東京駅から新幹線で約5時間。福岡市は福岡県の西部で玄界灘に面する、人口約160万人の城下町かつ港町。政令指定都市かつ福岡県の県庁所在地で、九州の鉄道や経済の中枢である大都市。駅弁は主に新幹線ホーム、新幹線コンコース、改札外の東西自由通路の売店で、地元や九州一円や西日本のものが多種売られる。1889(明治22)年12月11日開業、福岡県福岡市博多区博多駅中央街一丁目。
2020(令和2)年の12月までに、博多駅と新幹線小倉駅で発売か。専用の紙箱に見える建物は、明治時代の博多駅舎の写真をぼかしたものか。この容器に収めた黒いプラ製トレーに、梅と胡麻を振りかけた白飯、かまぼこと玉子焼と焼きサバときんぴらごぼう、筑前煮と紅白なます、鶏照焼とうぐいす豆、焼売と野菜コロッケ、明太子ほぐし、大根の醤油漬けを詰める。旅や観光よりも普段使いに向いたお弁当か。これは博多か、幕の内弁当かと問われると、いずれも弱いような気がする。
2023(令和5)年10月2日に博多駅と小倉駅で博多松栄軒が発売し、同年秋のJR九州の駅弁キャンペーン「第14回九州駅弁グランプリ」にエントリー。加えて日本鉄道構内営業中央会の「駅弁マーク」制定35周年を記念し、会員のうち29社が主に11月10日から期間限定で販売した31種類の記念駅弁のうち、鹿児島中央駅の駅弁屋のものとして、11月10日に鹿児島中央、博多、東京、新大阪の各駅で松栄軒が発売。両キャンペーンのプレスリリースでの写真を見比べる限り、両者はまったく同じ商品である模様。櫛田神社と博多祇園山笠を描いたと考えられる、中身の写真を掲載した掛紙には「松栄軒」のロゴを記す。
平たく浅い9区画の容器に、高菜めし、辛子めんたいめし、かしわめしで3種類の御飯と、さば照り焼き、がめ煮、屋台餃子、ホルモン焼、焼き鳥と玉子焼、はりはり漬けと花餅を詰める。これを九州駅弁グランプリでは「博多の人気惣菜をぎっしり詰め合わせた駅弁」と紹介し、駅弁マーク35周年では「博多の屋台をイメージして多彩な博多料理を幕の内風に」と紹介した。賑やかでよいと思う。
2012(平成24)年までに博多駅で発売、2013年10月のJR九州の駅弁キャンペーン「第10回九州駅弁グランプリ」にエントリー。たしかに平たいプラ容器が2つ重ねられ、正方形の掛紙と透明なフィルムに包まれる。中身は下段が御飯で、山菜飯と3種のふりかけ御飯か。上段がおかずで、玉子焼と有頭海老と煮豆、ささみロールフライと赤魚西京焼とわらび柚子菓子、しいたけとししとうの天ぷらに辛子きくらげ、レンコンやがんもなどの煮物。「博多の美味しい」「いっぱい詰まった」中身の解説が欲しいところ。価格は2013年時点で840円、2019年時点で870円、2022年時点で1,000円。
2021(令和3)年の夏までに博多駅で発売か。説明が何もないけれど、掛紙の絵柄は中身の写真と、博多どんたくとひょっとこ面、博多祇園山笠、福岡藩黒田長政の兜、節分のお多福面だろう。6区画の中身は、白飯に明太子、醤油飯に錦糸卵と花れんこん、チーズインカレーコロッケとエビフライ、牛焼肉、鮭焼とブロッコリー、きんぴらごぼうと三色団子。お弁当カップの色を含め、いろんな色でお祭りを表現したのかどうか。つまみやすい軽食の弁当。
2011(平成23)年の新規開発で、同年10月のJR九州の駅弁キャンペーン「九州駅弁グランプリ(第8回)」にエントリー。駅弁の名前を記した専用のボール紙ふたには、花笠か山笠の女性を描いたか。中身は白御飯とかしわ御飯と味御飯、かに爪フライ、鶏ごぼう巻、明太子、有頭海老、ちぎりてん、塩鮭、玉子焼、焼売、蓮根や椎茸などの煮物、紅あずま、蕨餅。明太子とかしわめしがあれば、博多でなくても北部九州の味に見えてくる。御飯もおかずも種類のある、おつまみ弁当。価格は2011年の発売時で1,050円、2014年4月の消費税率改定で1,080円。
2018(平成30)年に博多駅で発売か。「博多弁」「大きな明太子と高菜のせごはん」などの修飾語を付けた掛紙には、中身のイメージ写真を美しく載せる。惣菜向けな浅くて平たい正方形のプラ容器で、白飯を高菜炒めと錦糸卵と辛子明太子で覆い、鶏肉の博多味噌焼きと黒ゴマチキンカツを据え、ポテトサラダとソースと漬け物を添える。高菜と辛子明太子で博多の二大名物とするらしく、それらの食べ応えがあるとともに、2種の鶏肉もメインディッシュに感じる、貪欲な内容。
価格は2018年の発売時で1,180円、2022年の購入時で1,280円、2024年9月のJR九州の駅弁キャンペーン「第15回九州駅弁グランプリ」へのエントリー時で1,380円。
※2024年9月補訂:値上げを追記2011(平成23)年10月に博多駅で発売か。同年のJR九州の駅弁キャンペーン「九州駅弁グランプリ(第8回)」にエントリー。容器も真っ赤な掛紙のデザインも、正方形の9区画でできている。中身は山菜、日の丸、ちらしずしで3種の御飯に、カニ焼売と辛子高菜炒め、金平蓮根と切干大根と有頭海老、白身フライマリネ、串カツと鶏唐揚、焼き鯖と玉子焼と金時豆、筑前煮と肉団子。博多らしさ、あるいは福岡らしさか九州らしさがあるかもしれない、賑やかな内容。博多駅の駅弁売店「駅弁当」での人気商品と聞く。
価格は2011年の発売時で945円、2015年時点で980円、2021年時点で1,000円、2022年時点で1,200円、2024年9月のJR九州の駅弁キャンペーン「第15回九州駅弁グランプリ」へのエントリー時で1,500円。
※2024年9月補訂:値上げを追記2021(令和3)年の夏までに890円で発売か。駅弁の名前は公式には「HAKATAトリオ弁当」らしいが、現物にその表記はなく、「HAKATAトリオ」なのか「THEおかず三種の神器」なのか、食品表示ラベルの「トリオ弁当」なのか分からない。三種の食材の名前とイラストを描いた真っ赤な掛紙に、「ト」リのからあげ、プ「リ」ップリのエビフライ、「オ」おきなハンバーグと書かれるとおり、中身は鶏唐揚とエビフライとハンバーグ、加えてフライドポテトとスパゲティとブロッコリーとにんじん、もやしと柴漬けと白御飯。駅弁では「洋食弁当」の名が付く内容だろう。味はみたまんま。
2000年代頃の発売か。鳥栖駅の駅弁屋がつくる博多駅の駅弁。お揚げに飯を詰めて錦糸卵と明太子片を載せた明太いなりが2個、鮭飯を高菜で巻いた高菜巻おにぎりが2個、あとは煮豆、焼サバ、かまぼこ、玉子焼、五目揚げ豆腐、シイタケ煮。和風おにぎり弁当といった落ち着いた雰囲気で、朝飯に合った。博多曲物と書くと福岡の伝統工芸になるが、容器や中身は「わっぱ」でないし、関連を感じられない。価格は2010年時点で720円、2015年時点で740円、2023年時点で760円。
※2023年7月補訂:値上げを追記2019(令和元)年の8月までに発売か。白飯を海苔で覆い、焼鮭と辛子明太子とちくわ磯辺揚でさらに覆い、玉子焼とポテトサラダを添える、シンプルで豪快な海苔弁当。中身の写真でできている掛紙では、「博多弁」「博多駅限定」「博多の贅沢」と、博多を繰り返し強調する。価格は2019年の発売時で860円、2020年の購入時で1,080円、2024年時点で1,200円、9月のJR九州の駅弁キャンペーン「第15回九州駅弁グランプリ」へのエントリー時で1,280円。
※2024年9月補訂:値上げを追記2016(平成28)年の春までに発売、同年10月のJR九州の駅弁キャンペーン「第12回九州駅弁グランプリ」にエントリー。楕円形の容器に、中身の写真を使う華やかな絵柄の掛紙を載せ、ラップでぴったり包装する。中身は日の丸御飯とカンピョウ飯、炙り海老の蓮根巻、牛すき焼、ムール貝、魚コロッケ、甘鯛の西京焼き、イカ黄身焼、ナスの挟み揚げ、玉子焼など、なかなかの華やかさ。容器は翌年に正八角形へ変わった模様。2019年頃までの販売か。
※2021年3月補訂:終売を追記博多駅には2011(平成23)年に進出か。博多人形の写真と商品名を印刷した黒いボール紙の容器に詰めた12区画分の黒いプラ製トレーに、かしわめし、明太子のせ白御飯、ちらしずし、いなりずし、玉子焼、筑前煮、鶏照焼、鮭塩焼、きんぴらごぼう、くずもち、大根桜漬などを収める。
博多らしさ、九州らしさがあるような、ないような、ごちゃまぜの内容。調製元は福岡市内の仕出し料理屋。容器と箸袋には「博多駅弁 菜加川」とあり、これは2010年限りで廃業した寿軒の後継業者なのだろうか。価格は2012(平成24)年の購入時で950円、2014年4月の消費税率改定で972円。2016年頃までの販売か。
※2020年5月補訂:終売を追記平たく大きなプラ製トレーの惣菜容器を、博多の名物や名所をいくつか描いた大きな掛紙で包む。中身は錦糸卵とでんぶとシイタケとレンコンのちらしずしに、玉子焼と鶏唐揚、焼売とウインナーとブロッコリー、レンコンなどの煮物、鮭塩焼、菜の花漬、ぜんまいと明太子、ゴマ団子、オレンジ。分量はなかなか。2010年12月限りで寿軒が駅弁から撤退、以後は鳥栖駅弁の中央軒が調製した。価格は2010年の購入時で1,000円、2015年時点で1,030円。2015年までの販売か。
※2021年2月補訂:終売を追記昭和の国鉄時代から販売された駅弁。楕円形の容器に透明なふたをして、博多湾のイラストを描いたボール紙の掛紙をかける。中身は酢飯の上を刻み海苔と錦糸卵で覆い、アナゴ刻み、エビのボイル、ベニズワイガニのフレーク、レンコン酢漬、菜の花、シイタケ1個、生姜酢漬を散らすもの。今となっては掛紙のデザインともども古めかしい感じがするが、価格も分量も味もお手頃な感じ。2010年12月限りで寿軒が駅弁から撤退し、この商品も買えなくなった。
1960(昭和35)年に発売。九州で唯一の釜飯駅弁で、国鉄時代から売られ、昭和時代には博多駅を代表する駅弁のひとつであったにもかかわらず、平成時代には知名度の薄い駅弁になっていた。ふたも陶製の釜型容器を箱詰めする包装は珍しい。中身は鶏スープで炊いた御飯の上に、刻み鶏肉やタケノコや錦糸卵や栗や海老や椎茸など。うずらのゆで卵を半分にカットして入れるのも、他の駅弁にはない感じ。彩りの感じほど味は悪くなく、価格も控えめ。
2010年12月限りで調製元が駅弁から撤退、この駅弁も買えなくなった。
※2021年2月補訂:発売年を追記微妙に長方形な経木枠の容器に紙のふたをして大きな掛紙で包み赤い紙ひもでしばる。中身は御飯にうめ、たくあん、おかかの巻物がふたつずつと、おかずには焼鯖や玉子焼に梅花型の蒲鉾や人参に昆布巻や椎茸などと、デザートにさくらんぼとパイン。個人的には梅が嫌いでたくあんが苦手なので参ったが、見栄えと品質の良い駅弁。
駅弁の名前やその中身は、菅原道真が延喜元年(901年)、醍醐天皇により九州の大宰府へ左遷された際、京の自宅の紅梅の詩を詠んだら、その梅の木が道真を慕い太宰府まで一晩で飛んできたという「飛梅(とびうめ)伝説」にちなむ。駅弁の名前と掛紙の絵柄を読み解くには、そんな予備知識が要る。昭和時代には有名な故事だったようだが、今はどうか。
2010年12月限りで調製元が駅弁から撤退、この駅弁も買えなくなった。
※2011年2月補訂:終売を追記博多駅の、駅弁屋ではない業者がつくる幕の内弁当。しかし、福岡エリアのランドマークを水彩画風に描いた古風な掛紙、美味いあんかけ鶏唐揚やぶり煮に、焼明太子と高菜で九州を主張するおかずの内容、いずれも本物の幕の内駅弁の上を行くものと感じた。
2003年当時の博多駅は、昔からの駅弁屋に加えて、この業者とJR西日本の子会社が入る3社競合の激戦地に見えて、主戦場がそれぞれホーム上、コンコース、新幹線エリアと分かれており、九州一旅客が多い駅でもあり、それほど競合はないように見えた。なお、現在ではこの業者の商品を駅構内で見ることはできない。
※2011年2月補訂:現況を追記1980年代に発売。立方体のボール紙製パッケージの中に、赤緑黒と三色のボール紙製容器が積まれている。中身は、黒が海苔と錦糸卵と少しの鮭フレークをかけた酢飯、赤はかしわめし、緑はひょうたん型の白御飯に煮物が少々。つまり、おかずがない御飯弁当。割り箸とナプキンと爪楊枝がふたつずつ入っており、確かに一人分の分量ではない。
パッケージには博多山笠・博多どんたく・太宰府天満宮鬼すべの光景と、小柄な蒸気機関車が15両編成の青い客車を牽引する姿が描かれる。国鉄当時の東京・九州間の寝台特急列車は15両編成が当たり前で、それでも寝台券はプラチナチケットであった。しかし道中が4社に分割されたJR発足以降は各社の意見の違いから、手入れがされないまま乗客を減るに任せ、2009年3月までに消滅した。
2010年12月限りで調製元が駅弁から撤退、この駅弁も買えなくなった。
※2011年2月補訂:終売を追記1999(平成11)年4月1日14時の調製と思われる、昔の博多駅弁のパッケージ。福岡の市街地とその名所が描かれる。この絵のとおり、福岡は空港が市街地の直近にあり、新幹線や中距離特急はどうも分が悪い。
入手状況等から1977(昭和52)年のものと思われる、昔の博多駅弁の掛紙。博多の季節の祭りを描いた掛紙は、有名な「ディスカバージャパン」と「いい日旅立ち」の谷間で忘れられた、国鉄の旅行キャンペーン「一枚のキップから」のロゴマークがある。