営業当時で、旭川駅から函館本線と留萌本線を乗り継いで約1時間半。留萌市は北海道の北西部で日本海に面する、人口約2万人の港町。昔はニシン漁、古くは石炭の積み出し、かつてはカズノコやタラコなどの水産加工業で栄えた。駅弁は1937年から1980年代まで「とりめし」などが売られたほか、2003(平成15)年8月から駅そば店で「にしんおやこ」1種類が予約販売された。1910(明治43)年11月23日開業、2023(令和5)年3月31日限りで廃止、北海道留萌市船場町2丁目。
2003(平成15)年8月30日に発売された、留萌駅で約15年ぶりの駅弁。木枠の長方形の容器に木目柄の紙ふたをかけ、さらにニシンと商品名を描く紙ふたを置いて、輪ゴムでしばる。中身は茶飯の上にニシン、カズノコ、かぼちゃ、山菜などを置くもの。2本のカズノコは太く、ニシンも分量十分。個人的に高価で正月に一度だけ少量が食べられるカズノコと、高級魚化した後のニシンしか知らないので、価格に割安感を覚える。風味も柔らかくしっかり。価格は2003年の発売時や2018年の購入時で890円、2020年7月に道の駅るもいで売り始めた時点で900円、2023年時点で1,000円。
ゴルフ場関係者の冬場の就業対策で設立されたという業者が、2003(平成15)年1月にかつての駅弁屋である駅構内そば屋の営業権を譲り受け、駅弁大会に出せるようにと、留萌の味であるニシンとカズノコを使った駅弁を開発し、一日10〜20個を売り始めたという。
留萌駅の廃止により、2023年3月限りで駅では終売。留萌駅で最終日まで人気だった駅そば店ごと、4月20日に駅の裏側ないし北側で2020年7月にできた道の駅るもいの管理棟1階「むさし家」へ移転し、この駅弁も予約なしで販売される。
※2023年6月補訂:値上げと現況を追記上記の駅弁「にしんおやこ」を、現地で買ったもの。これを売る留萌駅の立ち食いそば店に、駅弁の存在を示す掲示も案内も実物もないが、店員に「明日の何時に弁当を何個」と注文すると、これが買えた。前日までの予約が必要。駅や観光案内所やネット上で配布する留萌のイラストマップで、駅弁の存在を知ることができた。
容器も中身も価格も、上記の駅弁大会版とおおむね同じ。それと比べて、かぼちゃ天がなくゆで卵があるなど、中身が少し違うほか、2本のカズノコが薄味で柔らかい気がした。現物に調製の情報がなく、いつどこで誰が作っているかは分からなかった。
留萌駅は、かつて留萌本線が羽幌線を分ける駅であり、留萌市の人口は4万を数え、駅は石炭の積み出しや急行列車の旅客で賑わった。しかし昭和40年代に出炭が止まり、昭和末期に漁業や水産加工業が衰え、1987(昭和62)年3月には羽幌線が廃止された。留萌市の人口は半減し、鉄道や駅の利用者は一桁減り、2016年12月に留萌駅から増毛駅までが、2023年3月限りで石狩沼田駅から留萌駅までが廃止、残る深川駅から石狩沼田駅までも2026年3月限りで廃止される見込み。
※2023年6月補訂:留萌本線の現況を追記2006(平成18)年10月28日に購入した、留萌駅弁の掛紙。後の物と同じ。容器や中身も同じ。当時は掛紙に食品表示ラベルを貼り、そこに販売者の名称と所在地と連絡先を記していた。
2008〜2009年の駅弁大会シーズンから、各地のデパートやスーパーの駅弁催事で出回る商品。これが上記の駅弁「にしんおやこ」の後継なのか疑義駅弁なのか、データが不足し分からない。黒塗りで長方形の容器を、商品名を小さく描いた黒いボール紙の枠にはめる。中身は白御飯の上を模造葉と錦糸卵と菜の花醤油漬で覆い、カズノコを正油漬、白正油漬、めんたい味の3種で各1本ずつ並べ、ニシン甘露煮、ニシン昆布巻、大根桜漬を添えるもの。構造的に薄味のカズノコはおかずになりにくく、固めのニシンが良い仕事。現存しないと思われる。
※2023年6月補訂:終売を追記1980年頃のものと思われる、昔の留萠駅弁の掛紙。炭鉱はなくとも海産で賑わい、留萠本線が羽幌線を分けていた頃の留萠駅弁といえば、この「とりめし」であった。
留萌駅から列車で30分。増毛町は北海道の北西部で日本海に面する、人口約4千人の港町。かつてニシン漁や北方警備、地域の行政や経済の中心として栄え、鉄道が通じた。駅前には当時の町並みや造り酒屋が残る。駅弁はないが、駅舎に入居する海産物店で弁当を販売していた。1921(大正10)年11月5日開業、2016年12月4日限りで廃止、北海道増毛郡増毛町弁天町。
増毛駅で買えたお弁当。地元の水産加工販売業者の直売店が、2012(平成24)年4月から増毛駅舎に入居しており、この会社が売るタコ飯ないしタコ加工食品である模様。プラ製の容器に、タコ飯と紅生姜を詰めたお惣菜。小さく刻んだ柔らかいタコと、醤油飯の味を楽しめた。増毛駅は2016年12月4日限りでなくなるが、増毛駅の駅舎と敷地は増毛町へ無償で譲渡されるそうで、この商品も継続して売られる可能性があると思う。