仙台駅から新幹線と大船渡線を乗り継いで2時間強。気仙沼市は宮城県の最北東端で太平洋に面する、人口約6万人の港町。三陸沖のサンマ・カツオ・マグロなどが上がりフカヒレが有名な、全国有数の漁港を抱える。1937(昭和12)年から駅で牛乳を立ち売りした博愛舎が第二次大戦後に始めた駅弁の販売は1993年5月で終了したが、2007年4月に地元の協議会が開発した弁当が駅売店に出現し、これが駅弁と紹介される。1929(昭和4)年7月31日開業、宮城県気仙沼市吉町。
気仙沼コンベンションビューロー協議会御弁当サプライヤー委員会が開発し、2007(平成19)年10月19日に発売、予約販売や数度のイベント出品を経て、2008年7月22日の当年度「リアス・シーライナー号」運転開始日に合わせて気仙沼駅のキオスクでの販売が始まったお弁当。プラ製トレーを発泡材枠に接着した正方形の惣菜容器に、透明な上げぶたをして注意書きのシールを貼り、龍とカジキと気仙沼大島龍舞崎を描いた掛紙を巻いて、輪ゴムで留める。
中身は白御飯の上に刻み海苔を錦糸卵を敷いて、メカジキの背びれの付け根「ハモニカ」の煮付けを貼り付けるもの。掛紙にこっそり記載された「上質な脂(トロ)と旨みが凝縮され、コラーゲン豊富な一品」のPRを読まなくても、甘辛な味付けに魚の旨みがギュッと詰まり、日本一の煮魚丼駅弁と呼びたいうまさ。小柄で安価な点も満足感を上げる。今回食べたものも、ふたの注意書きと違い、魚の身に注意すべき骨はなかった。
価格は2007年の発売時で580円。2011年3月の東日本大震災で長らく販売を休止していたが、2018年2月17日に780円で販売を再開。以後は毎月第3土曜日のみ、10時30分から気仙沼駅のコンビニ「ニューデイズ気仙沼店」で販売すると、店頭に掲示される。
※2023年10月補訂:写真を更新2009(平成21)年9月21日に購入した、気仙沼駅弁の掛紙。上記の2023年のものと同じ。中身も味も同じ。価格と販売日と、製造所と販売者は変わったが、駅弁は震災を経ても生き残った。
2011(平成23)年の5月頃に気仙沼駅で発売。スーパーの惣菜弁当で使われそうなプラ製の容器に、商品名と宣伝文を書いたシールを貼る。中身は日の丸ご飯に串カツ、コロッケ、ししゃも、切り干し大根、こんにゃく、ごぼう、千切りキャベツ、ポテトサラダなど。単に見たり食べれば、コンビニ弁当か冷凍食品を多用した安価な惣菜に見える。しかし2011年3月11日にここで何が起きたのかを忘れてはならない。
町外れの気仙沼駅に大きな被害はなく、4月中には大船渡線がこの駅までの運転を再開し、駅の売店や駅前の観光案内所の営業も再開している。しかし「纜弁当」その他下記の駅弁群は販売休止中であり、委員会メンバーのいくつかは津波で流されたそうだ。この中身に地元の材料や料理は入っていないと思うが、それでも地元オリジナルの弁当を作り駅へ卸し販売していることは、駅弁と震災の歴史にひとつ刻まれてよい。この価格にもかかわらず、味は素でおいしいものだった。
そんなコンビニ弁当のシール記載内容を以下に記す。
地元復興まで、負けない折れないくじけない!この駅弁は2015年時点で販売休止中とされ、以後に再開はなかった模様。実際に売られたのは、約1年間か。
※2021年3月補訂:終売を追記気仙沼コンベンションビューロー協議会御弁当サプライヤー委員会が開発し、2004(平成16)年10月27日?の「第21回気仙沼・本吉地方産業まつり」に登場、地元の仕出し弁当として年間一万個の販売実績を積み、2007年4月14日から駅弁用に仕立て直して気仙沼駅のキオスクでの販売が始まったお弁当。気仙沼駅での駅弁の販売は14年ぶりという。陶製食器の柄を付けたプラ製トレーを黒いボール紙箱に詰める仕出し容器を使用、これを透明なラップでシールしたうえで掛紙を巻いて、輪ゴムで留める。
中身は白御飯の周囲を「纜(ともづな)巻き」まるマグロの昆布巻き、ふかひれコロッケ、サンマ艶煮、ふか(サメ)肉炒め、ダイコンやニンジンなどの煮物、煮ホタテ、鶏バジル焼、海藻の酢の物、笹団子とブドウなど。漁港の味と、漁港でない味を詰めた、幕の内タイプだけれども特徴と個性しか持たない満足感の塊。
掛紙は気仙沼駅開業80周年を記念して、2009年7月18日から8種類をランダムで使うのだそうな。訪問時は「風っこ大船渡線号」と「黄金海道ふかひれ号」と、この国鉄キハ58系ディーゼルカーな「大船渡線70周年号」が存在。掛紙の絵柄を指定した予約販売はできないと案内されている。
この駅弁は2011年3月の東日本大震災により、2015年時点で販売休止中。以後も復活や入手の話を聞かない。
※2021年3月補訂:終売を追記気仙沼コンベンションビューロー協議会御弁当サプライヤー委員会が開発し、2007(平成19)年10月19日に発売、予約販売や数度のイベント出品を経て、2008年7月22日の当年度「リアス・シーライナー号」運転開始日に合わせて気仙沼駅のキオスクでの販売が始まったお弁当。陶製食器の柄を付けたプラ製トレーを黒いボール紙箱に詰める仕出し容器を使用、これを透明なラップでシールしたうえで龍とカジキと気仙沼大島龍舞崎を描いた掛紙を巻いて、輪ゴムで留める。
中身はカニと椎茸が載るウニ御飯に、メカジキのハモニカ煮、フカヒレ焼売、サメの唐揚、ホタテ、ダイコンやニンジンなどの煮物、ハマナス団子とぶどう2個。ハモニカなる背びれの付け根の骨には非常に難儀するものの、すべての味があまく、うまい。駅では土休日限定で、平日は5個以上の予約販売。
この駅弁は2011年3月の東日本大震災により、2015年時点で販売休止中。2012年4月に復活したという報道がされたようだが、続報や入手の話を聞かない。
※2021年3月補訂:終売を追記赤いプラ製の釜飯駅弁向け容器に、昭和時代中期から変わらないらしい絵柄の掛紙をかけて、セロハンテープで止める。中身はあわびの煮汁で炊いたと思われる御飯に、アワビと帆立とゼンマイなどを載せるもの。この価格帯のアワビ駅弁としてはアワビの量が多いし、帆立も柔らかく、磯の香りが御飯にしっかり効いている。2010年代以降に入手したという話を聞かない。
1993年5月以降の気仙沼駅に、駅弁はない。この弁当はデパートの駅弁大会で実演販売されたお弁当であるが、気仙沼の駅弁が現役であった頃から、百貨店の催事にはよく出ていたらしい。現地では団体向けに数十個単位での注文を受けているようなので、個人ではとても買えない。宮城県内ではかつて、白石、岩沼、小牛田、古川、川渡、鳴子、作並の各駅にも駅弁が存在したが、今では仙台駅のみになってしまった。
※2021年3月補訂:終売を追記カニ飯の駅弁に使われそうな赤いプラ容器に、昭和時代の中期から変わらないらしい絵柄の掛紙をかけて、紙ひもでしばる。中身はあわびの煮汁で炊いたと思われる御飯に、アワビをぺたぺたと貼り付けたシンプルな内容。磯の香りが御飯にしっかり効いているのは、上で紹介した「三陸の貝弁当」と同じ釜の飯なので当然か。
気仙沼駅の駅弁は、「あわび飯」が有名であった。実演販売品と当時の現地販売品では姿や掛紙が異なったようだが、他の駅のアワビ駅弁のいずれも凌ぐ豊かな味と香りで、当時を偲ぶことはできるだろう。ただ、かなり頻繁に東京や横浜の百貨店の駅弁大会に通っているにもかかわらず、2年間で一度しか出会えていないので、入手はかなり困難に見える。2010年代以降に入手したという話を聞かない。
※2021年3月補訂:終売を追記1979(昭和54)年10月7日の調製と思われる、昔の気仙沼駅弁の掛紙。現在のものとデザインはまったく同じ、百貨店の駅弁催事で販売されているものという条件も同一で、調製印は東京都内の百貨店、調製元の所在地に東京都台東区上野のものが併記されている。