駅弁はかつて、駅で売られる、駅のホーム上で立ち売りされるものでした。1960年代以降、昭和30年代以降、駅弁の売り方や買われ方は変化し、多様になりました。今では駅でない場所で売られる駅弁や、むしろ駅より駅以外でよく売れる駅弁、駅では買えない駅弁までもが出現しています。
立売人が、駅弁などの商品を詰めた規定の箱を首や肩から下げて、駅のホーム上を移動しながら販売します。旅客は列車から降りずに、客車の窓を開け、金銭を支払い駅弁を買うことができます。国内ではあと数駅を残すのみの、今では貴重な光景です。駅弁の立ち売りの現況については「駅弁立売情報」をご覧ください。
なお、ホーム上などの駅構内に、台車やカートやワゴンなどを持ち込み、移動せずに駅弁などを販売する形態も、昭和時代の国鉄時代には内部的に立ち売りと定義されていました。青森県の青森駅、新潟県の直江津駅、福岡県の博多駅などに残っていましたが、2000年代にはなくなったようです。
駅のホーム上やコンコースなどに、駅弁屋が駅構内に駅弁を売る売店を設け、そこで駅弁を販売します。駅弁を見て買える、多くの駅弁を選べる、駅弁の売り切れが少ない、駅弁の予約や取り置きに対応できるところが多いなど、最も駅弁が買いやすい売り方だと思います。古くから存在したと考えられますが、駅弁の立ち売りが難しくなってきた1960年代以降、昭和30年代以降に、各地へ普及しました。2000年代以降、このような売店は数を減らし、今では主に東京都や神奈川県と東海道新幹線の沿線くらいにしか、残っていないかもしれません。
現在の駅弁の、大きな駅での売り方の主流です。駅のホーム上やコンコースなどに、鉄道会社の子会社などが売店を設け、そこに駅弁屋が駅弁を卸します。駅弁を見て買え、多くの駅弁を選べることが多いのですが、販売元が調製元に商品を発注する必要があるため、駅弁が売り切れたり入荷しないことが多い、駅弁の予約や取り置きに対応できないか手間が掛かるなどの、不便な点があります。平成時代から、特に2000年代以降、駅弁屋の駅弁売店を置き換えたり、駅弁屋が売店を閉めてこれに切り替えたりしました。
現在の駅弁の、売り方の主流です。駅のコンコースや駅舎などにある、コンビニエンスストアやキオスクなどの売店で、駅弁も販売します。上記の(3)との違いは、駅弁を売り飲料なども売る店か、食料品などを売り駅弁も売る店かの違いです。駅弁の種類や入荷数が少なく売り切れが多い、駅弁が売られていることが分かりにくい、駅弁の予約や取り置きへの対応が困難などの欠点がありますが、逆に一日数個だけ売れる、それしか売れない駅弁に対応できることから、駅弁の存続に貢献しています。
1960年代のモータリゼーション(車社会化)やマイカーブームで、当時の駅弁屋の一部もドライブインに、駅でなく道路際の売店や食堂に進出しました。その頃に高速道路が伸び始め、日本道路公団が設置し道路施設協会が管理するサービスエリアに進出する駅弁屋も現れました。これらの施設で、駅で売られる弁当と同じ駅弁が売られることがあります。また、駅弁屋が駅前から幹線道路沿いに移転したり、道路沿いに弁当店を設けて、車で駅弁を買いに行けることもあります。
各地のスーパーやデパートでは、土日曜日に駅弁を仕入れて販売したり、約1週間の会期を設けて催事場で駅弁や名産品を販売することがあります。これらは「駅弁大会」と呼ばれたり掲示されます。弁当という食品の衛生管理の都合で、1月から2月までを中心に、10〜3月頃に多く実施されます。大規模な駅弁大会がテレビや雑誌などで紹介されたり、駅弁大会に向けて新商品を投入する駅弁屋も珍しくありません。百貨店の食品売り場に一年中駅弁が入荷したり、駅弁屋が店舗を構えることもあります。
多くの駅弁屋は、電話、FAX、郵便、インターネットなどで、駅弁を注文すると、近隣に配達してくれます。駅弁も弁当の一種ですから、駅弁屋も市中の弁当店や仕出し料理店と変わらない商売ができるのです。常温でおいしく安全な駅弁の、比較的大量の注文に対応できる駅弁屋が多いため、会議や楽屋やイベントなどでの仕出しに重宝されます。
また、古くからの駅弁屋は、注文により列車内や乗降口あるいは改札口まで、駅弁を届けてくれます。旅客への供食は駅弁屋の本業。すでに駅から撤退した駅弁屋の駅弁も、団体予約により駅の中で受け取れることがあります。列車の立ち往生や大幅な遅れで、車内の乗客に駅弁が配られることがあるのも、駅弁屋の役割です。
一部の駅弁屋は、電話、FAX、郵便で、インターネットなどで駅弁を注文すると、全国あるいは地域限定で宅配してくれます。駅弁を含む弁当のほとんどは、法的にいたみやすい食品に分類されるものであるため、賞味期限または1日を超える消費期限に対応できる、押寿司や棒寿司、冷蔵や冷凍のものに限られたり、10〜3月に限定して通信販売する駅弁や駅弁屋もあります。通信販売を利用してまで駅弁を買いたい客は、多くなかったと思いますが、2020(令和2)年からの新型コロナウイルス感染症の全世界的流行を受けて、外出せずに買える駅弁や、駅売りで打撃を受けた駅弁屋の対策として、注目されるようになりました。
1960年代以降、昭和30年代以降、列車内での駅弁の販売が広まりました。窓の開かない列車や、停車時間の短い列車が増え、駅弁を立ち売りで売りにくくなったため、駅弁屋が単独あるいは共同で、車内販売へ、列車内を移動しながら旅客に商品を売る商売に、進出し始めたものです。駅弁屋による車内販売は1990年代までに衰退、車内販売そのものが2010年代に衰退し、現在は車内で駅弁を買えることは、ほとんどありません。観光客向け臨時列車の一部では、車内に売店を設け、そこで弁当が買えることがあります。