松山駅から特急列車「宇和海」で約80分。宇和島市は愛媛県の西部で豊後水道の宇和海に面する、人口約7万人の城下町。江戸時代の天守や闘牛で知られるほか、リアス式海岸を活かした養殖水産業と水産加工業がさかん。駅弁は1960年代から1990年代まで売られ、闘牛にちなむ牛飯「斗牛弁当」が知られた。以後は発売と終売を繰り返す。1914(大正3)年10月18日開業、愛媛県宇和島市錦町。
2021(令和3)年10月2日から11月28日までの土休日に宇和島駅で販売。JRグループの観光キャンペーン「四国デスティネーションキャンペーン」の開催に合わせ、愛媛県宇和島市の道の駅みまが、JR予土線の観光列車「しまんトロッコ」の運転日に、宇和島駅で一日40個を販売した。宇和島市三間町産の「みま米」を使う、何も混ぜず入れない白飯のおにぎり2個と、玉子焼とじゃこ天と焼鮭とふき漬を、透明なシートに包んだうえで竹皮に包み、商品の名前やトロッコ列車を描いた掛紙を巻き、ポリ容器の温茶を添付。
駅弁を名乗らないが、明治時代に初めて売られた駅弁とされる内容をイメージする構成と、昭和時代の懐かしい鉄道アイテムであるポリ茶瓶で、駅弁を強く意識した商品にみえる。自慢の白米は強く香り、じゃこ天で宇和島や南予を導入。今回は都会から遠いうえに情報の発信に乏しく、知られずに売り終えた感があり、もったいない。調製元は宇和島市内の仕出し屋さん。
JR四国の駅弁キャンペーン「第2回四国の駅弁ランキング&駅弁ラリー」の実施に合わせて、2011(平成23)年10月に発売。ただし購入には3日前または前日までの予約を要す。平たく大きく細長い、惣菜向けプラ製容器に、「四国の駅弁ランキング&ラリー」と明記された掛紙を巻く。中身は、白飯を握り、じゃこ天を貼り、海苔で留めた「じゃこ天むす」4個に、牛肉煮、玉子焼、かまぼこ、サトイモや高野豆腐などの煮物、ゴーヤ炒め、鶏唐揚、たくあん、オレンジとパイナップルなど。
キャンペーンの解説文によると「甘辛タレで味付けしたじゃこ天をのせたおむすびや地野菜の煮物などが詰まったお弁当」だという。じゃこ天は宇和島の名物であるが、この弁当ではそれほど入っておらず、御飯に貼って合わせて食べるようなものでもないと思う。その他の具には愛媛や宇和島あるいは調製元が感じられないので、品の良い惣菜であれど、旅を印象づける駅弁ではな感じ。具の種類が豊富なので、酒とセットに味わうのがよいと思う。2017年までの販売か。
かつて宇和島駅は、公式な駅弁販売駅であった。「斗牛弁当」という牛肉駅弁があり、その名前と存在が駅弁ファンや鉄道ファンに知られていたが、いつしか消えてしまった。
※2020年5月補訂:終売を追記JR四国の駅弁キャンペーン「四国の駅弁選手権2014」の開催に合わせて、2014(平成26)年11月に発売。同時に同キャンペーンの「2014新作駅弁部門」にエントリー。ただし購入には3日前または前日までの予約を要す。小鉢の柄を印刷した、明らかに仕出し弁当向けなプラ製容器にエビのちらし寿司を詰め、鶏唐揚、タコ揚、エビフライ、ウインナー、ベーコン巻、焼売、ゴーヤー炒め、枝豆、マカロニサラダなど多種のおかずで囲む。
キャンペーンの解説文によると「田舎ちらし寿司と宇和島郷土のおかずやおつまみが色々」だという。とはいえ、宇和島や愛媛や駅弁を感じられる食材や情報がなく、駅弁の名前さえどこにも記しておらず、旅の印象に残すのは難しい。この内容でこんな高価なのかとも思う。具の種類が豊富なので、酒とセットに味わうのが良いと思う。2017年までの販売か。
※2020年5月補訂:終売を追記入手状況から1993(平成5)年5月25日の調製と思われる、昔の宇和島駅弁の掛紙の一部。愛媛県や高知県の西部の観光地を記したイラストマップになっている。
入手状況から1993(平成5)年5月25日の調製と思われる、昔の宇和島駅弁の掛紙の一部。宇和島の名物である闘牛を題材にした斗牛弁当(とうぎゅうべんとう)は、宇和島駅や四国を代表する有名な駅弁であり、2002年頃になくなった後もこれを探す客がいたようだ。
1982(昭和57)年4月14日の調製と思われる、昔の宇和島駅弁の掛紙。掛紙は上記の1993年5月のものと同じ。安房鴨川駅の駅弁「あわびちらし」と同じ、赤く四角いプラ容器に白飯を詰め、タレをかけ、牛肉の漬け焼きを転がし、紅生姜と漬物を添える牛丼だった。当時の資料によると価格は600円。