東京駅から電車で約25分。横浜市は神奈川県の東部で東京湾に面した、人口約380万人の港町。東京の衛星都市として人口日本一の市であるほか、異国情緒とウォーターフロントで多くの観光客も集める。駅弁は、大正時代からの駅弁屋がコンコースやホーム上や駅周辺各地に駅弁売店を構え、「シウマイ弁当」は日本一売れる駅弁とされる。1915(大正4)年8月15日開業、神奈川県横浜市西区高島2丁目。
1950年頃の発売。直近では2011(平成23)年1月5日のリニューアル。長方形の容器に商品名と小さなタイを描いた掛紙を巻く姿は、最近の駅弁の中ではおしとやかな感じ。中身は魚の形をしたように見える仕切りの、真ん中に餅米混じりでキンメダイを使う鯛ご飯を鯛そぼろで覆い、周囲のすき間に根菜の煮物、カニつみれ煮、海藻とちりめんじゃこの酢の物、玉子焼とシウマイ1個、桜つぼ漬を収めたもの。価格は2011年時点で680円、2014年4月の消費税率改定で700円、同年8月の豚肉高騰による価格改定で710円、2018年9月から740円、2022年10月から770円。約70年の歴史を刻み、2022年11月限りで販売を終了した。
※2023年10月補訂:終売を追記2011(平成23)年2月13日に購入した、横浜駅弁の掛紙。上記の2021年のものと同じ。値段と食品表示を除き、10年以上変わらない。当時の掛紙には価格を印刷していた。
2010(平成22)年1月5日に、約7年ぶりのリニューアル。経木の枠にボール紙の底を付けた、小柄な長方形の折箱を使用、木目柄のボール紙のふたを被せて、駅弁の名前とタイを描いた掛紙を巻き、輪ゴムで留める。中身はキンメダイの御飯にマダイのそぼろをかけて奈良漬と添えたもの。
中身がこれだけというこの潔さは、あの伝統の静岡駅弁のよう。適度なうるおいとパラパラ感と、すり切りではなく上部空間を残した詰め方で、小田原や沼津と違い風味的にも物理的にもかなり食べやすい印象。登場1年後に上記の駅弁「鯛めし弁当」へリニューアル。
2002(平成14)年12月20日のリニューアル。魚形に見える容器の、頭の側に日の丸御飯風の鯛飯を詰め、尾の側にかまぼこ、玉子焼、タケノコ煮、漬物、シウマイ2個などのおかずを詰める姿は、御飯を減らしておかずを増やしたとはいえ、下記のリニューアル前と大きくは変わらない。包装は紙袋をやめてビニール袋に。その姿が、不用意に一見するとまるで生魚のよう見えて、とてもインパクトのあるものに替わった。2010年1月に上記の駅弁「鯛めし」へリニューアル。
1950年頃に発売した横浜駅弁の鯛飯を、2000年にリニューアル。紙袋を使う駅弁は珍しい。駅弁の名前と赤いタイを描いた紙袋に、魚形に見える容器を詰める。中身は日の丸御飯風の鯛飯に、漬物などの付合せとシウマイ2個。東海道本線の沿線各駅に明治時代から存在する鯛飯の駅弁の中で、この横浜駅のものは適度な水分を含むため、身や飯をこぼさずに食べやすいと思う。2002年12月に上記の駅弁「鯛めし」へリニューアル。
2012(平成24)年3月1日から5月6日まで販売された、期間限定の駅弁。崎陽軒でも東京工場の製品なのに、エリア境界線の多摩川を飛び越えて、横浜駅周辺の店舗でも販売した変わり者。商品名とタイを春らしい、あるいはタイらしい赤みでデザインした掛紙を巻く長方形の平たい容器に、マダイの若狭焼とサクラエビを載せたタイ御飯、がんもどきやコンニャクやニンジンなどの煮物、タケノコの木の芽味噌和え、タケノコの海老しんじょう、玉子焼、菜の花、桜餅、特製シウマイ1個など。鯛飯というより「おべんとう春」の高級版といえる春駅弁であり、東京工場の得意分野だと感じるタイで、その主戦場であるデパ地下に向くようなつくりにしたと見えた。
1967(昭和42)年9月27日の調製と思われる、昔の横浜駅弁の掛紙。鯛飯駅弁にタイを描くのは全国の駅弁に共通だが、街並みのシルエットを描くのは横浜駅弁に独特なもの。その背景画は、過去の横浜駅弁の掛紙に好んで描かれ、最近の横浜駅弁には描かれない、掃部山(かもんやま)の井伊直弼像。