北海道の中心地の中央駅。札幌市は明治2年(1869年)に開拓使が置かれたことで北海道の行政の中心地として発展を始めた、人口約196万人の道庁(都道府県庁)所在地。その札幌市を代表する駅として、道内各地への特急列車や空港駅への快速列車など、多くの列車が発着する。駅弁は1階コンコースや2階ホーム上の各地に置かれる売店で、早朝から深夜まで買うことができる。1880(明治13)年11月28日開業、北海道札幌市北区北6条。
1923(大正12)年に札幌駅で発売されたロングセラー。幕の内弁当でも助六寿司でもない駅弁「特殊弁当」では、北海道で初めてのものだという。2014年までには使われるようになったこの青いスリーブには発売年を記し、商品名を記して中身を少しだけ見せる。中身は昆布飯を鮭そぼろとイクラ醤油漬で覆い、奈良漬、鮭昆布巻、鮭蒲鉾、ふき煮を添えるもの。鮭以外の内容はよく変わるようで、茶飯や鮭飯だったり、イクラを散らしたり固めたり、錦糸卵や枝豆を載せたり、鮭でない付合せだったりするらしい。価格は2004年時点で1,000円、2014年4月の消費税率改定で1,030円、2019年時点で1,150円、2023年時点で1,250円。
※2023年5月補訂:写真と解説文を更新1969(昭和44)年の発売。札幌駅で半世紀の歴史を刻んだ、伝統の駅弁。細身の折箱を包む包装紙の、銀地に多数の魚拓が泳ぐ絵柄も、また半世紀変わらないものか。中身は小柄なやまべ(ヤマメ)寿しが4切れと鮭寿しが3切れに、ガリと奈良漬が少々。今時に珍しい、ワサビ入りの商品である。小食や小腹かおつまみに最適。
札幌駅のプラットホームは、1988(昭和63)年11月の高架化で北側に寄せられ、駅舎や駅ビルとホームとの間に空間が空いた。ここに北海道新幹線の札幌駅ができる予定だったらしく、しばらくは仮設芝居小屋などに利用されていたが、政治に翻弄されて本州からいつまでも延びてこないので、JR北海道は2003(平成15)年3月に地上38建ての札幌最高層ビル「JRタワー」他3棟のビルを建て、ホテルやデパートやショッピングモールにした。建物の寿命が来るまで新幹線は来ないと考えたのだろうか。しかし意外に早く2011(平成23)年12月に北海道新幹線の札幌延伸が実現し、新幹線札幌駅の位置を決めるうえでの障害になってしまった。
上記の駅弁「やまべ鮭寿し」の、2004(平成16)年時点での姿。見た目は変わらないように思えて、当時はやまべ寿しが1個多く、パインとチェリーのシロップ漬けも入っていた。価格は2004年の購入時に680円、2009年時点で700円、2014年時点で中身からやまべ1個とパインとチェリーを削り、600円へ値下げ。
※2020年12月補訂:新版の収蔵で解説文を手直し2014(平成26)年1月の京王百貨店の駅弁大会で販売。京王百貨店新宿店の開店50周年を記念し、「豪華海鮮対決!」として新作海鮮駅弁、あるいは催事場限りの弁当3種を実演販売した。他は熱海駅「海の膳 鮑」(1,980円)と福井駅「三種盛りかにづくし」。
3区画に仕切られた中身は、左に鶏ガラ飯を空煎りの焼き鮭で覆い紅生姜を添える「復刻版鮭めし」、右に昆布茶飯を醤油ダレで炊いた焼き鮭とイクラで覆いガリを添える「現代版鮭めし」、中央に白飯に鮭児の酢締めを3枚貼って昆布を添える「鮭児版鮭めし」。つまり、下の「石狩鮭めし今昔物語」に、鮭児版を追加したようなもの。
今と昔と催事を並べた新商品、記念商品には感心するし、鮭児の酢締めは鮭児だと念じて食べれば脂の乗りを感じるが、おそらく客に相応の知識と味覚を求めるハードルの高さで、具体的にはケイジケイジと騒いでも客がついてこられず、見た目にほとんど売れていなかった。各日500食×2週間分の鮭児の調達の苦労話が、駅弁大会の頃にテレビで取り上げられていたと思うが、会期の終了後は逆の苦労話が生まれてしまったかもしれない。なお、札幌駅では予約販売に応じていた模様。
鮭児(けいじ)とは、北海道では11月頃に獲れる若い鮭。精巣や卵巣が未成熟で、身にとても脂が乗っており、鮭1万匹あたり1匹程度しか獲れないため、とても珍重されるという。
札幌駅で伝統の駅弁「石狩鮭めし」の発売90周年を記念して、2013(平成25)年9月から翌年3月まで販売。その名のとおり、そしてパッケージに写真付きで紹介されるとおり、今の平成25年の石狩鮭めしと、昔の昭和40年代の石狩鮭めしを、付合せを含め半分づつ詰めた。
中身は、昆布茶飯を醤油ダレで炊いた焼き鮭とイクラで覆い、サケ蒲鉾とサケ昆布巻と大根漬を添えた平成の味と、鶏ガラ飯を空煎りの焼き鮭で覆い、帆立団子煮とシソ巻とミカンと紅生姜を添えた昭和の味。パサパサの鮭フレークな昭和の味と、しっとりした鮭イクラ丼な21世紀の味を、比べて体験できる、駅弁趣味的に感心できる商品。
北海道とJR北海道が2011(平成23)7月から9月まで実施した観光キャンペーン「プレ北海道デスティネーションキャンペーン」の協賛企画として、リクルート北海道じゃらんの雑誌「北海道じゃらん」が同年7月20日から9月30日まで実施した「北海道駅弁選手権2011」17社18種類のひとつとして、2011年のおそらく7月から9月30日まで販売された駅弁。なお、同イベントのホームページや駅弁に添付のしおりの写真では、掛紙に「釧路産」ではなく「根室産」と印刷されている。
細長い長方形の容器に透明なふたをして、中身の写真を美しく印刷した掛紙を巻く。中身は手まり鮭寿司が6個と、鮭と玉子焼ときゅうりを巻いた太巻きが2切れ。調製元は札幌駅の駅弁屋なのに、外観、内容、風味とも札幌駅弁の雰囲気はなく、鮭は回転寿司で流れるサーモンのような水っぽさがあり、手まり寿司は球形になり切れていない。名物ではなく、軽食であればOK。
時不知(ときしらず)は、北海道で春から夏にかけて漁獲される鮭のことを指すという。秋の旬のものより若い魚であり、当然に漁獲量は少なく、鮭児(けいじ)に次いで珍重されるサケだそうな。
みずから「おみやげ駅弁」を名乗る変わり者。竹皮に包んだ棒寿司を紙箱に詰める。中身は大葉を含む棒状酢飯を鮭の身で巻き、さらに厚めの真昆布で巻く。
今では全国の駅弁や空弁として同じような商品が出ており、それらを紹介するサイトの運営者としては見慣れたもの。しかしこれは24時間しか日持ちがせず、中身は珍しく密封パックでなく、そして汁が垂れず臭いはなく、淡い香りとみずみずしさは特筆もの。これだから札幌駅の駅弁はハズレがない。公式サイトによると2010年時点で販売を終了した模様。
※2010年10月補訂:終売を追記リクルートが北海道内で発行する月刊旅行情報誌「じゃらん北海道発」とのタイアップで、2003(平成15)年の9月から12月まで道内の8駅で各1種類が販売された「新・ローカル駅弁」の、札幌駅バージョン。富山駅弁「ますのすし」のようなボール紙の立体容器に、小柄な木製の押寿司容器が入る。模造1枚と本物2枚の笹の葉に包まれた中身は、北海道米ほしのゆめの酢飯の上に北海道近海で獲れたというサクラマスの厚い切り身を載せるシンプルなもの。だいぶ少量ではあるが風味は良い。また、パッケージとしおりの解説文が過不足なく好感が持てた。公式サイトによると2010年時点で販売を終了した模様。
※2010年10月補訂:終売を追記2004(平成16)年11月7日に購入した、札幌駅弁のふた。その絵柄は上記や下記のように変化しており、この時はいろんな色で鮭を描いた。この年の9月6日にリニューアルした中身は、鮭めしというよりはむしろイクラめしのように、鮭フレークや錦糸卵よりもイクラが目立っていて、伝統の姿とは異なる印象があった。
2003(平成15)年2月2日に購入した、札幌駅弁のパッケージ。当時は容器をボール紙のこんな容器に収めていた。中身は茶飯を鮭フレークと錦糸卵で覆い、イクラと小茄子と椎茸と青しそを添えていた。
2001(平成13)年1月28日に購入した、昔の札幌駅弁のパッケージ。上記の2003年のものと比べて、原材料表示の細かさしか異ならない。
1968(昭和43)年10月5日の調製と思われる、昔の札幌駅弁の掛紙。車窓から駅弁を買えた時代は、車窓から物がよく投げ捨てられていた時代だったようで、駅弁の掛紙にはそんな注意書きがある。ここでは「そのびんは窓から駄目よねえ坊や 投げては危い容器は下え」と、子供向けとも読める記述が珍しい。