熊本駅から普通列車で3駅十数分、鹿児島本線が三角線を分ける駅。宇土市は熊本市の南で有明海に面する、人口約4万人の城下町で、現在は熊本市のベッドタウン。駅弁は消え、駅舎も2009年にありふれた橋上駅舎へ建て替えられたが、かつての駅売り名物であった小さな餅が、今も駅前の商店で売られる。1895(明治28)年1月28日開業、熊本県宇土市三拾町。
宇土駅で長らく駅売り名物だったはずの鉄道銘菓。2009(平成21)年の駅舎の建て替えで駅に売店がなくなり、その前に62年の歴史を刻んだ和洋折衷の木造駅舎にあった売店は閉店していたようだが、この商品は今も駅前の調製元で売られるほか、熊本市内でも買える場所がある。10個の白く小さなあんころもちを、半透明の紙に包み、竹皮の柄を印刷した紙でまた包み、古めかしいデザインである朱色の掛紙をかけて、黄色い紙ひもでしばっていた。下の「うと餅」との違いは、調製元だけではないかと思う。昭和の昔の宇土駅でどうやって共存していたかは、今となってはもう分からない。
宇土駅は、快速や一部の急行は止まるけれど特急は止まらないという格であったうえ、三角線が分岐するといっても三角線のすべての列車は熊本駅まで乗り入れるため、分岐駅や乗換駅として賑わう場所ではなかったと思うし、国鉄末期以降の普通列車の増発と急行列車の廃止で都市近郊の駅となった。この駅が2011年10月8日、三角線の観光特急列車「A列車で行こう」がデビューしたことで、特急停車駅の地位をおそらく初めて手に入れた。
※2018年6月補訂:写真を更新2011(平成23)年2月5日に購入した、小袖餅の掛紙など。上記の7年後と、まったく同じ。
宇土駅で長らく駅売り名物だったはずの鉄道銘菓。2009(平成21)年の駅舎の建て替えで駅に売店がなくなり、その前に62年の歴史を刻んだ和洋折衷の木造駅舎にあった売店は閉店していたようだが、この商品は今も駅前のコンビニで買える。白く小さな専用プラ容器に、昔風の掛紙をかけて紙帯でしばり、専用の紙袋に入れて渡される。中身は10個の小さなこしあん入り餅。心地よい甘さと柔らかさ、そして日を置くと硬くなる点が昔懐かしい、今でいう駅スイーツや空スイーツの原点。価格は2006年時点で263円、2016年時点で324円。
宇土は熊本から10kmほどしか離れてないが、自前の城と城下町を持つ交通の要衝であり、鉄道も鹿児島本線が三角線を分け、過去には駅弁販売駅でもあった。戦後は熊本市の近郊という性格を増し、鉄道も1966(昭和41)年の天草五橋の開通で三角線が廃れ、2006年当時は広い駅構内と1947(昭和22)年築の駅舎に往時をしのぶ、通勤通学等の地元短距離客で賑わう駅であった。
※2018年6月補訂:写真を更新2006(平成18)年1月29日に購入した、うと餅の掛紙。こういう地元の銘菓の掛紙や包装紙は、長年変わらないものと思い込んでいたし、見た目は同じなのだが、12年後のものと比べて、書いてあることがかなり異なるのに驚いた。「うと餅」の文字から異なり、裏面の宇土櫓の解説文にも差異がある。