駅での販売をやめて駅前での注文販売となったが、それでも利用者の少ないローカル駅で公式な駅弁が残っていること自体が貴重だった。駅弁屋の閉店により、2018(平成30)年9月限りで終売。
※2018年9月補訂:終売を追記鉄道の町である吉松の銘菓。発泡スチロールのトレーを入れた白いボール紙の箱を、SL絵柄の包装紙で包む。赤いビニールで個別包装された中身は、かつてパン屋さん等で売られていた甘食の中に白あんを詰めたような、甘い甘い揚げ饅頭。
甘さ控えめの世の中では生き残りが大変そうに見えて、ローカル線の旅の名物としてすっかり定着した。駅や駅前では買えず、駅から橋のほうに数分歩くと右側に見える店で買えた。2015(平成27)年5月の閉店で幻に。
※2016年7月補訂:終売を追記