東京駅から新幹線ひかり号で1時間。静岡市は静岡県の中部に位置する、人口約69万人の城下町で県庁所在地。駿河湾から南アルプスまで静岡県を南北に縦貫する広大な市域を持つ。駅弁は明治時代からの駅弁屋が、新幹線ホーム上や改札外コンコースで古風な品揃えを持つ。1889(明治22)年2月1日開業、静岡県静岡市葵区黒金町。
明治時代からあるという、静岡駅の幕の内弁当。ふたは祝鯛、駿河凧、静岡張子面、静岡姉さまの絵柄で構成され、これは1982(昭和57)年から変わらず、駿河凧の絵柄が2020(令和2)年に38年ぶりに新調されたが、2023年に元へ戻された。
ふたを開くと、白いトレーのそれぞれに御飯とおかずが詰まる、昭和時代あるいは20世紀の姿が現れる。中身は日の丸俵飯に、サバの焼き魚、かまぼこ、玉子焼で幕の内駅弁三種の神器と、チキンカツ、エビフライ、豚肉とタケノコの煮物に鶏肉団子、うぐいす豆、中華煮、わさび漬と大根桜漬。そんな内容も昭和時代の昔懐かしい幕の内駅弁で、当時から駅弁マニアには評価の高かったもの。価格は2010年時点で750円、2014年4月の消費税率改定で800円、2018年時点で830円、2019年2月から880円、2022年4月から930円、2023年7月から950円。
日本最初の幕の内駅弁は、1889(明治22)年に発売した姫路駅とされる。こちら静岡駅では、駅弁に「幕の内」の名称を使用するために、大阪の芝居小屋に多額の使用料を納めたというエピソードが伝わる。
※2023年8月補訂:写真を更新し値上げを追記ごくまれに買える駅弁。2020(令和2)年10月に調製元の「静岡市内平日限定キャンペーン」で、「限定鯛幕弁当」の名前で1,000円にて発売か。同年12月4〜6日の調製元の創業祭で1,320円、2021(令和3)年7月の限定販売で1,250円、同年12月2日の創業133周年祭で1,000円と価格が変遷し、今回は4月10日の駅弁の日により1,400円の「鯛幕弁当」として販売。
掛紙には駅弁の日の文字と駅弁マークに、鯛と波と日と富士がめでたく描かれる。中身はつまり、静岡駅で伝統の駅弁「幕の内弁当」の日の丸俵飯を、静岡駅でもっと伝統の駅弁「鯛めし」に置き換えたもの。それだけにしてはずいぶん高価になったものだが、祝祭の駅弁にふさわしい中身だと思った。味はもちろん、それらと同じ。
1978(昭和53)年8月の発売だという。駅弁の名前は「茶飯弁当」「茶めし弁当」とも。茶飯とは一般に、白飯に醤油などを混ぜて茶色にした御飯をいうが、ここ静岡では緑茶で炊いた御飯とした。長方形の容器に、富士と茶摘みの版画を描いた緑茶色のボール紙でふたをする。中身は緑茶の御飯に焼サバ、かまぼこ、玉子焼、エビフライ、鶏照焼、タケノコやニンジンなどの煮物、ミニトマト、マグロ角煮、刻みタクアン、わさび漬カップ。実にここにしかない幕の内駅弁で、最適な冷涼感を醸し出していた。
※2022年5月補訂:写真を更新2010(平成22)年8月22日に購入した、静岡駅弁のふた。上記の2022年のものと、駅弁マークとバーコードの有無に食品表示ラベルの形式こそ異なるが、ベースはまったく同じ。中身も同じで、具の折り重ね方まで変わらない。価格は2010年の購入時で950円、2017年時点で980円、後に1,000円、2019年2月から1,100円、2022年4月から1,150円。
静岡駅の駅弁売店でなく土産物店で買えたお弁当。発売時期や仕出し以外の販売箇所、「復刻」の理由など、弁当の背景がまったく分からない。富士や茶摘みや徳川家康などを描いた紙のふたは、それらの部分を切り取り立てられる仕掛け。中身は日の丸俵飯、サバ塩焼き、玉子焼に、鶏唐揚、海老フライ、煮物、すき焼き、きんぴらごぼう、二色団子、わさび漬けカップ、茶飴など。静岡駅の駅弁の幕の内弁当とは、ふたの絵柄は明らかに異なるが、それ以外はよく似ている。食べると俵飯の大きさなど全体的に、小粒や小柄にできていて、静岡駅弁とは雰囲気が異なる。調製元は静岡市で1976年の創業という仕出し弁当店。
2015(平成27)年1月の京王百貨店の駅弁大会で、大会の50回を記念して、東海道新幹線開通50周年にちなみ、50年前の駅弁の掛紙を復刻して販売した記念商品。しかし掛紙の右端には駅弁催事会社の宣伝が記されており、以上の販売理由は表向きのものだろう。掛紙は1964(昭和39)年10月2日、つまり新幹線開業2日目の調製印がある静岡駅弁のものが、この宣伝や法令上必要な表記などを加えて、そのまま使用される。富士山と列車が、切り絵風に描かれる。
中身は、現行の静岡駅の幕の内駅弁と同じものだと思われる。この東海軒の幕の内も、この会場で同時に販売された名古屋駅弁「こだま」も、実需や駅弁のプロの間で高く高く評価される逸品だと感じるが、駅弁催事で映えるものでなく、実際に催事にはまず来ない。復刻掛紙の名目とはいえ、今回の京王はマニア心をくすぐった。
駅弁の名前は、食品表示ラベルや調製元公式サイトで「特製お好み弁当」。しかし「おべんとう」としか書かれていないボール紙製の長方形の容器を使用する。中身は白いトレーのひとつに白御飯を敷いて枝豆とコーンをまぶし、もうひとつの白いトレーにおかずとして焼サバ、鶏唐揚、海老天ぷら、サトイモなどの煮物、インゲン和え、海老入りコールスローサラダ、紅白のミニ大福などを詰めるもの。頑張って解釈すれば女性向けのおしゃれな駅弁と言えるかもしれない。御飯は季節により変わる模様。価格は2010年の購入時で800円、2017年時点で850円を経て900円。現存しない模様。
※2022年4月補訂:終売を追記駅弁の名前は「特製幕の内弁当」とも。昭和40年代頃から使い続けているような絵柄の、ボール紙製の専用容器を使用、白いトレーに収まる中身は、日の丸俵飯に焼サバ、かまぼこ、玉子焼、エビフライ、メンチカツ、タケノコやニンジンなどの煮物と鶏肉団子、大根漬、わさび漬カップなど。同じ日に購入した「茶めし」とおかずはほぼ同じなので、味も同じ。しかしなんとも20世紀の香りがするものだ。価格は2010年の購入時で900円、2017年時点で930円。2018年に「特製お好み弁当」に改称し、2019年までの販売か。
※2020年12月補訂:終売を追記2003(平成15)年8月11日に発売された、女性向けでヘルシー指向の幕の内駅弁。柔らかい長方形の容器に透明なふたをして、色づかい以外は地味な掛紙をかけて、割りばしごと紙ひもでしばる。中身は栗と茶葉とカツオ角煮を載せた桜飯に、海老と玉子焼と桜海老かき揚げに、煮物類やみかんなど。
掛紙記載「ヘルシーな五三〇キロカロリー」のとおり、淡い風味でおかずが少々物足りない感じの健康弁当。しかし茶葉と桜海老かき揚げとみかんで、静岡をちゃんと主張している。2014年頃までの販売か。
掛紙右上の隠しシールの下には、駅弁マークが印刷されている。調製元の東海軒が2006年3月31日付で日本鉄道構内営業中央会を退会したため、そこの登録商標であるこのマークが使えなくなったもの。他社では掛紙を刷り直したり、そのまま使ったりするものだが、ここでは律儀にシール対応。
※2015年10月補訂:終売を追記2004(平成16)年11月1日に発売。食器風トレーを紙箱に入れる、市販の大きな高級惣菜弁当用容器を使用、ミカン色あふれる掛紙をかけて、オレンジ色の紙ひもを締める。中身はミカンの皮の炊き込み御飯に、鮪照焼と鰻蒲焼、桜海老にイワシはんぺんに煮物各種、わさび漬けのカップを添えて、デザートはメロンとミカン。容器が無駄に大きいと思うが中身に静岡色があふれている。
ミカン皮飯と書くと恐ろしく、実際に御飯に混じるその粒々が見えるが、食べてみればそのフレーバーをほのかに感じる程度で、たいしたことはない。それでも、糖度センサーの数値を競いとても甘くなった最近のミカンしか食べたことがない方には、その渋さに参るかもしれない。調製元もそれを気にしてか、一日30個の試験販売という形をとる。2005年以降の収穫報告は見当たらない。
※2015年10月補訂:終売を追記横幅が36センチもある岡山県新見駅弁顔負けの超ワイドなボール紙容器を使用、正方形の容器が横に3個並べられている。中身は真ん中に椎茸の混ぜ御飯、右側に焼鮭やエビフライに煮物類、左側につくねやアサリ佃煮や玉子焼にわさび漬けカップなどが入る。駅弁の名前から、内容は季節毎に変わると思われる。2010年頃までの販売か。
購入日は21時過ぎの訪問で、この時間では大きな駅でもなかなか駅弁を入手しにくい時間帯であるが、改札外コンコースの駅弁売店では十種以上の駅弁が陳列されお客さんを集めていた。さすがはかつて大垣夜行を相手に駅弁販売をしていた駅弁屋さんだ。
1987(昭和62)年11月にJR東海の「新幹線グルメ」キャンペーンで誕生した駅弁。緑色の長方形の容器に緑茶で炊いた御飯と茶饅頭と半分はお茶づくし、半分は煮物揚げ物と魚に玉子と、そして静岡のみかんが入る。お茶は別売りだが、容器が広く平たいので列車の小さなテーブルではお茶の置き場に困ることもある。20年間ほどの販売か。