静岡駅から電車で3駅10分。清水市はかつて、静岡県の中部で太平洋の駿河湾に面する人口20万人以上の港町で、日本平や美保の松原の美景、次郎長、サッカーなど独特の文化を持っていたが、2003年に静岡市と合併してしまい、今は静岡市清水区。駅弁は1953(昭和28)年から売られたが1990年代に撤退。駅のキヨスクに入荷する地元の寿司店の商品が、まれに駅弁と紹介される。1889(明治22)年2月1日開業、静岡県静岡市清水区真砂町1−1。
2000年代に清水駅の駅弁と紹介され始めた、清水駅のキヨスクで買えるお弁当。小さな正方形の容器に木目調の紙ぶたをかけて、調製元の地図と割りばしを載せて、富士と列車を描き「桜えび」とスタンプしたサクラエビ色の掛紙をかけて、セロテープで留める。中身は油あげやレンコンを混ぜた酢飯の上に、手作り感のある錦糸卵を敷き詰め、駿河湾名産のサクラエビを佃煮にしてたっぷり振り、さやいんげんとショウガを添えるもの。
中身に駅弁らしい個性と地域性があり、目でも口でも感じる美しさ。容器や包装や販売形態の素っ気なさが惜しくなる、駅弁へ育てられるであろう駅売り軽食。調製元は静岡では有名な清水市街の高級寿司店で、近所に廉価な持ち帰り寿司店「いなりやNOZOMI」を営業し、これはそこの商品である。価格は2006年時点で525円、2015年時点で561円、2019年時点で648円、2022年時点で670円。
サクラエビは国内では駿河湾でのみ獲る、体長4〜5センチの小型のエビ。1960年代の高度経済成長期に乱獲と海洋汚染が原因と思われる漁獲量の減少が起きたが、3町合同120隻までという漁船や漁師の数量制限、1966(昭和41)年からの全漁船による水揚代金均等配分制度の施行、県規則による産卵期に合わせた6月から9月までの禁漁といった資源管理が功を奏し、不漁の年もあるが今でも獲れる。資源管理型漁業の成功例として、世界的にも注目されている。
※2022年5月補訂:値上げを追記2006(平成18)年7月23日に購入した、清水駅弁の掛紙。容器や中身や風味を含め、上記の2019年のものと何も変わらない。
清水駅のキヨスクで買えるお弁当。公式な駅弁ではないが、駅で買えて、以前から売られて、駅では清水駅のみで買える地元の商品であるため、清水駅の駅弁と認識されることがある。この調製元の商品群で共通して使われる、サクラエビ色で富士山や汽車が描かれる掛紙に、「ちらし」の判子を押し、品名を「ちらしずし(小)」とする食品表示ラベルを貼る。
中身は五目酢飯を油揚げそぼろと錦糸卵で覆い、サクラエビ、小海老、イカ、アナゴ、れんこん、かんぴょう、きぬさや、奈良漬などを散らすもの。小腹に効く小箱で、見た目や風味は控えめに華やかで賑やか。(小)でないちらしすしを、駅で見たことはない。価格は2019年の購入時で562円、2022年時点で605円。
※2022年5月補訂:値上げを追記清水駅のキヨスクで買えるお弁当。公式な駅弁ではないが、駅で買えて、以前から売られて、駅では清水駅のみで買える地元の商品であるため、清水駅の駅弁と認識されることがある。この調製元の商品群で共通して使われる、サクラエビ色で富士山や汽車が描かれる掛紙に、「詰合」の判子を押し、品名を「詰合せ(小)」とする食品表示ラベルを貼る。中身はいなりずし3個、太巻き1切れ、玉子巻2本。価格は2019年の購入時で540円、2022年時点で648円。
※2022年5月補訂:値上げを追記2000年代に清水駅弁と紹介され始めた、駅売り弁当類群のひとつ。細長い容器の中に、いなりずし5個を詰めたお惣菜。これに全種類共通ながら、鉄道らしい風景を描いた掛紙をかける。味は普通に柔らかい、中の上。刻みレンコンが酢飯の中に混入してあり、この食感がアクセントとなる。価格は2006年時点で420円、2015年時点で486円、2022年時点で562円。
大正時代に市制を敷いた静岡県清水市は、昔は次郎長、以前は漁港や日本平や美保の松原、最近は高校やプロのサッカーで有名であったが、2003(平成15)年4月に名称上では県庁所在地の静岡市へ吸収合併され、その名が消えてしまった。2年後の政令指定都市移行に伴う行政区の名前で一応は復活したが、これから街の個性や独自性はどんどん失われていくのだろう。
※2022年5月補訂:写真を更新し値上げを追記2006(平成18)年7月23日に購入した、清水駅弁の掛紙。上記の16年後と、値段とラベルを除き、すべてが同じ。
2000年代に清水駅弁と紹介され始めた、駅売り弁当類群のひとつ。細長い容器の中に、いなりずし3個と玉子巻2個を詰めた惣菜弁当。ピンク色の掛紙には富士山と、「NOZOMi」と書かれた蒸気機関車牽引と思われる列車が描かれる。価格は2006年時点で472円、2015年時点で453円、2022年時点で497円。
清水駅はかつて、公式な駅弁販売駅であったが、1990年代に撤退した模様。国鉄時代にここで分岐した清水港線は、長らく一日1往復のみの全国最小本数ローカル線として有名であったが、1984(昭和59)年3月限りで廃止された。沿線は昔も今も路線バスが10分間隔で並行するため、定期券代が上がる通学客以外は誰も困らなかった。
※2022年5月補訂:写真を更新2006(平成18)年7月23日に購入した、清水駅弁の掛紙。上記の2022年のものと、値段とラベルを除き、すべてが同じ。
おそらく1975(昭和50)年6月25日15時の調製と思われる、昔の清水駅弁の掛紙。清水の地図を簡易な手書き図で描く。国鉄駅の駅弁の掛紙なのに、一日一往復のみの運行で有名だった国鉄清水港線が描かれておらず、当時で既に地元から忘れ去られた路線だったことがうかがえると思う。
おそらく2003(平成15)年5月12日の調製と思われる、かつての清水駅の駅弁屋のお弁当の掛紙。どう見ても古めかしいが、消費期限の欄があるのに調製時間の欄がないので、21世紀の掛紙であることが分かる。
2003(平成15)年5月12日の調製と思われる、かつての清水駅の駅弁屋のお弁当の掛紙。公式な駅弁屋であった当時と比較して、調製元の所在地や電話番号は変わらないが、今は東名高速道路清水インター付近で弁当を販売し、駅での販売はなくなったらしい。