新宿駅から中央本線の特急列車で約2時間。北杜市(ほくとし)は山梨県の北西端を占める、人口約4万人の市。甲斐駒ヶ岳や八ヶ岳や金峰山や茅ヶ岳に囲まれた高原に、農地が広がり、山や緑に観光客が来る。駅弁は大正時代から売られ、平成時代に売店へ「小淵沢駅の名物は駅弁です」と掲示するほどの名物となった。1894(明治27)年12月21日開業、山梨県北杜市小淵沢町。
2013(平成25)年の夏までに発売か。長方形の容器に「農林48号」の白御飯を敷き、フジザクラポークの豚焼肉を貼り、きんぴらごぼう、じゃがいも、柴漬けを添える。この駅弁の名前「ビー・ビーキュー フォーティーエイト」は、バーベキュー風の焼肉で「BBQ」と、使用するコメの品種の「48」を組み合わせたものであるが、間違いなく2010年代に日本国内で社会現象になった少女アイドルグループ群の名称を意識したものだろう。京王百貨店駅弁大会への輸送駅弁としての出品を取り上げた週刊誌の記事も、そういう視点で見ていたと思う。価格は2013年の購入時で980円、2015年時点で1,050円。2015年までの販売か。
山梨県北杜市武川町でのみ栽培されているという、武川48(むかわよんぱち)こと農林48号とは、1949(昭和24)年に愛知県の農業試験場で生まれた、多収と食味を特徴とするイネの栽培品種。1958(昭和33)年をピークに昭和30年代には関東地方の主に栃木県で栽培されたが、病気に弱く見栄えが悪いことから、主要な品種にならないまま1968(昭和43)年までにほぼ消え、この武川で縁故米として栽培されていた。これが21世紀に入ってテレビやネットで幻の米やうまい米として祭り上げられるようになり、今では収穫期の直売所へ道路渋滞の列ができるとも記される。おにぎりにすると最高なのだそうで、つまり冷まして食べる駅弁にもきっと合う。この豚丼駅弁では、肉の味の強さもあり、そこまで素晴らしいとまでは感じなかったが。
※2017年8月補訂:終売を追記2013(平成25)年の夏までに発売か。富士山と商品名を目出度く描くボール紙のパッケージに収めた長方形の容器に、白御飯を詰め、山梨県産フジザクラポークの豚焼肉を貼り、サトイモとニンジンと赤カブ漬と玉子焼を添える。おそらく同時にデビューした上記の駅弁「BBQ48」とほぼ共通するつくり。メディアの注目度には大差が付いたが、味は変わらない。2014年に加熱機能付き容器を使う「ほっかほか富士桜豚めし」にリニューアルか。
※2017年8月補訂:終売を追記秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2007(平成19)年秋の新商品か。一緒に買った「甲州ワインビーフの牛めし」と同じ容器とおかずを使い、ボール紙の枠のデザインも背景の色と中身のイラストを変えただけの姉妹品。中身は白御飯の上に、催事場で生まれて現地でも人気になった上記の駅弁「甲州かつサンド」のトンカツを切らずに詰めて、キャベツの千切りを添えるもの。食事としてうまい弁当だが、はたして駅弁として現地に実態があるのかどうか。現存しない模様。
※2014年6月補訂:終売を追記秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2004(平成16)年秋の新商品か。円形の容器に透明なふたをかけて、手提げが付いた富士を描くボール紙のパッケージに詰める。中身は薄く薄く敷いた茶飯の上にフジザクラポークの豚焼肉数切れと豚肉団子2個と豚カツ1個を載せ、しめじや野沢菜炒めなどを添えるもの。豚肉の素材が良いのか、冷蔵状態でも柔らかな風味を楽しめるし、具だくさんなので満腹感も楽しめる。しかし豚の名前に由来するとはいえ、小淵沢でなぜ富士の駅弁なのだろうか。現存しない模様。
フジザクラポーク(漢字で「富士桜豚」とは表さない)は、1960年3月から山梨県が姉妹交流を続けるアメリカ・アイオワ州から寄贈されたランドレース種の白豚をベースに、山梨県畜産試験場が1982年から7世代8年かけて改良したブランド豚。地産地消の賜物かブランド力の限界か、生産農家が5軒しかなくほぼ全量が県内で消費されるそうな。代を重ねることによる肉質の低下懸念や、出産頭数が少なく足腰が弱い欠点もあり、これに代わる新品種の開発が2010年度を目標に開始されている。
※2014年6月補訂:終売を追記