東京駅から新幹線つばさ号で2時間強。米沢市は山形県の南端で内陸の盆地に広がる、人口約8万人の城下町。ブランド和牛の生産や、江戸時代の名君である上杉鷹山でよく知られる。駅弁は明治時代からの駅弁屋と戦後昭和の駅弁屋が激しく競い、無数の牛肉弁当があることになっている。1899(明治32)年5月15日開業、山形県米沢市駅前1丁目。
2023(令和5)年の7月までに、東京駅や仙台駅で発売か。調製元が米沢駅の駅弁屋なので、ここに収蔵するが、米沢駅で予約や注文をせずに買えることは、おそらくないだろう。スリーブで中身の美しい写真とともに記した駅弁の名前には、「郷土が誇る至福の牛肉」米沢牛すきやき、「独眼竜政宗の愛した」鮭はらこめしという接頭辞が付き、「伊達政宗とはらこめしと米沢牛の関係」と題した、しかしさすがに伊達政宗とそれらは関係ないように見えるコラムを記す。
中身は白飯を牛すき焼きで覆う区画と、茶飯をサケとイクラと錦糸卵で覆う区画が、ひとつずつ。いずれも米沢駅弁あるいは米沢駅の駅弁屋が作り東京や催事で売る弁当ですでにあるものであり、そんな米沢牛すきやきと鮭はらこめしの組合せ。この仙台駅の駅弁屋でない調製元が作る鮭はらこめしは、よく売れているのかどうか、この頃で牛肉の駅弁に負けないくらい推されていて、東京駅でも那須塩原駅でも前面に出てきている。
2023(令和5)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売。長方形のプラ容器に、白飯をローストビーフで覆いタレとネギを添えるローストビーフ丼と、白飯を牛肉煮で覆い煮玉子と煮物を添えるすき焼き重を詰めた。商品名と中身の写真を掲載した掛紙によると、そのいずれにも米沢牛を使うといい、薄めで霜降りの脂身ゆたかな肉が上品に思えた。1,980円という価格は、2010年代までであれば驚くべき高価格であったが、東京と催事の駅弁では見慣れつつある水準。
2023(令和5)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売。長方形のプラ容器の両区画に白飯を詰め、どちらもローストビーフで覆い、ネギとタレとガリを添える。商品名と中身の写真を掲載した掛紙によると米沢牛を使うといい、薄めで霜降りの脂身ゆたかな肉が上品に思えた。2,300円という価格は、2010年代までであれば驚くべき高価格であったが、駅弁催事で実演販売する牛肉駅弁では見慣れつつある水準。
2009(平成21)年頃から存在していたか。2018年秋のJR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2018」にエントリー。白御飯を牛肉煮で覆い、煮物と玉子焼ときんぴらごぼうと大根漬を添える姿は、米沢や全国各地の牛肉駅弁と変わらない姿。この牛肉に米沢牛を使うのだろうか。味も中身もいつもの松川弁当店や牛肉駅弁に感じたが、薄手の牛肉は少し上質だったかも。価格は2010年時点で1,200円、2012年時点で1,250円、2017年時点で1,300円、2019年時点で1,350円、2023年時点で1,400円。
※2023年8月補訂:値上げを追記2011(平成23)年秋の新作か。米沢駅弁に多数ある、飯と肉と付合せの組合せ。商品名と肉の写真で構成する黒い掛紙に包まれた発泡材の容器に、白飯を詰め、牛肉煮で覆い、味噌やダイコンを添える。見た目も内容も、「たまり醤油でじっくり煮込んだ米沢牛」の味も、今は普通の牛肉駅弁。価格は2012年時点で1,150円、2014年時点で1,200円、2017年時点で1,250円、2018年の購入時で1,300円、2020年時点で1,350円、2023年時点で1,380円。
※2023年8月補訂:値上げを追記2018(平成30)年1月6日に京王百貨店の駅弁大会での実演販売でデビュー。東京の京王百貨店、大阪の阪神百貨店、熊本の鶴屋百貨店での駅弁大会を3大駅弁大会と定義し、「人気駅弁大会3店舗合同企画新作『牛肉』駅弁対決」として、京王百貨店代表でこの米沢駅弁「米沢牛伝統の百年焼肉弁当」、阪神百貨店代表で神戸駅弁「酒乃蔵牛肉弁当」、鶴屋百貨店代表で出水駅弁「熊本あか牛と鹿児島黒毛和牛の牛肉めし」を、これらの駅弁大会で同じ1,500円の価格で実演販売した。
白御飯を米沢牛の牛焼肉と牛肉煮で覆い、ダイコンの酢の物と玉子焼を添える。新藤酒造店の酒粕と平山孫兵衛商店の味噌で米沢牛を漬け込み焼いたというが、味はまあいつもの東京駅の駅弁売店「駅弁屋 祭」の松川弁当店の牛肉駅弁と同じ。普通にうまい牛肉駅弁というか、これだけ宣伝で煽るのに物足りないと思うか。価格は2018年の発売時や購入時で1,500円、2022年時点で1,600円、2023年時点で1,650円。
※2023年5月補訂:値上げを追記2008(平成20)年7月に「米沢牛焼肉松川辨当」の名前で、埼玉県の大宮駅限定の駅弁として発売。ただし、その3か月前の東京駅での駅弁大会に、「米澤牛焼肉重松川辨當」の名前で出現した。大宮駅で駅弁を売る日本レストランエンタプライズ(NRE)の営業所長が、当時存在しなかった大宮駅限定の駅弁を売るために、東北各地の駅弁業者に声を掛け、6駅7社各1種の「みちのく日和」シリーズが生まれた。掛紙には、昔の駅弁立売を思わせる絵柄に加え、その6駅と大宮駅を路線図で示す、みちのく日和のロゴマークが見える。
中身は白御飯に牛そぼろと牛すき焼き肉を詰めて、ハンバーグに赤カブ酢漬けなどを添えるもの。高価格は牛肉の分量ではなく品質に反映されており、甘味と脂身がたっぷりの牛丼部分にも、身の詰まったハンバーグにも、常温で引き立つ風味を感じる。米沢駅弁の巨頭「牛肉どまん中」と競合しない個性を備えると思う。現地ではおそらく予約限定。価格は2008年の購入時で1,500円、2017年時点で1,600円、2023年時点で1,650円。
※2023年8月補訂:値上げを追記2023(令和5)年1月の京王百貨店の駅弁大会で販売。現物からは読み取れないが、「SDGs×駅弁」として「人気駅弁の端材おにぎりでフードロス削減」と広告し、3種類または5種類のおにぎりを輸送販売した。これはどの米沢駅弁のものか定かでないが、松川弁当店で多種の牛肉駅弁に入る牛肉とごぼうのものだろう。 白飯で牛肉煮とごぼうささがきを挟み、海苔で巻いた三角おにぎりを1個、商品紹介と食品表示のラベルを貼ったプラ製ケースに収めたもの。いつかどこかで売られるように、なるかどうか。
2022(令和4)年10月1日に米沢駅などで発売、翌2023年3月31日まで販売。日本鉄道構内営業中央会の鉄道開業150年記念復刻駅弁企画により、同月から期間限定で販売された31社34駅弁のひとつ。レトロなデザインと名乗る掛紙には、昭和時代の米沢駅舎やその周辺の風景写真に中身の写真、鉄道開業150年のロゴマークなどがみえる。
中身は白飯を米沢牛の牛肉煮と牛そぼろで覆い、煮物と玉子焼と漬物を添えたもの。公式サイトで「鉄道の歴史に想いを馳せ昭和にお作りしておりました駅弁の中身を現代風にアレンジいたしました。」と紹介するが、そんな構成はライバルで平成生まれの「牛肉どまん中」そっくりで、過去の駅弁の復刻ではないらしい。同じようにおいしい。松川弁当店の新作駅弁にしては、落ち着いた雰囲気を持つ。
2021(令和3)年7月1日に発売、8月31日までの販売。米沢駅では要予約といい、東京駅などの首都圏各駅と、仙台駅、山形駅、新庄駅、福島駅で売られるそうな。過去の山形駅弁「米沢牛焼肉弁当」とのつながりはないと思われる、山形新幹線開業30周年記念駅弁。掛紙の表面には歴代の山形新幹線電車3種類のイラストを描き、裏面にはおしながきと山形新幹線の歴史を記す。
長方形のプラ容器に、山形県産米はえぬきの白飯を詰め、米沢牛とタマネギの炒め物と、福島県中通りの郷土料理という「いかにんじん」なるニンジンの千切りの炒め物で覆い、玉子焼、おみづけ、さくらんぼを添える。ただの牛肉駅弁、ブランド牛で高価な駅弁に見えて、山形に少し福島を足して、記念の趣旨が表現されている。9月以降、第2弾、第3弾の記念駅弁の発売が予定されるという。
山形新幹線は、新幹線でない。例えば東北新幹線や北海道新幹線は法令の用語であり、山形新幹線や秋田新幹線は愛称である。この30年で本物の新幹線は速くなり、例えば大宮駅〜盛岡駅では3時間以上が2時間以下に進歩したが、東京駅〜山形駅の所要時間はほぼ変わらず、ならば電車の座席や設備が良くなったかといえばそうでもなく、その点では停滞の30年でもあった。ここでの本物の奥羽新幹線や、本物でない在来線の改良は、30年より前から議論され、今も議論のままである。
2021(令和3)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売。白飯を米沢牛の、黒く艶やかな牛肉煮と牛焼肉で覆い、玉子焼、いも煮風の煮物、切り干し大根を添付。ここでは名前も値段も華やかな、イベント向け商品の感。味はこってり。
2020(令和2)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売。白御飯を米沢牛の、ステーキというよりはローストビーフのようなものできれいに覆い尽くし、タレと玉子焼と切り干し大根を添える。「赤身」を名乗るだけあり、ブランド牛の宣伝文句に違い、脂が控えめですっきりしていた。とても高価だが、大都会での駅弁祭りにあってよい商品。しかし京王百貨店の駅弁大会以外では売られなかった模様。
※2022年4月補訂:終売を追記2021(令和3)年1月15日に購入した、米沢駅弁の掛紙。今回も京王百貨店の駅弁大会で購入。中身も値段も容器も、上記の前年と同じ。この年はスリーブでなく掛紙が使われた。
2019(平成31)年2月の鶴屋百貨店の駅弁大会で実演販売。米沢駅の駅弁屋がつくる、この催事での限定販売商品。会場では赤いスリーブに「鶴屋百貨店★限定販売」のシールをせっせと貼っていたため、この商品が他の場所で売られたことがあるのかもしれない。白飯を米沢牛の牛焼肉6枚で覆い、玉子焼と大根漬を添付。見た目は地味でも、肉の味はどんな米沢駅弁よりも上質感があったと思う。
2016(平成28)年の発売か。翌2017年4月の日本食糧新聞社「惣菜・べんとうグランプリ2017」駅弁・空弁部門で、最高賞の「金賞」4種のうちひとつに選ばれた。今回は東京駅で購入。現地では2日前までの要予約というので、事実上の東京駅弁であるかもしれない。
真っ黒な容器に、白飯を薄く敷き、牛肉のカットステーキ、ハンバーグ、サイコロステーキで覆い、ニンジン、インゲン、コーンを添える。牛肉が実にたっぷり入る、ほぼ肉の駅弁。これらがすべて米沢牛とのことで、確かに7割は霜降り焼肉だったが、残る3割があごを鍛えるガチガチの硬い肉だったのは、仕様なのかどうか。2019年までの販売、2021年までの掲載か。
※2022年4月補訂:終売を追記2016(平成28)年の3月までに発売か。同年10月のJR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2016」のエントリー時に、掛紙の絵柄を変えた模様。桶形の円形の容器に白御飯を詰め、牛肉煮、牛そぼろ、煮物と錦糸卵と漬物で覆う。米沢牛を名乗るものの、肉への味付けが濃いことと共通であることから、他の米沢の牛丼駅弁と何ら変わらない。つまり、米沢駅の他の牛肉弁当くらいうまい。見栄えは異なるが内容は「牛肉どまん中」に似ている感じ。1年間ほどの販売か。調製元の公式サイトには2021年まで予約販売商品として掲載された。
※2019年8月補訂:終売を追記2010(平成22)年より以前に発売か。もはや東京駅やスーパーやデパートなど、米沢駅でない場所で売られるようになった米沢の牛肉弁当だが、これは主に米沢駅で売られる牛肉駅弁と考えられる。四角い容器に白飯を詰め、牛肉煮と牛角煮で覆い、牛肉焼売2個とサトイモ煮などを添える。たしかに牛づくし。米沢でない場所で買える米沢駅弁と内容が被ってはいる。2017年までの販売か。
※2019年8月補訂:終売を追記黒塗りの小さな正方形の容器に、宣伝が熱いデザインの掛紙を巻く。中身は白御飯を牛肉煮と牛そぼろで半分ずつ覆い、ナムルとキムとと半熟玉子を添えるもの。具が牛肉ばかりで混ぜることもできないとなれば、これはビビンバではなく韓国風牛肉弁当ではないかと思うが、味に影響することはない。
調製元公式サイトと販売箇所では米沢の駅弁を名乗り、実際は東京駅でしか販売されていない点では、また新たな疑義駅弁が出てきた感じ。しかし商品そのものに駅名はなく、市販の時刻表でも東京駅弁の扱いであり、東京駅では普通に販売されているのだから、駅弁であることに間違いはなさそう。2012年までの販売か。
※2016年11月補訂:終売を追記2008(平成20)年10月に、東京駅で発売か。上記の駅弁「米澤牛焼肉重松川辨當」の廉価版で、容器を小さくして分量を減らして価格を下げて、しかし内容や風味は同じ。大宮駅の駅弁売店「駅弁屋旨囲門」のカリスマ店長の意向か助言かを受けて、駅弁の名前に「いやんばい」を加えている。いい塩梅(あんばい)、いい感じ、ちょうど良い、という意味の山形弁だそうな。1,500円版と併売されているか、現地で売られているかは分からないが、東京駅や上野駅の駅弁屋旨囲門では定番の人気駅弁に育った。これで松川弁当店もようやく、新杵屋の「牛肉どまん中」を追撃できる商品を得た感じ。2010年頃までの販売か。
※2021年3月補訂:発売年を追記同じ名前の駅弁を2008(平成20)年にリニューアル。専用紙箱の容器をそのまま流用し、旧価格1,500円を新価格のシールで隠したうえで、上面に「米澤牛」のシールを貼っている。黒いトレーに収まる中身は、ひとつが白御飯だけ、もうひとつがレタスを敷いた牛ステーキにニンジンとポテトフライとシメジとミニトマト、タケノコやサトイモやゴボウなどの煮物に玉子焼、ふきみそ、菊酢漬など。
見た目は千円の焼き肉弁当。なんでこんなに高いのかと文句を言いながら食べ始めて、牛肉に手を付ければ、これはうまいぞと手のひらを返すはず。素材の確かな柔らか牛肉は、タレをまとわず塩とコショウだけで味付けられ、常温での風味食感が輝いている。特段の案内はないが、おそらく要予約商品だろう。2015年までに終売か。
※2019年8月補訂:終売を追記