東京駅から新幹線で約2時間半、大阪駅から特急列車で約2時間半。金沢市は石川県の中央に位置する、人口約46万人の城下町。江戸時代に加賀藩の城下町として大いに栄え、街並みや郷土料理で観光客を魅了する。駅弁は国鉄時代からの駅弁屋である大友楼のものや、北陸地方各地のものが売店に並ぶ。1898(明治31)年4月1日開業、石川県金沢市木ノ新保7番丁。
東京駅から北陸新幹線で3時間前後。加賀市は石川県の南西端で日本海に面する、人口約6万人の温泉町。千年以上の歴史を語る山代や山中などの温泉地が主に関西地方から多くの宿泊客に親しまれ、年に約200万人の観光客が訪れる。加賀温泉駅は、これらの温泉地の玄関口であった動橋駅と大聖寺駅の役割を一本化するため、その両駅に挟まれた作見駅を1970(昭和45)年に改称し整備したもので、2024年には新幹線の駅ができた。駅弁は福井県の今庄駅へ1896(明治29)年に進出した駅弁屋が、大聖寺駅を経て加賀温泉駅の駅裏へ移転してきた。1944(昭和19)年10月1日開業、石川県加賀市作見町。
2023(令和5)年10月に金沢駅などで発売か。その名から秋の季節の駅弁だと思われる。中身の写真を紅葉とカニの赤で彩った絵柄の紙箱に収めた、丸いプラ容器に松茸ご飯を詰め、松茸煮のスライス、ベニズワイガニの棒肉の酢漬け、カニほぐし身、錦糸卵、栗甘露煮を載せて、透明なふたをする。クリはともかくカニと松茸と御飯が同じような味を持つように感じた丼もの。金沢駅の駅弁売り場に華を添える。
2023(令和5)年1月の京王百貨店と阪神百貨店の駅弁大会で輸送販売。ノドグロとカニのイラストを描くスリーブに収めた、正方形3個分の細長い容器で、茶飯をのどぐろ(アカムツ)焼と栗と人参と椎茸を覆い、カニ飯をベニズワイガニとズワイガニのそぼろと爪ととさかのりで覆い、あられ海老団子、有頭海老、海老旨煮、白身魚揚げ、金時、鴨煮、ごぼう、笹麩饅頭を詰める。そんな構成なので、「たっぷりと」の宣伝文に違い、駅弁の名前になるノドグロとカニの存在感はそれほどでもないため、幕の内弁当のように機能的な食事に思えた。
2023(令和5)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売。小柄で四角い容器に飯を詰め、蟹の脚肉、腹肉、ほぐし、内子を「ふんだんに」載せ、バイ貝と椎茸と海藻と錦糸卵で補い、玉子焼と煮物と青菜を添える。見た目でも詰め方でも、催事場のカニ弁当らしからぬ上品さを感じるが、香箱蟹やその内子が高価なのだろう、3000円以上の高額商品となり、催事場で苦戦していたようにみえた。
2019(平成31)年1月1日に金沢駅と加賀温泉駅で発売。駅弁の名前は江戸時代の加賀版の石高に由来する加賀百万石から来ているのではないかと思ったら、2017(平成29)年発売の石川県産米「ひゃくまん穀」の宣伝文がスリーブにあり、こちらのほうが由来かもしれない。中身は円形の容器に酢飯を敷き、ベニズワイガニの棒肉、ズワイガニのほぐし身、香箱蟹(ズワイガニのメス)の内子や外子などの和え物で覆うもの。つやつやのカニ脚と蟹ほぐし身に、濃厚な香箱蟹で、柔らかくてきれいなカニ丼。
2014(平成26)年1月の阪神百貨店の駅弁大会でデビューか。掛紙にあるとおり冬季限定で、金沢駅と駅弁大会で売られる。そんな新しい駅弁らしからぬ、古風な絵柄と風合いの掛紙を使う。中身は酢飯を30本くらいのカニ脚と、少々のカニほぐし身とガリで覆うもの。同じ調製元でカニ棒肉がきれいに整列する「加賀のかにすし」より、食べた際の柔らかいカニの存在感は大きいと感じる。価格は2014年の発売時で1,360円、2015年時点で1,480円、2023年時点で1,680円。
調製元は加賀温泉駅の駅弁屋だが、この頃には金沢駅の駅弁と宣伝するようになり、2015年3月の北陸新幹線開業以降は加賀温泉を名乗らなくなったと思う。もとは1896(明治29)年に福井県の今庄駅で創業し、1962(昭和37)年に東の石川県の大聖寺駅へ移転、さらに1970(昭和45)年に1駅東の加賀温泉駅へ移転した駅弁屋なので、さらに東へ行ってもおかしくない。
※2023年12月補訂:値上げを追記2014(平成26)年1月の京王百貨店の駅弁大会でデビューか。四角い容器いっぱいに甘い酢飯を詰め、カニ脚肉を同じ方向にとにかく並べ、甘酢生姜を添え、カニが華やかな絵柄の掛紙で包む。カニ脚は細身のベニズワイガニなので、豪華さや派手さは催事場の北海道駅弁に負けるが、そのツヤと香り、そしてカニをたくさん食べたなという満足感では負けない。カニの味と香りが自然に生きている感じを受け、落ち着きのある良い駅弁だと思った。価格は2014年の発売時で1,350円、2017年の購入時で1,200円、2019年時点で1,250円、2023年時点で1,380円。
※2023年12月補訂:値上げを追記1970(昭和45)年頃の発売、10月から6月までの販売。八角形の小箱を、真っ赤なカニを大きく描いた箱に収め、その裏面は「加賀温泉駅を中心とした観光案内図」となる。中身は酢飯にベニズワイガニのほぐし身を塗ったような押寿司が、ひとくちサイズの正方形で10個並ぶもの。この内容は加賀よりはむしろ、越前地方に独特のタイプ。価格は2003年時点で1,000円、2015年時点で1,080円、2019年時点で1,150円、2023年時点で1,350円。
※2023年4月補訂:写真を更新し値上げを追記し解説文を手直し2024(令和6)年1月の京王百貨店の駅弁大会で輸送販売。この催事で、掛紙を復刻した駅弁「昭和レトロな掛け紙弁当」のひとつとして売られた。加賀温泉駅の名物駅弁「日本海名産かにすし」について、「石川移転60周年記念復刻掛け紙」と銘打ち、八角形の容器に普段のボール紙箱でなく掛紙をかけて販売した。絵柄は上記のとおり、現行のものと同じ。容器と中身と価格も同じ。「石川移転60周年」とは、調製元が福井県の今庄駅から石川県の大聖寺駅へ移転した1962(昭和37)年から起算したのだろうが、60年を一年半くらい過ぎており、その時に作った掛紙だろうか。
2003(平成15)年2月15日に購入した、加賀温泉駅弁の外箱。書いてあることも中身の内容も、上記の2023年のものや、下記の1994年のものと変わらない。左右の注意書きも、昭和時代の駅弁掛紙でよく見られた表現のままで懐かしい。
入手状況から1994(平成6)年2月13日11時の調製と思われる、昔の加賀温泉駅弁のパッケージの一部。上記の9年後と、おおむね変わらない。
冬季限定の駅弁と表示して、2021(令和3)年以降に百貨店の催事場で実演販売されているらしい。下記の駅弁「香箱蟹丼」と同じスリーブに、ふたが透明な黒い容器をはめる。中身は酢飯を、香箱蟹(こうばこがに:石川県で水揚げされたメスのズワイガニ)の外子(腹の卵)と内子(甲羅の中の未成熟卵)、ベニズワイガニの棒肉とほぐし身で4分の1ずつ覆い、ガリを添える。カニの身より多い卵を存分に味わえる。小さいメスやベニズワイガニが安価でお徳だったり、ズワイガニと不当表示して売った時代は、もう10年以上前のこと。今では絶品グルメや高級食材として、これだけ高額な商品になった。
2021(令和3)年7月にインターネット上の通信販売で発売。コロナ禍による駅弁の売り上げの激減を受けて、急速冷凍機を導入のうえ、約3か月の消費期限を持つ冷凍弁当の通信販売を始めたという。容器は常温の駅弁でも使えそうな、長方形の木質容器にプラ製トレーを収めて紙のふたをして、掛紙をかけたもの。これに食べ方のチラシとたれのボトルを添付し、透明な袋に密封する。
中身はカニ飯をカニほぐし身とカニ棒肉で覆い、とさかのりと椎茸煮を添えたもの。ジェル状の「酢ジュレ」をかけていただくものらしい。見た目のカニだらけと違い、カニの味や香りを控えめにした、おだやかなカニ弁当の保存食。
2020(令和2)年1月の京王百貨店の駅弁大会、阪神百貨店の駅弁大会、2月の鶴屋百貨店の駅弁大会で実演販売。茶飯をレンコンと玉子焼と小松菜やシイタケなどと、のどぐろ焼き3枚で覆うとともに、金粉をまぶしたカニとエビのおいなりさん各1個という、飯と飯の駅弁。見た目の良い小箱で、良いおつまみになるとも評された。2022年までの販売か。
※2023年12月補訂:終売を追記2020(令和2)年1月に京王百貨店とスーパーのアピタで販売。長方形の容器に正方形のトレーをふたつ収め、一方に鯛と甘えびと平目の昆布締め丼を、他方にカニほぐし身とカニ爪のカニ丼を詰める。昆布をめくるとタイ、アマエビ、ヒラメの横並びが出現するのは、まるで人気の新潟駅弁「えび千両ちらし」風の演出。中身は良さげなのに、仕様なのか輸送のためか、酸味が強烈で風味がなかった。
2019(平成31)年1月1日に金沢駅と加賀温泉駅で発売。同月の京王百貨店の駅弁大会での実演販売でデビュー。ドリアの駅弁など、他に聞いたことがない。ズワイガニやベニズワイガニのカニ飯に、香箱蟹(ズワイガニのメス)入りのホワイトソースをかけ、カニ脚、ズッキーニ、さつまいも、赤パプリカ、レンコン、ヤングコーン、しめじを散らし、チーズをかけてオーブンで焼く。これは冷めてもおいしいカニドリア。とてもユニークな駅弁が出てきたものだと思う。2022年までの販売か。
※2023年12月補訂:終売を追記2019(平成31)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売。上記の駅弁「蟹のドリア」を、京王百貨店駅弁大会限定で、その名を記した特製どんぶりに入れて販売した。2018年の水戸駅「常陸牛山椒風味カルビ弁当」、2017年の鳥取駅「山陰鳥取かにめし」、2016年の米子駅「海の宝箱丼」、2015年の名古屋駅「抹茶ひつまぶし日本一弁当」と同じ。今回は中身がドリアなので、通常版の紙カップよりもこちらの器のほうが、おいしくて食べやすかった。また、こちらはスリーブでなく掛紙を使ったので、よりさらに駅弁らしくも見えた。
2018(平成30)年1月の京王百貨店の駅弁大会で販売。翌2月に金沢駅か加賀温泉駅で販売された模様。以後の存廃は不詳。長方形の加熱機能付き容器に茶飯を敷き、カニほぐし身で覆い、カニ爪を置き、ニンジンとサトイモと玉子焼を添える、古典的な内容のカニ駅弁。スリーブの絵柄のような派手さはなく、これも無難な安心感。値は張る。この冬限りで終売の模様。
※2019年8月補訂:終売を追記2017(平成29)年1月の京王百貨店の駅弁大会でデビューか。四角い容器に酢飯を詰め、ベニズワイガニの脚肉とほぐし身、香箱蟹の内子と外子のペースト、いくら、ガリで覆う。珍味の味と香りが自然に生きている感じを受け、落ち着きのある良い駅弁だと思った。ただ、めったに売られない商品であるかもしれない。この冬限りで終売か。2021年に中身と値段を変えて再発売か。
※2022年2月補訂:再発売を追記2016(平成28)年1月の京王百貨店の駅弁大会で、目玉の駅弁対決の一番手として実演販売。以後も冬季限定で販売か。駅弁の名前のとおり、白御飯をノドグロと、メスのズワイガニである香箱蟹(こうばこがに)のほぐし身を置き、イクラ、ベニズワイガニ、玉子焼、わさび菜を添える。
この駅弁大会での駅弁の実演販売では、最も長い行列を作っていたと見える。脂がほどほどに豊かなノドグロの切り身焼きが良いおかずになり、香箱蟹の味噌と卵と身がまた良い滋味を出し、しかしいずれも単品や大量に入れると食べていて飽きが来ると思うので、百貨店の公式ブログで紹介するとおりの「ベストマッチ!」。なお、今回買った品は、新作を大量に製造していたからか、具の詰め方が雑だったと思う。価格は2016年の発売時で1,600円、2019年時点で1,700円。2020年までに終売か。
※2020年4月補訂:終売を追記2014(平成26)年1月の京王百貨店の駅弁大会でデビューか。京王百貨店駅弁大会以外で売られたことはあるのだろうか。カニほぐし身を混ぜたおこわに、カニ脚肉を1本置いて、カニ爪、サトイモ、タケノコ、小松菜などを添える。見た目でも風味でもカニが控えめ過ぎる印象だが、これだけ水気豊かな柔らかさがあるおこわは、常温の弁当では初めての体験だった。翌2015年の京王百貨店の駅弁大会でも輸送販売されたが、何らかの理由で購入の翌日から来なくなってしまった。この時までの販売か。
※2016年12月補訂:終売を追記上記の駅弁「加賀のかにすし」の、2014(平成26)年1月のデビュー当時の姿。中身はほぼ同じだが、掛紙が赤く、とびっこが入り、カニも飯も少し多かったと思う。味は変わらない。
※2018年1月補訂:新版の収蔵で解説文を手直しエビとカニを描いた正方形ふたつぶんのボール紙製容器を使用、ふたを開けると裏側に簡単なコラムが載る。その中にレンジ対応のプラ製食品トレーがふたつ入り、片方には酢飯の上に海老や山菜や椎茸が、もう片方には御飯の上に細かいカニほぐし身が、それぞれ載っている。いずれもしっかり硬く押されているのは加賀の伝統か。これに加えてプラ容器の形状により、中身の品質にかかわらず少々の味気なさを覚える。裏ぶたのコラムともども、何らかの強化策が欲しい感じ。2005年までの販売か。
※2015年9月補訂:終売を追記2004(平成16)年5月1日に発売。2001(平成13)年に駅弁大会向けに売られた、駅売りのない「日本海かにちらし」の容器を、越前焼から経木枠のわっぱに替えて、価格を650円下げたもの。中身はカニの爪と脚肉と炒り身(ぼろ)が錦糸卵などと一緒に酢飯の上に載せられるカニ弁当。2004年度JR西日本「駅弁の達人」対象駅弁。2005年までの販売か。
※2015年9月補訂:終売を追記2001(平成13)年に発売。越前焼の美しい容器を使用し、中身はカニの爪と脚肉と炒り身(ぼろ)が錦糸卵などと一緒に酢飯の上に載せられるカニ弁当。量は少なく、価格の多くは容器代に費やされているようだが、確かに容器に手抜かりはなく、茶碗として十分実用に耐えるばかりでなく観賞用にも向く。
福井の業者が「日本窯元めぐり」として加賀温泉・名古屋・豊橋・草津・岡山・和田山の各駅の駅弁業者に声を掛け、同じ大きさの容器と同じ値段で6種の駅弁をプロデュース、駅弁大会に売り込んだのだろう。現地で入手できるかは不明。