鹿児島中央駅から日豊本線と肥薩線を乗り継いで約1時間半。明治時代から建て替えられなかった駅舎を備える山間の小さな駅に、2004年3月の九州新幹線開業を機に観光列車が走ったり駅弁が出現、その後は鹿児島空港と霧島温泉郷の間の観光地として、観光客が車で立ち寄るスポットになり、駅弁が大いに売れている。1903(明治36)年1月15日開業、鹿児島県霧島市隼人町嘉例川。
九州新幹線の新八代駅〜鹿児島中央駅の開業と、観光客向け臨時特急列車「はやとの風」(鹿児島中央駅〜吉松駅)の運行開始を記念して、嘉例川駅までの一日限りのイベント用弁当として、2004(平成16)年3月13日に販売。好評のため5月2日から駅前物産館での販売が開始され、6月18日から金土日曜の「はやとの風」車内でも一日5個の販売が始まった。
竹の皮でできた容器に、駅の開業以来100年以上の歴史を刻む、現存する九州で最古の駅舎の写真を使う掛紙をかける。地元の素材を使った中身は、椎茸とタケノコの炊込飯、薩摩芋の天ぷらと称する薩摩揚げ、キノコ入りコロッケ、椎茸やタケノコの煮物など。すべてが冬の南国の常温で素晴らしい旨さを出していた。価格は2004年の発売時で1,050円、2014年4月の消費税率改定で1,080円、2019年4月から1,200円、2022年4月から1,500円。
JR九州の駅弁キャンペーン「九州の駅弁ランキング」のち「九州駅弁グランプリ」には、2004年の第1回から毎回出品、4位、3位、2位と来て、2007〜2009年には3年連続で1位を獲得した。2010年は5位に後退したが、50種程度の出品によるこの数字であり、もはや九州を代表する駅弁のひとつであると言い切って間違いない。2010年代で年間約6000個が売れたといい、地元のシイタケ、ダイコン、ジャガイモ、タケノコの生産者は忙しくなったという。
2021年時点で、土休日の嘉例川駅で朝10時から販売。人気かつ手作りなので、すぐに売り切れる。2022年3月まで運転された特急「はやとの風」では、JR九州の駅で乗車の2日前までに予約購入することで、車内で受け取れたほか、余りがあれば車内販売で予約せずに購入できた。九州駅弁グランプリのイベントで博多駅に来たほかは、催事や遠隔地はおろか鹿児島中央駅でさえも売られない、本当に現地でしか買えない駅弁。2018年4月にNHK大阪の番組に出たり、2022年11月にJR九州商事の有楽町ポップアップストアで抽選販売が実施されたくらいしか、外に出た実績がないと思う。
※2022年11月補訂:値上げと現況を追記2019(平成31)年4月に入手した、嘉例川駅弁の掛紙。2004年の発売時から変わらない。同年1月に霧島市の霧島ガストロノミーブランド「ゲンセン霧島」38件のうちひとつに認定され、それを示すシールが貼られた。
2004(平成16)年12月18日に購入した、嘉例川駅弁の掛紙。これは発売時から上記の約16年後まで、一度も変わっていないのではと思う。
鹿児島県霧島市の農産物や特産品の販売所である、嘉例川駅前の物産館「かれい川ふれあい館」で販売していたお弁当。この弁当の他にも、様々なお惣菜が販売されていた。
惣菜弁当向けプラ容器に、日の丸御飯、ガネ(サツマイモの天ぷら)、鶏唐揚、シイタケやニンジンなどの煮物、じゃがいも、ゆで卵、ダイコンの酢の物など。今は名駅弁となった上記の駅弁「百年の旅物語かれい川」を、もっと素朴に飾らずに作ると、こうなるのだろう。掛紙には明らかに、嘉例川駅と特急はやとの風が描かれる。物産館が営業する日曜日のみの販売。価格は2013年の購入時で500円、2015年時点で550円。