岡山駅から快速列車「マリンライナー」で約1時間。高松市は四国の北部、香川県の中部で瀬戸内海に面する、人口約41万人の城下町かつ港町で県庁所在地。県庁の設置と国鉄宇高連絡船の就航で、行政都市として発展した。駅弁は明治時代の末期から宇高連絡船とともにあり、名前や経営を変えながら2014年5月に廃業、以後は岡山駅の駅弁屋の弁当がJR四国の子会社の売店で売られる。1897(明治30)年2月21日開業、香川県高松市浜ノ町。
秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2020(令和2)年秋の新商品か。高松駅の駅弁と紹介され、高松駅でも売られるが、本当の調製元は岡山駅の駅弁屋であり、岡山駅で買えたり、岡山駅弁の通信販売で注文できる。商品名を描いた赤いふたには、岡山とも高松とも書かずに「瀬戸内名物」と記す。
中身は茶飯を煮穴子1本と焼穴子3片で覆い、わさびと青菜と大根桜漬を混ぜて添えるもの。とはいえ2種のアナゴの味は同じで、調理法の差異を感じない。中身がシンプルなので、昭和時代からの高松駅の名物駅弁の流れを汲む「あなご飯」より作りやすそうだから、輸送販売や駅弁催事に向くだろうし、新幹線で食べる弁当としても向きそう。価格は2020年の発売時で1,000円、2023年時点で1,080円。
※2023年6月補訂:値上げを追記1960(昭和35)年10月の発売。さぬきうどんはともかく、アンパンマンを除き、高松駅で最もよく知られ、親しまれた駅弁。いりこだしベースの味付飯に、焼きアナゴと煮アナゴを載せて、筑前煮と大根漬と醤油豆を添える。瀬戸内海の各地で名物のアナゴ駅弁について、この高松駅のものはこぢんまりとして、柔らかい感じを受けると思う。醤油豆を添える点も特徴。価格は2010年時点で950円、2013年時点で980円、2015年時点で1,000円、2023年時点で1,100円。
※2023年6月補訂:値上げを追記2022(令和4)年8月1日に高松駅と岡山駅で発売。高松駅には下記のとおり、2000年代に「たこ飯」の駅弁があり、約10年ぶりの復活という感じ。中身はふたの写真のとおり、長方形の容器にたこめしを直に詰め、たこ煮とたこ唐揚を置き、青のりをまぶし、そら豆、きんぴらごぼう、紅生姜も置く。今までや明石や三原・福山のたこめし駅弁と違い、これは油っぽさで飯が進むB級グルメ。しかし2023年6月15日限りで終売。
上記および下記の「あなごめし」の、2014(平成26)年時点の姿。亀甲形の容器を変えず、ふたの絵柄を横使いの瀬戸大橋に変えている。いりこだしベースの味付飯に、焼きアナゴと煮アナゴを載せて、筑前煮と大根漬と醤油豆を添える中身は変わらないが、アナゴの分量が明らかに半減している。この駅弁を買った2か月後に、JR四国の子会社であった調製元の会社解散が発表された。
上記の駅弁「あなごめし」の、2003年時点の姿。高松駅の国鉄時代からの駅弁屋である高松駅弁が、2014年5月に駅弁から撤退した際、これを含めた主要な駅弁のレシピを、海の向こうの岡山駅の駅弁屋である三好野本店に引き継ぎ、JR四国の子会社が販売を引き継いだ。しかし、高松駅の名物駅弁である穴子飯の、特徴のひとつであったこの亀甲形の容器は引き継がれなかった。味はよく再現されていると思う。
※2015年11月補訂:新版の収蔵に伴い紹介文を全面改訂宇高航路の開設百周年を記念して、2010(平成22)年5月22日から翌2011年3月末まで販売した復刻駅弁。1973(昭和48)年頃に宇高連絡船の船内で販売していた弁当を復刻したという。
経木枠の長方形の容器に木目柄のボール紙でふたをして、赤と緑のストライプな掛紙で巻く。中身は醤油飯の上にアナゴの照焼とそのぶつ切りをぐちゃぐちゃに散らし、エビや青のりやグリーンピースなどで彩り、漬物を添えるもの。見栄えは別にしても、食べればなんとなく酸味が勝り、単に味だけを求めるのであれば通常版がよい。
掛紙上部のシルエットは屋島だろうか。日本書紀や源平合戦にも記される城址や古戦場であり、昭和の頃は高松市街や瀬戸内海を一望する観光名所として賑わったが、今は観光地として顧みられないただの山ないし丘となり、ケーブルカーや旅館などの廃墟が建ち並ぶ一種の名所になっている。
不漁による終売を余儀なくされた「讃岐たいらぎ弁当」の後継作として、2012(平成24)年8月1日に発売。現地では1,100円で出たそうだが、こうやって東京駅構内の駅弁売店で買うと1,200円であった。
楕円形の容器に接着された赤いトレーの半分強が御飯で、五目飯の上にナシフグの唐揚げ、塩焼き、煮付けが各1個と魚肉すり身揚げ。半分弱がおかずで、合鴨スモーク、ホタテ煮、枝豆しんじょうとトウモロコシしんじょう、玉子焼とかまぼこなど。飯に載る三葉虫のようなフグは固くパサパサで味がなく、駅弁向けの食材ではないような気がした。一方で他の駅弁にない具材を使用することから、こうやって東京へ出るには良い商品であるとも思う。
なお、調製元の会社解散を前に2014年5月11日に高松駅の駅弁売店を閉店したため、この駅弁も買えなくなったと思われる。
※2014年6月補訂:終売を追記調製元と香川県との共同開発により、2010(平成22)年4月10日に発売。楕円形の容器に透明なふたをして、中身のイメージ写真や駅弁の名前などを印刷したボール紙の箱に詰める。中身は讃岐米ヒノヒカリの炊込飯の上に、タイラギ貝柱の塩焼きと照焼きと煮付けとタイラギ貝ヒモのつくだ煮を載せ、玉子焼、醤油豆、讃岐菜漬を添えるもの。
タイラギの表情が豊かで、これはなかなかうまい。JR四国が実施する「四国の駅弁ランキング」では、2010年度の第1回と2011年度の第2回でいずれも第1位の評価を獲得した。しかしやはりこれも西日本の味であり、関東では受けが悪いのだろうか、京王の催事場ではライバルの三河安城駅弁「大えびふらい弁当」に、前半の新山口駅「ふく寿司」ともども完敗している印象だった。
この駅弁はタイラギの不漁により、2012年6月頃に販売を終えた。
※2012年5月補訂:終売予定を追記高松駅で地味な季節の駅弁が、2006(平成18)年4月から通年の販売へ昇格。柔らかい長方形の容器に透明なふたをして、駅弁の名前と中身の写真などを印刷したボール紙の枠にはめる。中身はタコの炊き込みご飯の上にタコ足やタコそぼろやイイダコを置き、醤油豆や奈良漬などを添える。全体的にしょうゆの風味が勝り、しかしタコは柔らかい感じで、そして内容も雰囲気もタコがたっぷりの駅弁。
タコの駅弁は昭和の頃まではとても珍しく、その元祖の三原駅では今でも「珍辨(珍弁)」を名乗るが、1990年代からごく当たり前に瀬戸内海沿岸の主要駅や駅弁催事で売られるようになったと思う。また、それ以前から全国へ広がったたこ焼きのタコも含め、弁当や惣菜のタコが大きく柔らかくなってきている気がする。
なお、調製元の会社解散を前に2014年5月11日に高松駅の駅弁売店を閉店したため、この駅弁も買えなくなったと思われる。
※2014年6月補訂:終売を追記2008(平成20)年1月19日の調製である、高松駅弁のパッケージ。駅弁マークの上に「四国・高松」と書いてあったり、調製元の会社名から、高松の駅弁であることが分かるが、それ以外はずいぶんと属地不祥なデザインだと思う。
2006(平成18)年7月の発売か。ボール紙製の小柄な専用紙箱の中に直接、御飯に五目寿司を使った穴子のばってらを6切れ置き、醤油豆とはじかみを添える。穴子はその身をどこに転用したのか、ほぼ皮だけの極薄品。アナゴ寿司を食べているぞと思うとがっかりするが、タレ御飯に身がサービスで付いてきたと思えば、食感も風味もけっこうあるぞと満足できる。分量もあるし、五目酢飯がおいしい。
なお、調製元の会社解散を前に2014年5月11日に高松駅の駅弁売店を閉店したため、この駅弁も買えなくなったと思われる。
※2014年6月補訂:終売を追記高松駅で伝統の駅弁。赤いプラ容器を、中身の写真を載せたちょっと古風なボール紙のパッケージに詰める。中身は酢飯の上にエビや穴子やママカリやタコや椎茸などを載せたちらしずし、ないし五目ずし。
瀬戸内海の向こう側で岡山駅の駅弁「桃太郎の祭ずし」とそっくりな駅弁で、しかし知名度は雲泥の差、そもそも高松駅構内では連絡船の時代から駅弁より讃岐うどんが有名である。それでもママカリと穴子が美味かったので、前者が単独の駅弁にならないかと思う。
なお、調製元の会社解散を前に2014年5月11日に高松駅の駅弁売店を閉店したため、この駅弁も買えなくなったと思われる。
※2014年6月補訂:終売を追記2003(平成15)年の末頃に発売か。小さな棒寿司1本分の細長い容器を、中身を美しい写真で表したボール紙の箱に詰める。中身は一口で食べられないほどの厚さがある、サワラの棒寿司を1本、6切れに分けて詰める。お箸で刻むか無理してまとめて口に含むと、トロリとコクのある食感と風味が楽しめる。
パッケージの記述によると、カンカン寿しとは讃岐東部の郷土料理。その割には市町村制作の観光案内でさえも紹介されない、地味な存在だと思う。押寿司を作る手順で、木枠を木づちで叩く音がカンカンと響くことから名付けられたとか。讃岐名物としてうどんに対抗するなど無理な話、しかし駅弁になって全国にその存在は発信された。ただ、2004年までにこの駅弁は終売となったものと思われる。