東京駅から快速電車で約40分。千葉市は千葉県の西部で東京湾に面する、人口約98万人の城下町で県庁所在地。かつては行政や陸軍で、第二次大戦後は工業都市として発展した。駅弁は1928(昭和3)年から万葉軒が販売、かつてはコンコースや各ホーム上に駅弁売店を構え、安価な名物駅弁をいくつも擁した。1894(明治27)年7月20日開業、千葉県千葉市中央区新千葉1丁目。
2020(令和2)年10月26日に発売。古くは「御寿司」の名で売られた助六寿司の普通弁当で、平成時代に万葉御寿司と改称、2014年9月に「惜しまれつつ終売となった」(調製元フェイスブック)ものを再販した。2021(令和3)年10月のJR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2021」に、新作駅弁としてエントリー。
容器の大きさと黒い掛紙の絵柄は、終売前のものを踏襲した。中身はいなり寿司3個、太巻き寿司2個、かんぴょうの細巻寿司3個、甘酢生姜と醤油の袋。終売時は稲荷寿司4個と細巻寿司4個とガリで480円だったので、内容が変わり、値段が上がった。製造者の通信販売サイトに、同じ中身の寿司弁当「なでしこ」(540円)があり、これに掛紙を付けて供給されたものと思われる。価格は2020年の発売時や2022年の購入時で650円、2022年4月16日から700円、2023年1月から720円、6月16日から780円。
終売から復刻の間に、駅弁屋の万葉軒は2015(平成27)年2月に千葉県浦安市の介護サービス会社であるリエイに吸収合併されて屋号となり、2020(令和2)年8月に調製所を閉めたため、製造所が千葉市郊外の仕出し業者に、連絡先が所在地や契約者が不明のフリーダイヤルとなっている。
※2023年11月補訂:値上げを追記千葉駅に唯一残った駅弁売店で買えた、駅弁屋が作るおむすび。小ぶりな梅と昆布のおにぎり各1個と鶏唐揚、玉子焼、柴漬けをプラ容器に詰め、商品名を書き駅弁マークのない紙帯を締めていた。
駅弁の名前は「万葉寿司」とも。昔の普通弁当の寿司駅弁と同じ形と大きさを持つと思う、長方形の木目調ボール紙容器に、経木のふたをして、濃色の掛紙をかけて紙ひもでしばる。中身は稲荷寿司とかんぴょう細巻が4個ずつ。容器の形状や見栄えで古風な普通寿司駅弁の味は並。こういう昔の没個性駅弁が、21世紀の通勤駅に残ること自体に希少性がある。一見華やかな駅弁の名前は、万葉軒の御寿司だから万葉御寿司か。価格は2006年の購入時で460円、2007年12月から480円。2014年9月までの販売という。2020年の秋に650円で復刻販売。
※2020年12月補訂:復刻販売を追記女優で「雑穀アドバイザー」を名乗る奈美悦子氏の監修により、2010(平成22)年10月1日に発売。経木枠の小柄な容器に、商品名を墨字書きした掛紙を巻く。中身は朱色の紙のお品書きにたくさん書かれるとおり、シラスとゴマをかけた監修者ブレンドの雑穀米「健康で美人」と黒米と南高梅、キンメダイ浜焼き、肉団子、かぼちゃコロッケ、タコとウズラ卵の串、タケノコやサトイモなどの煮物、レンコンきんぴらなど。
おしながきに「雑穀は良く噛んでお召上がり下さい」とあるとおり、固めの粒をしっかり噛み締めるお弁当。2011年4月29日には同じコンセプトと商品名の名古屋駅弁が出ている。価格は2010年の発売時で1,000円、2014年4月の消費税率改定で1,030円、2015年時点で1,100円、2015年7月から1,200円。2019年までの販売か。
※2020年4月補訂:終売を追記2010(平成22)年11月28日に購入した、千葉駅弁の掛紙。上記の2016年のものと、値段以外はまったく同じ。当時の調製元の名称は、株式会社万葉軒であった。
秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2010(平成22)年秋の新商品。手のひらサイズの経木枠の容器を、商品名と佐原の建物を描いたボール紙の枠にはめる。中身は鶏ガラスープの炊込飯の上に粒の大きい千葉県佐原市のブランド鶏「水郷赤鶏」の鶏そぼろを敷き、同じくその鶏照焼を3切れ並べてタレをかけ、がんもどき、こんにゃく、サツマイモ茎佃煮、梨葛ゼリーを添えるもの。別添のオリジナルラー油をかけて食べることを推奨する、2010年に流行した「食べるラー油」の要素を取り入れた、濃厚濃縮な鶏そぼろ照焼丼。コンパクトなのに下げ底で分量も重量もある。このシーズンのみの販売だった模様。
※2015年8月補訂:終売を追記サッポロビールの企画により、2009(平成21)年7月18日から8月2日まで、東京、千葉、木更津の各駅で合計1,000個が販売された駅弁。標記の駅弁大会で早くも復刻販売が実施された。えびす様が描かれた空色の風呂敷で、正方形の二段重ねの木製容器を包む。中身は次のとおり。ヱビスビールの350ml缶も付いてきた。
確かに千葉な、確実にビールのおつまみを満載している。首都でのこの手のタイアップはNREと相場が決まっていたはずが、今回はどんな事情で万葉軒に流れていったのだろう。普段のB級駅弁ぶりを感じさせない品質が備わっていた。
このサッポロビールの企画駅弁は、第2弾として「ヱビス亭 仲冬乃膳」600個が、あべちうの調製で2009年12月5日から20日まで東京駅と一ノ関駅と盛岡駅で販売、第3弾として「ヱビス亭 下野 新緑乃膳」1,000個が、松廼家の調製で2010年5月22日から6月2日まで東京駅と宇都宮駅で販売、第4弾として「ヱビス亭 信州 秋雲乃膳」1,100個が、イイダヤ軒の調製で2010年10月9日から24日まで東京駅と松本駅で販売、第5弾として「ヱビス亭 津軽 冬晴乃膳(ふゆばれのぜん)」1,000個が、幸福の寿し本舗の調製で2010年12月4日から19日まで東京駅と新青森駅で販売された。
※2015年8月補訂:エビス亭の第2〜5弾の情報を追加千葉駅の女性向け駅弁だそうな。小さな正方形の容器に、紫式部や柿本人麻呂の和歌が記される同じ素材のふたをして、紀貫之の歌と小野小町のイラストを描いた掛紙をかけて、桃色のひもでしばる。松花堂タイプに区画された中身はそれぞれ、日の丸御飯、カボチャや高野豆腐などの煮物と鶏肉レンコン挟み揚げ、半身のおいなりさん2個、銀ムツ西京焼とイカ白焼と菜の花和えなど。
上のように書けば上品さや風流さが薫ってきそうだが、中身を見ても食べても安物風。こんなチープさが多くの千葉駅弁の特徴であり、世界有数の国際空港で売られていても何も変わらない。分量はやや少なめ。2014年頃までの販売か。
※2020年4月補訂:終売を追記千葉駅弁の万葉軒と、千葉県のFMラジオ局であるベイエフエムが共同開発し、2008(平成20)年4月25日に発売。台湾駅弁のような牛乳パック素材のフタ一体型紙箱に、駅弁の名前やタイアップの事実などを記した掛紙をかけて、まるごとラップで包む。購入時の中身は千葉県産・多古米の白御飯に「力玉」と呼ぶ肉団子、カツオなまりひしお煮、イワシのピーナッツ揚、豚肉味噌焼、かぼちゃペースト、ミニトマトチーズ焼、のり佃煮など。
とことん千葉県にこだわった駅弁の見栄えは、出演者ではなくスタッフ向けの楽屋弁当という印象。駅弁や地元という筋を通しながら異色の弁当を日替わり月替わりで投入している千葉駅弁らしい商品だが、観光要素が薄いうえになんとなく安物感を持つタイプの駅弁が、よくぞ日本一の駅弁大会に出てきたものだ。
まずは2008年5月末まで発売。9800個を売るヒット商品になったため、同年6月から第2弾、9月22日から第3弾、12月1日から第4弾、2009年1月21日から第5弾、4月1日から第6弾、4月29日から第7弾、6月11日から第8弾、7月1日から第9弾と、順調に版を重ねた。となると、写真の駅弁は第4弾か。2010年まで販売された模様。
※2015年8月補訂:終売を追記岡山で有名な駅弁の、千葉駅版という感じ。小さく浅い正方形の容器に透明なふたをして、掛紙をかけて割り箸とともに紙ひもでしばる。中身はかんぴょう混じりの酢飯の上に刻み海苔と錦糸卵を敷き、ウナギ、エビ、椎茸、イクラもどき、レンコン、人参、紅生姜など。
紹介例はとても少ないが、中身は意外に本格版。ミニ駅弁なのに御飯を持て余す感じはあるが、食事として小湊鉄道五井駅の房総ちらしといい勝負をしていると思う。価格は2006年の購入時で650円、2007年12月から670円。2009年前後には終売の模様。
※2017年8月補訂:終売を追記27×14×8センチもある重い巨大なパッケージ。その上部2/3を写真のように開くと中に紅白ひとつずつの陶製容器が入り、それぞれに千葉駅弁「菜の花弁当」風の玉子そぼろと鶏そぼろが載った御飯と、ハマグリと小海老佃煮などが載った御飯が入る。
中身は市販の100円カップアイスより小ぶりなプラスティックの容器に入っており、つまり食べる分量は100円カップアイスふたつぶんしかないから、空腹を満たすために買ってはいけない。美女撫子の花の種が入っており、土を別途用意してこの容器で栽培するのが正しい使い方。
2004年頃までの販売か。2015年時点で現存しない模様だが、この容器と見栄えの駅弁は、千葉駅や小田原駅の駅弁として、断続的に駅弁大会で見掛ける気がする。
※2015年8月補訂:現況を追記1998(平成10)年8月16日13時の調製と思われる、昔の千葉駅弁の掛紙。1998(平成10)年の、4月10日の駅弁の日に当時の千葉県内の駅弁業者5社が発売した駅弁で、掛紙は各社が共有した。佐倉駅と安房鴨川駅では早くに売り止め、木更津駅と成田駅では駅弁業者が撤退、この千葉駅のものが最後まで残った。
1930(昭和5)年2月24日の調製と思われる、昔の千葉駅弁の掛紙。収集者が掛紙の下部に年月日を書き入れた。東京湾でのノリ漁の光景でも描いたのだろうか。