2006(平成18)年の11月25日から30日にかけて、台湾各地の駅弁販売状況を見てきました。そこで日本以上にさかんな駅弁立売の現況が確認できましたので、こちらで紹介します。
台湾には、日本の九州の大きさがある台湾島に鉄道があります。台湾の鉄道は、日本の旧鉄道省にあたる「台湾鉄路管理局(臺灣鐵路管理局)」(台鉄)が台湾島を一周する路線その他支線で約1,100kmの路線を持つほか、日本の旧営団地下鉄にあたる台北大衆捷運公司が台北で地下鉄や新交通等で約70kmの路線を運営、その他に阿里山森林鉄道などの観光鉄道があります。まもなく日本では台湾新幹線と紹介される台湾高速鉄道が開業しますが、台鉄ではない別会社の運営です。
台鉄の列車は主に4種類。「自強号」「キョ光号」(キョはくさかんむりに光)「復興号」と「区間車」その他の列車で、それぞれ日本の特急、急行、準急(旧国鉄)、普通列車に該当すると紹介されます。区間車を除き全車指定席で、運賃は種類別に定められており、原則として1列車1区間ごとに1枚のきっぷが必要です。
駅弁は台湾鉄路管理局(台鉄)の約13駅と、阿里山森林鉄道の奮起湖駅に存在するようです。台鉄駅の駅弁は、台鉄そのものが調製し販売する駅(台北、台中、高雄、花蓮など)と、入札制で構内営業の権利を得た業者による立売が実施されるらしい駅(福隆、池上、関山など)に分類されます。駅弁の総称は「鉄路弁当(鐵路便當)」。日本統治時代に駅弁や弁当文化が持ち込まれ、戦後もそのまま定着したため、「便當」は「べんとう」と読みます。
台湾で駅弁の立ち売りが実施されている駅は、2006年11月の実地調査では6駅を確認しています。
区間車を含むほとんどの列車に対して、ホーム上で駅弁立売が実施されているようです。訪問時には3名の駅弁立売が「礦工月台便當」(50元)を買い物かごで販売していました。
区間車は平渓線から来る2扉ディーゼルカーの他はほとんど3扉ロングシートの通勤電車ですが、これに対しても駅弁立売が実施され、乗客が買って車内で食べる姿も見受けられます。
区間車を含むほとんどの列車に対して、ホーム上で駅弁立売が実施されているようです。訪問時には5名の駅弁立売が「昇珍福隆月台便當」(50元)を買い物かごで販売していました。
福隆は海水浴場が有名で、キャンプ場や大駐車場も備えた大きな公園が駅付近にあり、レジャー客を集めていました。駅弁に加えて駅周辺の小さな商店街に10軒程度の弁当屋がある、弁当の街としても知られるようです。
おそらく自強号とキョ光号の発着時に、ホーム上で駅弁立売が実施されているようです。訪問時には1名の駅弁立売が「台灣人的飯包 飯悟饕正宗池上原創老店」(60元)を買い物かごで販売していました。
ここは台湾で最もマイナーな駅弁立売駅であるようです。売り子さんが単数だった駅は今回の訪問ではここだけ、台東線の駅弁販売駅でよく見られる、列車到着前に乗客がデッキで駅弁立売を待ち構える姿もありませんでした。駅弁の掛紙に記載された漢字から想像して、池上の弁当屋かそのチェーン店が、たまたまここの構内営業を取ったのかもしれません。
おそらく自強号とキョ光号の発着時に、ホーム上で駅弁立売が実施されているようです。訪問時には4名の駅弁立売が「池上台東站鐵路月台便當 全美行」(60元)を買い物かごで販売していました。
池上は弁当が名物な土地。乗客は列車が駅に着く前にデッキで待ち構えて、停車と同時に売り子さんを囲み駅弁を奪い合います。100元札を出した客に10元玉4枚が入った袋を渡す効率策も見られ、日本でいうかつての信越本線横川駅のような光景が展開されていました。
おそらく自強号とキョ光号の発着時に、ホーム上で駅弁立売が実施されているようです。訪問時には2名の駅弁立売が「悟餐飯包」(60元)を買い物かごで販売していました。
池上と関山は列車で20分程度しか離れておらず、こちらの駅弁も知名度があるようです。台東線沿線は最近まで台湾有数の穀倉地帯であり、ここが産地であるお米は日本でいう魚沼コシヒカリのようなブランドネームがあるようです。
通常は一日1往復の列車発着時に、ホーム上で駅弁立売が実施されているようです。訪問時には2名の駅弁立売が名無しの弁当(80元)を買い物かごで販売していました。
阿里山森林鉄道も奮起湖の駅弁も、台湾のガイドブックには必ず掲載される有名な観光名物。しかし今回の訪問で立売されていた弁当は、それらで紹介される弁当とは外観も中身もまったく異なる、経木または透明容器に入った簡易的なものでした。ここで下車すれば、金属製または木製の容器に入った、紹介例どおりの弁当が商店で買えるようです。
今回の訪問で確認できた駅弁販売駅は次のとおりです。東部幹線や各支線に見落とした駅弁販売駅はないと思いますが、西部幹線には他に台鉄の駅弁を販売する駅があるかもしれません。