宮崎駅から特急列車「きりしま」で1時間弱。都城市は宮崎県の南西端で盆地の中にある、人口約16万人の城下町。平安時代に日本最大級の荘園が拓かれ、鎌倉時代から江戸時代まで島津氏が治め城下町ができ、後に商業や畜産の町となる。駅弁は1948(昭和23)年6月に都城駅の駅弁屋の支店ができ、本店が閉じられても営業を続けるが、駅構内からは撤退し、駅前の弁当店となる。1923(大正12)年1月24日開業、宮崎県都城市松元町。
1955(昭和30)年に発売。簡素な経木枠の正方形の容器に透明なプラ製のふたをして、これを朱色の掛紙ですっぽり覆い、割り箸を載せて輪ゴムでしっかり留める。中身は鶏のスープの味付け御飯の上に刻み海苔、錦糸卵、鶏肉を載せる、九州名物かしわめし。鶏肉がフレークではなく胸肉のスライスで、梅干しが載り、ストライプは斜めではなく横に入る、かしわめしの駅弁としては変わり者。都城の郷土料理はこういうタイプであるらしい。見栄えも風味もとても整然としている。
西都城駅弁の一番人気で、2005(平成17)年のJR九州の駅弁キャンペーン「九州の駅弁ランキング第2弾」でも第10位に食い込んだ。価格は2006年時点で720円、2014年4月の消費税率改定で756円、2016年時点で760円、2022年時点で800円。
※2023年2月補訂:写真を更新し値上げを追記2016(平成28)年10月23日に購入した、西都城駅弁の掛紙。上記の2023年のものも、下記の2006年のものも、絵柄は変わらない。容器も味も同じで、中身もだいたい同じ。この時までは駅弁の名前が一覧で記載されていた。
2006(平成18)年1月29日に購入した、西都城駅弁の掛紙。上記の2023年や2016年のものも、絵柄は変わらない。容器も味も同じで、中身もだいたい同じ。この時には九州駅弁のマークがなく、食品衛生優良施設の平成13年度受賞マークがあり、「消費期限内にお召し上がり下さい」の記載が目立つ。
商品名は「小さなかしわめし」。上記の通常版の「かしわめし」と同じ掛紙で、それより少し小さな容器を包む。鶏スープの御飯を、刻み海苔、錦糸卵、鶏肉で覆い、グリーンピースで彩り、梅干しと柴漬けを添える中身も、付合せの数と量を除き共通する。
商品名は「わいわいかしわめし」。西都城駅弁のかしわめしの、4〜5人前バージョン。丸いプラ製で直径30センチメートルの桶に混ぜ御飯を詰め、鶏肉、錦糸卵、しいたけ、刻み海苔で覆い、くり、えんどう、にんじん、グリーンピース、紅生姜で彩る。具の数は4の倍数だったので、4人で分ければみんなでわいわい楽しめるかも。味は通常版と、もちろん同じ。
2012(平成24)年に発売、同年秋のJR九州の駅弁キャンペーン「九州駅弁グランプリ(第9回)」にエントリー。掛紙には都城市のシルエットと鉄道路線図と名所のアイコンを描く。中身は掛紙のお品書によると、南九州産豚塩麹焼、鶏つくね木の子餡かけ、海老マヨネーズ和、鶏もも照焼、玉子焼き、串間産かまぼこ、千切大根と人参の膾(なます)、鶏の油みそ、都城伝統ガネ、都城特産牛蒡唐揚げ、煮物五種、名物かしわめし、白ご飯白ごま梅干。
都城は1924(大正15)年には市制を敷き、20万人近い人口を抱える都市であるが、農業がとても盛ん。これは全国的に普通の材料や内容や味にみえて、一部の市外県内を除き都城でできている、具材豊かなお弁当。価格は2012年の発売時で900円、2014年4月の消費税率改定で927円、2017年時点で930円、2022年時点で1,000円。
1982(昭和57)年の発売か。現物からは読み取れないが、駅弁の名前は「山里の味栗めし」らしい。東北地方や九州各地の駅弁でも使われた、栗の形をイメージした赤いプラ容器に、栗の絵と栗めしの文字を書いた掛紙をたすきがけ。中身は混ぜ御飯の上に栗を4個固め置き、その周囲でたけのこ、にんじん、しいたけ、えび、えんどうを載せ、かまぼこ、玉子焼、ひじき、千切り大根、焼サバの昆布巻を添える。懐かしさを覚える、昭和の見た目。味も量も控えめな栗を、豊かなおかずで覆う、栗飯というよりはまるで五目飯。
1989(平成元)年の発売。真っ黒なボール紙の長方形の容器を割りばしごと、やはり真っ黒な掛紙を巻いて留める。中身は混ぜ御飯の上に宮崎県産黒毛和牛のローストスライスを整然と約5切れ詰め、残りを錦糸卵で覆い、やはり整然とした形状の椎茸やカニクリームコロッケやオクラなどを添えるもの。価格は2004年時点で720円、2006年の購入時で840円、2014年4月の消費税率改定で918円、2015年時点で920円、2022年時点で1,000円。
都城の鉄道の要衝は都城駅であるが、中心市街地こちら西都城駅のほうが近く、1980(昭和55)年には高架化工事が完成した。しかし利用者は都城の3分の1ほどで、古びた大きな構造物を持て余す感がある。
そんな西都城駅には長距離列車も駅弁需要もなく、駅弁立売や駅売店や車内販売もなくなり、駅弁屋は駅前の弁当屋になっていた。そんな状況でも、さらに国産牛の高騰に遭っても、近隣の駅弁業者が撤退や廃業を選んでも、取扱商品に昔ながらの駅弁を守り続ける。
※2023年2月補訂:値上げを追記西都城駅弁の幕の内弁当。掛紙には新井康須雄の油彩「都城関之尾滝」を掲載し、調製元の商品一覧を記載する。中身は日の丸俵飯に焼鮭、かまぼこ、玉子焼、エビフライ、薩摩揚、焼サバ、鶏肉煮、牛肉煮、サトイモ、たけのこ、昆布巻、うぐいす豆、柴漬けなどと多種多様。廉価で飾らず、昭和の普通駅弁の姿を色濃く残した懐かしの駅弁。価格は2016年の購入時で760円、2022年時点で800円。
※2023年2月補訂:値上げを追記九州新幹線全線開業記念駅弁22種のひとつとして、2011(平成23)年1月1日から8月31日まで販売。同年10月からの「九州駅弁グランプリ」にもエントリーされており、販売は継続されたが、2012(平成24)年中に終売の模様。真っ黒なボール紙の箱に、鉄道車両や観光名所の写真5点を採用した掛紙を巻く。中身は白御飯の上をとりそぼろ、鶏照焼、豚肉の胡麻味噌煮、和風ローストビーフ、シイタケ煮、錦糸卵、紅生姜、グリーンピースで覆い、つくねやガネ(さつまいもの天ぷら)などを添えるもの。
宮崎県都城市は牛肉と豚肉と鶏肉の生産量日本一を誇ると掛紙に書いてある。その統計を探せないが、都城市農政部畜産課のホームページによると、平成18年農業産出額(市町村別)で「肉用牛」、「豚」、「鶏」がそれぞれ1位、「畜産」(「肉用牛」、「乳用牛」、「豚」、「鶏」、「その他畜産物」の合計)が1位となったのだそうな。これで駅弁の名前が「ざ・日本一」である。しかしここでは最高額の駅弁なのに、実物に不思議と豪華感がない。他の安い西都城駅弁のほうが、感じが良いような。
※2016年8月補訂:終売を追記JR九州の駅弁キャンペーン「九州駅弁グランプリ」への出品に向けて、2011(平成23)年10月1日までに発売。宮崎県に近い鹿児島県内の霧島連峰で同年1月に噴火した新燃岳がテーマ。長方形の竹皮編み容器を、新燃岳の噴火を描いた掛紙で包む。中身は柚子味噌をかけた三角おにぎりに、鶏肉パイ包み焼、鶏ささみ昆布巻、豚角煮、牛肉とごぼうのしぐれ煮、サツマイモのマヨネーズ和えなど。
駅弁では見たことがないミートパイを入れたり、牛肉をこの駅弁のために特注したという火山灰を練り込んだ器に入れたりなど、強烈な創作意欲をひしひしと感じる。価格は1,200円が公式だが、常に1,000円で販売されていた。2012(平成24)年中に終売の模様。
2011(平成23)年1月の新燃岳の噴火は東京でもニュースになり、降灰により地元は迷惑している旨の解説や映像を付けて紹介された。しかしこの地域の大地や台地は、火山灰が何万年も積もり続けてできたもの。確かに、旅行者が列車で通過しただけでリュックサックの中の中にまで侵入してきた白く細かい火山灰にウンザリしない人はいないと思うが、こんな危ないテーマの駅弁が標記のキャンペーンで人気投票や識者選考を経て宮崎県の代表としてJR九州本社へ送り込まれたのだから、麓の見方はメディアの感覚とはちょっと違うのではないかと思った。
※2016年8月補訂:終売を追記コンビニ大手のファミリーマートが2007(平成19)年8月21日〜9月20日に実施した「そのまんま宮崎フェア」に名を連ねた、駅弁屋監修の期間限定コンビニ弁当。掛紙のデザインや、中身の内容や見栄えで、西都城駅弁「かしわめし」がよく再現されている。しかし残念ながら風味はパサパサボソボソ、220円の追加で買える本物の面影は皆無だった。
テレビでお笑いタレントとして活躍していた宮崎県都城市出身のそのまんま東が、官製談合疑惑による知事辞職に伴い実施された2007年1月の宮崎県知事選挙に無所属で立候補、意外にも政党が推す東大卒の元官僚2名などを破り初当選した。
これがテレビのワイドショーなどで大きく取り上げられ、知事や宮崎への注目度が大きく上昇した。この商品の掛紙左上にある人物イラストは、その東国原(ひがしこくばる)知事のもの。県産品の売り込みに自身の人気と知名度を生かしてもらおうと、この時点で無制限に使用させている。
2008(平成20)年3月1日に釧路、八戸、米沢、都城の4種が誕生した駅弁屋の監修によるレトルト弁当の派生商品として、米沢と都城の2種で出た瓶詰め。甘辛く煮た鶏フレークが詰まった瓶を、レトルト弁当と意匠を合わせたのボール紙の枠にはめる。西都城の駅弁はこんな味だったかな、という風味。
2008(平成20)年3月1日に釧路、八戸、米沢、都城の4種が誕生した、駅弁屋の監修によるレトルト弁当。パック御飯とレトルトと針状錦糸卵の袋を、調理例の写真や監修元や商品名などを掲載したボール紙の箱に詰める。パック御飯とレトルトを電子レンジで暖めて、レトルトと錦糸卵の中身を御飯の上にかけて、パッケージの枠に収めてできあがり。
中身は味付飯の上に、暖めたレトルトに入っていた鶏肉、鶏とごぼうとニンジンのそぼろ、錦糸卵。西都城駅弁の「かしわめし」とは中身がまったく異なり、水っぽいのにパサパサの食感も駅弁とは別物、鶏駅弁の雰囲気は出ていないと思う。上記のコンビニ弁当ともども、再現手法の限界を感じる。そういえば、この監修元は今まで、西都城の駅弁屋と紹介されていたが、今は都城の駅弁屋と紹介されるようになったようだ。