東京駅から新幹線はやぶさ号で約100分。仙台市は宮城県の中央に位置する、人口約110万人の城下町で県庁所在地。豊かな植生で杜の都(もりのみやこ)と呼ばれる、東北地方の首都として君臨する大都会。駅弁は明治時代から売られ、戦後昭和から平成時代に3社が競う日本一の激戦区であったが、JR東日本の子会社が駅弁売店を独占した2010年代からは活気がない。1887(明治20)年12月15日開業、宮城県仙台市青葉区中央1丁目。
2024(令和6)年1月の京王百貨店の駅弁大会で輸送販売。この催事で、掛紙を復刻した駅弁「昭和レトロな掛け紙弁当」のひとつとして売られた。商品名は「伊達(の)かきめし(復刻)」とも。かつての仙台駅弁「伊達かきめし」を復刻したものだといい、掛紙は1960年代のもののコピーだろうか。昔ながらの駅弁らしく平たい長方形の容器に、茶飯を詰め、かき煮を載せ、にんじんと椎茸煮と赤かぶ酢漬のみを添える。今となってはおいしそうには見えない姿も、昔懐かしいものか。カキの名産地を近隣に持ちながら、昭和時代も現在もカキ駅弁の存在感の薄い仙台駅で、この駅弁がなぜ復刻の対象にされたのか興味深い。
2019(令和元)年7月10日に東京、新宿、大宮、上野の各駅で発売、29日に仙台駅でも発売。仙台駅で有名な駅弁「網焼き牛たん弁当」と同じ、円形の加熱機能付き容器に、カキの煮汁を使う御飯を詰め、かき煮を並べ、シイタケ、ニンジン、万来漬を添える。中身のあっさり整った見栄えと違い、風味は濃厚。うまさと手軽さを追求して宮城県石巻の牡蠣を加工した東京都の築地森商の冷凍食品「伊達の釜ゆでかき」を使用する。価格は2019年の発売時や購入時で1,200円、2023年時点で1,300円。
※2023年8月補訂:値上げを追記1968(昭和43)年に青森駅で発売。調製元の本社は仙台であり、仙台でも同じものが調製される。丸くて赤い釜風のプラスティック容器の中に、茶めしの上にかわいい陸奥湾産のホタテが10個近く整然と並び、錦糸卵などの具もまた整然と敷かれている、釜めしとしては見た目の美しい駅弁。分量もほどほどで人気駅弁のひとつだった。
調製元が青森支店を閉めたことで、青森では2019年9月限りで終売、新聞記事などで惜しまれた。仙台のものはそのまま生き残り、2018年頃からスリーブの文字を「伯養軒特製」「青森名物」に変え、同じ容器と中身で売り続け、仙台駅の駅弁になった。価格は2006年の購入時で900円、2010年代で1,000円、2018年時点で1,200円、2021年時点で1,350円、2023年時点で1,300円。
※2023年8月補訂:値上げなどを追記2002(平成14)年7月7日に購入した、仙台駅弁の掛紙。掛紙そのものは当時の伯養軒の、仙台、盛岡、青森の各地区で共有したものと思われる。絵柄は上記の2006年のものと変わらないが、この時は掛紙に駅弁マークが付いていた。伯養軒が清算されウェルネス伯養軒となり、日本鉄道構内営業中央会から抜けたため、駅弁マークが使えなくなった。
2018(平成30)年の夏に発売か。下記の駅弁「かき福大粒三陸かきめし」の、カキ御飯をおむすびにしたものだろう。白と黒の型押しカキ飯と漬物を、竹皮柄の紙箱に収めていた。2022年までの販売か。
※2023年8月補訂:終売を追記2017(平成29)年7月21日に発売。関連会社に宮城県石巻市の食品加工会社を持つ、東京都渋谷のコンサルタント会社が開発し、仙台駅の駅弁売店で売り始めたり、駅構内のライブキッチンで実演販売し始めたという、仙台駅弁として特異な生まれ方をしている。
東京都港区のデザイン会社による耐水紙製パッケージでは、商品名とダルマをオレンジ色にアレンジ。ふたの裏側には「かき食う門には福来たる。」というポエムを記す。この箱に直接詰められた中身は、カキのだし汁で炊いた宮城県産ササニシキの御飯に、カキの炙り蒸しと生姜煮を散らし、牡蠣味噌と蔵王菜だいこん漬を添えるもの。
一日で100個以上が売れたという。デパ地下弁当と同じように仙台駅の売店で調製しているからか、風味で作り置きの駅弁より活きの良い感じがした。体感的な販売光景では、何らかの事情か都合により夕方までに既存の駅弁を売り切った後、必要に応じてその場で作って販売できる、便利な商品のように見えた。2022年までの販売か。
※2023年8月補訂:終売を追記2015(平成27)年3月頃の発売か。楕円形の容器に宮城米ひとめぼれの味付飯を詰め、いずれも宮城県産というカキ煮とアナゴ煮で覆い、はじかみ、厚焼玉子、紅大根を添える、シンプルな駅弁。カキの粒もアナゴの刻み方もやや大きめで、常温で飯に合う適度な柔らかさと香りと味付けを持っていたと思う。パッケージの記述も含め、余計なものがないので、ストレートに味と腹を楽しめる駅弁。2019年までの販売か。
※2023年8月補訂:終売を追記2011(平成23)年6月3日から、仙台駅で6000個限定で販売。アカザラガイ型というかホタテ型の赤い発泡材製容器を、貝殻の柄を持つ同じ形のボール紙の枠にはめる。中身はアカザラガイを炊き込んだ五目飯にアカザラガイのしぐれ煮を載せ、ニンジンやししとうや錦糸卵などで彩り、昆布佃煮とセリ調味漬を添えるもの。味こそホタテのB〜C級品という印象だが、これも面白い味。赤い容器の形状や中身の見栄えも良い感じ。
この駅弁は、調製元の日本レストランエンタプライズ(NRE)が、宮城県気仙沼で未利用資源となっていた赤皿貝を使う駅弁を開発し、2011年4月から売り出す予定であった。しかし3月の東日本大震災の発生によりそれどころではなくなったうえ、津波による気仙沼の漁業の壊滅により材料の手配がままならず、震災前に倉庫に保管されていたものを使い販売にこぎ着けたものだという。だから材料確保分だけの数量限定販売を事前にアナウンス。これが震災復興と結び付けられて、テレビやネットで紹介された。
2010(平成22)年秋の新作として、2010年10月9日から11日まで東京駅で開催された「第12回東日本縦断駅弁大会(秋)」で発売か。今の仙台駅では珍しく陶製の釜型容器を使用、なんとなく松島を描いた正方形の掛紙で包む。中身はホタテ御飯の上にホタテ煮、銀鮭煮、蒸しウニ、イクラ醤油漬、つぶ貝、「松島」の焼き印を捺した玉子焼、ニンジン、はじかみを載せるもの。風味はいつもの、そしてさすがの仙台駅弁。1年間ほどの販売か。
※2017年8月補訂:終売を追記2009(平成21)年9月1日に発売。なかなか小柄な正方形の容器に透明なふたをして、割りばしを置いてから商品名と中身の写真を印刷したボール紙の枠にはめて、輪ゴムでしばる。中身は茶飯の上にホタテのフライを1個、バター焼きを2個、照り焼きを2個置いて、トビッコと山くらげを撒いて赤かぶ漬を添えるもの。内容そのものに新鮮味はないが、ホタテの風味がよくある醤油漬でなく上記の通り各種があるため、新しい都会的な印象が香る。価格も良好。2010年に「まるごと帆立づくし」(750円)へリニューアル、2014年2月に800円へ値上げ、2017年までの販売か。
※2017年8月補訂:終売を追記2004(平成16)年10月に発売。正八角形の容器に柄物のふたをかけて、駅弁の名前など文字をたくさん書いたボール紙の枠にはめる。中身は宮城産米ひとめぼれをホッキのゆで汁で炊いた茶飯にホッキをパラパラと載せて、しめじとホタテと笹蒲鉾を添える。
ホッキは万人受けしない食材だと当館で何度も書いた気がするが、この駅弁のホッキは風味も食感もとても柔らかいので、入門編として食わず嫌いな方にもおすすめできる感じ。名物にはならないだろうが定番としてどこまで定着できるか。JTB時刻表2005年1月号でも取り上げられた。この駅弁は、4年間くらい販売された模様。
※2016年9月補訂:終売を追記秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2004(平成16)年秋の新商品か。円形の加熱機能付き容器を、ウニとホタテを描いたボール紙の枠にはめる。中身は宮城産ひとめぼれを使ったホタテひじき御飯の上に、蒸しウニと煮ホタテと福神漬をパラパラと載せるもの。暖かいウニというのも変な感じで、価格も少々高いが、全体の風味として駅弁の名前どおりの暖かさを感じる。このシーズンのみの販売か。
※2017年8月補訂:終売を追記2004(平成16)年10月5日に発売。おそらく下記の駅弁「磯かきめし」をリニューアルしたものと思われる。前年の夏に販売された駅弁「とことん宮城弁当」で使った米粒型の容器を、松島五大堂を簡単に描いたボール紙の枠にはめる。中身はカキのエキスで炊いた宮城県産ひとめぼれの御飯に、青のりと錦糸卵と福神漬、そして風味も食感も豊かなカキを8個ほど載せて、シメジや笹蒲鉾を添える。
カキの駅弁としても産地としても宮城より有名な広島に負けていない。200円の値上げを補い余る外観と中身の充実が図られたと思うが、福神漬の欠点だけはそのままに。2010年頃までの販売か。
※2016年9月補訂:終売を追記発泡材枠にトレーを接着した容器をボール紙の枠にはめる、JR東日本エリアでよく見掛けるゴミ減量型容器。御飯の上に厚みのある、程良い甘辛さの煮帆立を5個載せている。この内容の駅弁が700円とはさすが仙台で、モリモリ食べられるファストフード系駅弁。2007年頃までの販売か。
※2017年8月補訂:終売を追記正方形のボール紙製パッケージに正八角形の容器を入れる。中身はひじき御飯の上にハマグリやタケノコに錦糸卵や刻み海苔など、そしてカキが無造作に載せられている。御飯が上から見えているので写真映りが悪いが、福神漬けの臭いがカキ他の食材に染み付いてなければ、かなり良い味が出ていたのではと思う。現存しない模様。
※2016年9月補訂:終売を追記