新潟駅から特急列車で約50分。村上市は新潟県の北端で日本海に面した、人口約5万人の城下町。越後平野が尽きる三面川(みおもてがわ)に遡上するサケがかつて重要な産業であり、鮭料理の文化や世界初と紹介する自然や人工のふ化増殖で知られる。多くの列車がここを始発駅や終着駅とする鉄道の要衝でもあるが、1924年頃から売られた駅弁は1940年までに坂町駅へ移転してしまい、不思議なことに以後は駅弁が売られない。1914(大正3)年11月1日開業、新潟県村上市田端町。
第二次大戦前の調製と思われる、昔の村上駅弁の掛紙。絵柄や記載内容に村上を思わせるものはなく、大正時代から第二次大戦中まで時期を推定できるような情報も見あたらない。
村上駅では現在のJR羽越本線が全通した1924(大正13)年頃に駅弁が出現したらしいが、1936(昭和11)年8月に現在のJR米坂線が全通した後、または1938(昭和13)年3月に機関車の拠点が村上から坂町に移転した頃、あるいは1940(昭和15)年5月に、調製元が村上駅から坂町駅に移転し、以来駅弁のない駅。
越後平野の北端に位置し、古くからここを起終点とする列車あったり急行列車が止まり、1954(昭和29)年3月に市制を敷くような城下町があり、1972(昭和47)年8月の羽越本線電化で交流電化と直流電化の接点になり、平成時代には村上牛が知名度を上げて新潟駅の駅弁になったのに、村上駅に駅弁をという話がまったく聞かれない。
1929(昭和4)年6月13日の調製と思われる、昔の村上駅弁の掛紙。いったいこの木は何の木か、これは村上の風景だったのか。