大阪駅から特急列車「スーパーはくと」で約2時間半。鳥取市は鳥取県の東部で日本海に面する、人口約18万人の城下町。日本最大級の砂丘、梨やラッキョウや煙草などの農業、カニやイカなどの漁業、駅や名所に近い温泉などで知られる。駅弁は第二次大戦前から売られ、戦後にカニの駅弁が人気となり、今も様々な駅弁が駅で買える。1907(明治40)年4月28日開業、鳥取県鳥取市東品治町。
1952(昭和27)年11月に鳥取駅で発売された、カニ寿司の駅弁。1958(昭和33)年に保存技術の開発で一年中カニ駅弁を売るようになったのは、この鳥取駅弁が元祖である。カニを描いたボール紙のパッケージに、またカニを描いたふたをかける八角形の容器が入る。因幡米の酢飯を覆い隠すように、カニのほぐし身とカニ足が、錦糸卵とともに敷き詰められている。
地元でも親しまれる、人気の駅弁。駅弁大会などで遠隔地へ輸送された商品は、酢が強くてカニの風味を感じにくく、しかし現地で購入したらそんなことはなく、まるで別物のようなカニの光沢と風味にうっとりした。2004年度JR西日本「駅弁の達人」対象駅弁。価格は2004年当時で920円、2010年時点で980円、2014年時点で1,010円、2016年時点で1,080円、2019年時点で1,200円、2020年時点で1,280円、2023年時点で1,480円。
※2023年12月補訂:値上げを追記2023(令和5)年11月12日に購入した、鳥取駅弁のパッケージ。日本鉄道構内営業中央会の「駅弁マーク」制定35周年を記念し、会員のうち29社が主に11月10日から期間限定で販売した31種類の記念駅弁のうち、鳥取駅の駅弁屋のもの。既存の駅弁「元祖かに寿し」の紙箱に、大きめの駅弁マークのシールを貼り、各社共通のしおりを添付した。容器や中身や味や価格は、通常版と同じ。11月10日から当分の間販売。
2004(平成16)年12月30日に購入した、鳥取駅弁のパッケージ。上記の2020年のものと、法定の表記を除き何も変わっていないことに驚く。イラストで紹介する鳥取の名所や名産にも、変化がないのだろう。
入手状況から1993(平成5)年11月24日12時の調製と思われる、昔の鳥取駅弁の掛紙の一部。上記の2004年のものと、同じ姿をしていたのではないかと思う。
入手状況等から1977(昭和52)年のものと思われる、昔の鳥取駅弁の掛紙。中身は現在の「元祖かに寿し」と同じだと思われる。掛紙にはカニ駅弁だからと松葉蟹が描かれ、その隅には観光イラストマップが載るという、当時の駅弁掛紙デザインの王道を行く。
1963(昭和38)年9月10日の調製と思われる、昔の鳥取駅弁の掛紙。上記の1977年のものと思われる掛紙と、絵柄は変わらない。
鳥取を代表する駅弁「元祖かに寿し」とは異なる、鳥取駅のカニ寿司駅弁。2012(平成24)年8月の東京駅の駅弁売店「駅弁屋 祭」オープンとともに発売した、東京限定の商品だろうか。四角い容器にかに寿し、かに細巻4個、かに握り1個、昆布を詰める端正な姿。飯とカニと少々の調味で構成する、輸送駅弁にありがちな豪華さや奇抜さを持たない奥ゆかしい姿に見えた。
木を組み立てた長方形の容器を正方形の掛紙で包み、ひもで十字にしばる。中身は酢飯の上にカニの脚とほぐし身を敷き、笹の葉で包んで押した押寿司がすき間なく詰まるもの。「元祖かに寿し」の変形版というよりかは高級版で、カニの旨みがぎゅっと押し込められているような感じがした。現在は要予約。通信販売対応商品。価格は2010年の購入時で2,100円、2014年時点で2,160円、2019年時点で3,000円。
※2021年2月補訂:値上げを追記入手状況から1988(昭和63)年9月21日9時の調製と思われる、昔の鳥取駅弁の掛紙の一部。上記の駅弁「元祖かに寿し特選笹かに」と同じ絵柄を持つ。、上等のカニ寿司駅弁だったのかもしれない。
2010年5月の調製元の創業百周年を記念して、そしておそらく京王百貨店駅弁大会に合わせて、2010(平成22)年11月6日に発売した、鳥取駅の名物駅弁「元祖かに寿し」の復刻版。1952(昭和27)年の発売時の姿を再現したという。経木折をイメージしたと思う経木枠の長方形の容器に木目を印刷したボール紙でふたをして、渋いデザインの掛紙をかける。
中身は酢飯の上をカニの脚肉とほぐし身や生姜に枝豆スや高野豆腐刻みで覆い、塩こんぶと奈良漬けを添えるもの。現在のものとは枝豆と高野豆腐の有無しか変わらない。味も通常版と同じ。興味深い試みであるが、京王百貨店の催事場では地味に埋もれており、1953(昭和28)年当時の資料発掘!!だとか煽ってあげたい気がした。現地で買うとオリジナルストラップが付いて1,300円(2015年時点で1,340円)だそうな。2018年までの販売か。2022年10月には日本鉄道構内営業中央会の鉄道開業150年記念復刻駅弁企画により、同月から期間限定で販売された31社34駅弁のひとつとして、1,480円で1か月間売られた。
※2023年4月補訂:再販を追記2010年1月の京王百貨店の駅弁大会で販売された催事向け商品。容器は「ゲゲゲの鬼太郎風呂茶漬け」のものを、中身は鳥取の名物駅弁「元祖かに寿し」のものを、それぞれ使って組み合わせた複合商品。専用に起こされたパッケージには、元祖かに寿しが1966(昭和41)年の京王百貨店の駅弁大会で第1位を取ったことと、この商品が今回の京王百貨店駅弁大会の限定品であることが記される。話題にはならなかったけれど、楽しい試みであった。