東京駅から新幹線ひかり号で1時間。静岡市は静岡県の中部に位置する、人口約69万人の城下町で県庁所在地。駿河湾から南アルプスまで静岡県を南北に縦貫する広大な市域を持つ。駅弁は明治時代からの駅弁屋が、新幹線ホーム上や改札外コンコースで古風な品揃えを持つ。1889(明治22)年2月1日開業、静岡県静岡市葵区黒金町。
2023(令和5)年のNHK大河ドラマ「どうする家康」を前に、2022年12月1日に静岡駅でプレ販売、翌2023年1月6日から本発売。プレ販売日には弁当を久能山東照宮へ献上し奉納、掛紙には商品名、静岡市大河ドラマ「どうする家康」 活用推進協議会ロゴマーク、駅弁マークと調製元の社名とともに、徳川の三つ葉葵紋と「久能山東照宮献上品」の文字を記す。掛紙の裏面には徳川家康の遺訓と伝えられる「東照公御遺訓」を記した。
家康公が好んで食べたといわれる食材を彩りよく盛り付けたという中身は、緑茶の御飯、タイ塩焼き、ナスはさみ揚げ、ナス味噌、わさび漬け、安倍川餅と、サトイモやニンジンなどの煮物、サクラエビ、海老フライ、はんぺん磯辺揚げ、玉子焼、豆腐ハンバーグなど。三つ葉葵の海苔を別添し、これを自前で茶飯に載せてみたが、久能山東照宮にいくつかあるという逆向きの「逆さ葵」として、本来は上下逆に置かせるらしい。価格も内容も、上等の幕の内弁当を、さらに上等にした感じ。
2014(平成26)年の4月までには発売か。2008年4月に発売した駅弁「不二の味覚」の、代替なのかリニューアルか。2023年に調製元はこれを「平成20年から販売を続けているお弁当」と紹介したため、旧作から連続した扱いにしたらしい。実際に駅弁の名前と価格以外は、「不二の味覚」も「富士の味覚」も変わらない。
富士山にみえる台形の容器を、駅弁の名前や「色・豊かなまち静岡弁当」のキャッチフレーズを記したスリーブで留める。中身は緑茶の御飯にサクラエビを散らし、カボチャやニンジンなどの煮物、豆腐ハンバーグ、玉子焼、はんぺん磯辺揚げ、抹茶わらび餅などを詰めたもの。価格は2014年時点で1,050円、2018年時点で1,080円、2019年2月から1,200円、2022年4月から1,300円、2023年7月から1,400円。
2019(令和元)年11月1日に発売。静岡駅では初めてではないかと思われる、アニメキャラクターの駅弁。調製元の創業130年を記念し作ったそうな。駅弁の名前やスリーブの絵柄は、フジテレビ系列で放送中の国民的人気アニメ番組「ちびまる子ちゃん」や、作中のキャラクターでできている。ふたを開けると主人公一家の絵柄が少しだけ飛び出した。
中身は茶飯を錦糸卵とキャラクターの焼きかまぼこで彩り、ハンバーグ、玉子焼、カレーコロッケ、スパゲティ、ウインナーなどを添えるお子様ランチ。サクラエビかき揚げ、マグロ角煮、わらびもちという、子供向けにしては渋いおかずは、キャラクターとその作者が生まれた静岡にちなんだものだろう。2021年3月15日に720円のものへリニューアル、2022年時点で780円、2023年7月から800円。
ちびまる子ちゃんは、さくらももこが1986(昭和61)年から集英社の月刊少女漫画雑誌「りぼん」に連載した漫画作品。漫画家本人の小学3年生時代を、1974(昭和49)年度の静岡県清水を描いたエッセイないしコメディは、平成時代に入ると人気が過熱、1990(平成2)年からのテレビ放送により、「サザエさん」や「ドラえもん」のような、こどもに限らず日本人の誰もが知る存在となった。1996(平成8)年に連載が終了しても、2018(平成30)年に作者が亡くなっても、やはり前記の国民的アニメと同じく、今も毎週新作が放送されている。
※2023年8月補訂:値上げを追記静岡駅で知られざる季節の駅弁。これは2022(令和4)年の春バージョンで、3月から5月までの販売。掛紙もスリーブも着けない細長い容器を使用、中央に山菜ご飯を据え、その左右に焼売と焼サワラと真丈、タケノコやサトイモなどの煮物、豆腐の揚物や玉子焼、梅の和え物や菜の花などを置いていた。春の色彩と食材で、旅はなくても季節は感じられる。千扇弁当の価格は2010年時点で1,000円、2014年時点で1,050円、2018年時点で1,080円、2019年2月から1,200円、2022年4月から1,300円、2023年7月から1,400円。
2024年に「四季弁当和風」へ改称し1,600円。3月から5月まで山菜ご飯、6月から8月まで梅ちりめんご飯、9月から11月まで栗ご飯、12月から2月まであさりご飯を詰める。
※2024年9月補訂:改称と値上げを追記静岡駅で知られざる季節の駅弁。これは2023(令和5)年の夏バージョンで、6月から8月までの販売。掛紙もスリーブも着けない細長い容器を使用、中央に梅ちりめんご飯を据え、その左右に肉団子と玉子焼と和え物、カツオ竜田揚と酢の物とみかん、野菜ヒロウスやトウガンなどの煮物、茄子味噌や抹茶わらびもちなどを置いていた。夏っぽい色彩と食材で、旅はなくても季節は感じられる。千扇弁当の価格は2010年時点で1,000円、2014年時点で1,050円、2018年時点で1,080円、2019年2月から1,200円、2022年4月から1,300円、2023年7月から1,400円。
2024年に「四季弁当和風」へ改称し1,600円。3月から5月まで山菜ご飯、6月から8月まで梅ちりめんご飯、9月から11月まで栗ご飯、12月から2月まであさりご飯を詰める。
※2024年9月補訂:改称と値上げを追記静岡駅で知られざる季節の駅弁。これは2018(平成30)年の秋バージョンで、9月から11月までの販売。掛紙もスリーブも着けない細長い容器を使用、中央にシイタケとクリの御飯を据え、その左右にサンマ竜田揚げとごま団子とキウイ、サトイモやこんにゃくなどの煮物、鶏肉とカシューナッツの炒め物とわさび漬、きゅうりの酢の物とサクラエビを置いていた。秋の色彩と食材で、旅はなくても季節は感じられる。千扇弁当の価格は2010年時点で1,000円、2014年時点で1,050円、2018年時点で1,080円、2019年2月から1,200円、2022年4月から1,300円、2023年7月から1,400円。
2024年に「四季弁当和風」へ改称し1,600円。3月から5月まで山菜ご飯、6月から8月まで梅ちりめんご飯、9月から11月まで栗ご飯、12月から2月まであさりご飯を詰める。
※2024年9月補訂:改称と値上げを追記1983(昭和58)年放送のNHK大河ドラマ「徳川家康」にちなんで、同年に発売。正方形の容器に、徳川家の家紋を描いたボール紙のふたをして、その家紋の上に食品表示ラベルを貼り、割りばしを置き、紙ひもでしばる。松花堂弁当風に4区画に仕切られた中身はそれぞれ、赤飯、鯛めし、焼サバ、蒲鉾、玉子焼、エビフライ、鶏肉団子、安倍川餅、わさび漬け、アンズ。県内の産物と、徳川家康が命名したとも言われる安倍川餅を配したそうな。価格の割に見た目や内容が立派で、分量や詰め方や価格が安価だと思う、昭和の駅弁。価格は2006年時点で730円、2014年4月の消費税率改定で760円、2018年時点で780円、2019年2月から850円、2022年4月から900円、2023年7月から980円。
家紋の歴史は飛鳥時代か平安時代から現代にまで及ぶが、最も使用されたのはだいたい、室町時代から戦国時代を経て江戸時代までの時期における武家。戦乱の世の中で戦場での識別マークとして活用され、その後の和平の世の中では儀式的、儀礼的な性格に転じている。徳川家康が用いた家紋「三つ葉葵」や葵の紋は、天下統一後に将軍家一族の独占使用とされ、他家の使用を厳しく禁じた。
※2023年8月補訂:値上げを追記2006(平成18)年7月23日に購入した、静岡駅弁のふた。上記の2022年のものと、側面の表記は異なるが、ベースは同じ。中身はまったく同じ。おかずの折り重ね方や安倍川餅などを収めるプラ製トレーまで同じ。
1929(昭和4)年の発売だという、静岡駅のうなぎ駅弁。白御飯をウナギの蒲焼きで覆い、タレと玉子焼とわさび菜を添える、ただの鰻重。昭和の頃にはどこにでもあったそんな駅弁は、今は少なくなった。浜松がウナギ養殖の主産地でなくなって久しいが、静岡県や愛知県の主要駅にはいてほしい存在だと考えている。ただ、味がうまいか、味が合うかは別。今回はゴム草履でないが焼いた風味がない、不思議な味のウナギだった。価格は2018年の購入時で1,600円、2019年2月から1,700円、2022年4月から1,800円、2023年7月から1,900円。
※2023年8月補訂:値上げを追記上の駅弁「うなぎめし」の、2012(平成24)年時点での姿。主旨は変わらないが、箱の絵柄が違い、付合せは奈良漬とタレと山椒であった。
※2018年10月補訂:新版の収蔵で解説文を手直し上記の駅弁「うなぎめし」の、2006(平成18)年時点での姿。主旨は変わらないが、箱の絵柄が違い、容器も少し異なる。い、付合せは奈良漬とタレと山椒であった。2012(平成24)年頃からウナギの価格が暴騰する前は、ウナギの駅弁も他の駅弁とそれほど変わらない価格で提供されていた。この時は昔に東海道新幹線の車内販売で何度も食べたうなぎ弁当と、調製元が違うのになんとなく風味が似ていて、懐かしい感じがした。
※2018年10月補訂:新版の収蔵で解説文を手直し1967(昭和42)年11月17日12時の調製と思われる、昔の静岡駅弁の掛紙。「やいづ産うなぎ特製丸重弁当」だそうな。小さく丸い駅弁掛紙。
2022(令和4)年4月10日に静岡駅などで発売。缶詰生産量日本一を誇る静岡で、ツナ缶詰「シーチキン」で有名なはごろもフーズと、やきとり缶詰で知られるホテイフーズと、駅弁屋である調製元とのコラボ弁当。2020(令和2)年6月20日に発売し8月1日リニューアルの「ごちそうシーチキン弁当」に続く第2弾で、これと入れ替わりに駅弁売店へ出現した。
中身が見える弁当箱を、駅弁の宣伝文に中身のイラストと関係3社の公式サイトQRコードを記した帯で留める。中身は緑茶飯のやきとり御飯、シーチキン炊き込みご飯、ミニトマトとシーチキン入マカロニサラダ、親子焼き、シーチキンやきとりボール、まぐろ串カツ、黒はんぺん磯辺揚げ、シーチキン入なすみそ、わさび漬、大根桜漬、抹茶わらび餅。缶詰を主体に静岡と日本の庶民の味で満たされた、しかしなかなか高価な駅弁。7月頃までの販売か。
まぐろ・かつおの油漬けの缶詰めは、オーストラリアやアメリカや世界各地で親しまれる食品。日本では昭和時代初期に現在の静岡市清水で製造や輸出が始まる。同地で1931(昭和6)年に創業した後藤缶詰所もそのひとつで、第二次大戦後の1958(昭和33)年に商標登録し国内販売を始めたビンナガマグロの缶詰「シーチキン」が、昭和40年代に全国へ普及し、ツナ缶の代名詞となった。三保の松原の羽衣伝説が、会社のブランドのち社名となり、現在のはごろもフーズとなる。
同じく清水で1933(昭和8)年にツナやみかんの缶詰めを作り始めた三共商会は、今も魚介類やフルーツの缶詰を製造、一方で1970(昭和45)年発売のやきとり缶詰がヒットし、看板商品となった。創業社長の山本良作の人望が厚く、七福神の一柱である布袋様のようだといわれ、第二次大戦後にホテイ印をブランドに使用、のちに社名もホテイフーズとしたもの。
※2023年4月補訂:終売を追記実物には書かれていないが、静岡空港の開港と調製元の新工場移転を記念し、調製元と市民団体「色・豊かなまち静岡活用推進委員会」との共同開発により、2008(平成20)年4月4日に発売。富士山に見立てた竹皮柄で台形の容器を、駅弁の名前を書いたボール紙の帯にはめる。中身はサクラエビを散らした緑茶飯に豆腐ハンバーグ、レンコンのはさみ揚げ、黒はんぺんのてんぷら、じゃこ入り玉子焼、タケノコやシイタケなどの煮物、ナスみそ炒め、ゼリー。容器の形状も中身もユニークで、風味も良好。2013年頃までの販売か。
静岡駅の真正面にビルを構えていた静岡駅弁の東海軒は、静岡駅前紺屋町地区第一種市街地再開発事業に伴い、2006(平成18)年11月に工場を駅から南東へ約2km離れた特別工業地区へ移転、2010(平成22)年4月には本社もそこへ移転した。1929(昭和4)年築の鉄筋コンクリート3階建のビルは2007(平成19)年7月までに解体され、地元の新聞の記事になった。
※2023年4月補訂:再発売を追記プラ製トレーを発泡材で巻いた、簡素なタイプの二段重ねの容器に透明なふたをして、中身を見せて商品名を書くボール紙の枠にはめる。中身は下段にエビや椎茸の天ぷらに白御飯、上段に赤魚粕漬、ウナギ蒲焼、揚げ海老、タケノコ、玉子焼、メロンなど。高級な風味で見栄えと分量が簡素な御料理弁当で、駅弁というよりデパ地下系惣菜として市民に親しまれていそうな感じ。2013年頃までの販売か。
※2015年10月補訂:終売を追記2003(平成15)年4月頃に発売か。とても巨大な専用のボール紙正方形の容器を使用、中身はトレーで9分割され、桜海老御飯としらす御飯に抹茶パスタ、焼き魚に桜海老かき揚げに鰻蒲焼など、個々は少量ながら静岡を感じるものとそうでないものがいろいろ入って、お値段は小さく880円。「食の文化」「静岡まるごと召し上がれ」とは大げさでも、小食な方かおつまみに向きそう。2008年か2011年頃に終売か。
※2015年10月補訂:終売を追記側面に東海道五十三次の絵を縦に押し潰して印刷したボール紙製のパッケージの中に、断熱性の容器に入ったおかゆと紀州梅、鮪角煮と桜島大根つぼ漬が入ったミニカップと、コンセプトを記した紙が1枚入る。すっかり冷たくなった状態で食べたがプレーンなおかゆだけでもおいしくいただけた。粥駅弁は上州高崎だけではないことを認識。2005年以降に終売。
※2015年10月補訂:終売を追記1982(昭和57)年6月23日0時の調製と思われる、昔の静岡駅弁の掛紙。以前の静岡には深夜の駅弁需要があったが、このような駅弁までこういう時間帯に調製していたのかと思う。
1955(昭和30)年10月17日の調製と思われる、昔の静岡駅売り商品の掛紙。安倍川餅は今でも駅のキヨスクでも販売されているが、キヨスク専用の掛紙はない。
1933(昭和8)年9月28日11時の調製と思われる、昔の静岡駅売り商品の掛紙。富士山と安倍川と橋梁と、狩野宗信「東海道五十三次図屏風」府中と同じような絵柄を描く。調製元は現在の静岡駅の駅弁屋である東海軒。