東京駅から東北新幹線やまびこ号で約2時間半。一関市(駅名は「一ノ関」で市名は「一関」)は、岩手県の南端に位置し、北上川沿いの北上盆地を中心街とする、人口約11万人の城下町。駅弁は明治時代からの駅弁屋のものが売られ、新幹線改札付近と西口駅舎に駅弁売店がある。1890(明治23)年4月16日開業、岩手県一関市深町。
2022(令和4)年11月に盛岡駅と一ノ関駅で発売。「じゃじゃ麺」を名乗る史上初の駅弁か。長方形の加熱機能付き容器を収めるスリーブには、宿場町と岩木山を描いたのだろうか。中身はふたつに分かれ、うどんに肉みそなどを載せた「盛岡じゃじゃ麺」と、白飯を牛肉煮込みなどで覆う「牛めし」。麺の駅弁は、特に蕎麦など細麺の冷麺でない加熱機能付き容器を使う麺の駅弁は、おいしそうな見栄えに違い、今まで各地で何度も地雷を踏んできたと思うが、これはシンプルでうまくて無難。一ノ関駅の駅弁屋の弁当なのに、前沢牛も平泉も名乗らないので、盛岡駅で頑張るつもりのようにみえる。引き続き地元の駅弁がない盛岡駅で、この盛岡名物と認識できる内容が、定着できるかどうか。
じゃじゃ麺は、「わんこそば」「冷麺」とともに岩手県盛岡名物3大麺と紹介される、盛岡の郷土料理。小麦の平麺あるいはうどんに、肉味噌などを載せたもの。中国の家庭料理「ジャージャー麺」が第二次大戦時の満州からの帰国者により、盛岡市内にのみもたらされたとされる。この内容ならば盛岡に限ることもなかろう、しかし盛岡以外で見掛けることは稀なことは、「わんこそば」「冷麺」にも共通すると思う。
2023(令和5)年12月1日に購入した、一ノ関駅弁のスリーブ。2023(令和5)年11月10日に、一ノ関、盛岡、仙台、東京、新宿、大宮の各駅で発売。日本鉄道構内営業中央会の「駅弁マーク」制定35周年を記念し、会員のうち29社が主に11月10日から期間限定で販売した31種類の記念駅弁のうち、一ノ関駅の駅弁屋のもの。既存の駅弁「盛岡じゃじゃ麺と牛めし弁当」のスリーブに、普段の倍の大きさの駅弁マークを貼り付けた。容器や中身や味や価格は、通常版と同じ。12月31日まで販売。
2000年代の一ノ関駅弁の主力商品「前沢牛めし」の、加熱機能付き容器版。2014(平成26)年までに「岩手牛めし」へ改称した。商品名を赤く描いた黄色いスリーブに収めた、長方形の加熱機能付き容器に白飯を詰め、岩手黒毛和牛と前沢牛のブレンドとする牛肉煮を、糸こんにゃくとタマネギに混ぜて覆い、ししとうと漬物を添える。中身は一般的でシンプルな牛丼。価格は2010年頃から一貫して1,300円。
上記の駅弁「岩手牛めしアツアツ」の、2004(平成16)年時点での姿。駅弁の名前が違う、容器にスリーブでなく掛紙を巻いてひもでしばる差異があるが、掛紙の絵柄と、加熱機能付き容器と、中身は変わらない。当時は一ノ関駅に「前沢牛めし」という駅弁が3種類もあったほか、同じ名前で伯養軒と日本レストランエンタプライズが盛岡駅弁を出していた。
価格は1,050円の印刷をシールで隠して50円上げていた。BSEいわゆる狂牛病騒動による2003年12月からの米国産牛輸入停止と、牛肉偽装表示問題によるブランド牛産地の管理強化により国産牛の価格は高騰、牛肉駅弁にも値上げや名称変更などの影響が出た。
※2022年12月補訂:新版の収蔵で解説文を整理2020(令和2)年1月の阪神百貨店の駅弁大会で実演販売。商品名のとおり、白御飯を金格ハンバーグと牛あぶり焼きで覆い、エリンギとシメジと野沢菜と紅生姜と昆布でも覆い、漬物を添える。見た目で肉が控えめな牛肉弁当で、おいしくて駅弁に稀なハンバーグ弁当。阪神百貨店の駅弁大会で人気投票の対象となる新作駅弁だとすると、おそらく催事屋の商品で、前年の経験から再び出会えないかと思った。2021年の夏に駅で売ったようで、10月のJR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2021」にエントリー。価格は2020年の購入時で1,280円、2023年時点で1,380円。
金格ハンバーグとは、岩手県と東京都で食品業と飲食業を営む門崎のブランド「格之進」の商品で、通販でも売られる国産牛と白金豚の合挽ハンバーグ。
※2023年7月補訂:値上げを追記JR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2016」へのエントリーに向けて、2016(平成28)年9月までに発売か。2008年7月に大宮駅への輸送駅弁として誕生した「あぶり焼き牛肉弁当」のリニューアル。楕円形の容器に岩手米ひとめぼれの白御飯を詰め、岩手県産黒毛和牛を特製のタレにまぶしたあぶり焼きで覆い、煮物とガリを添える。牛肉を20%増量したというが、このような姿と内容の駅弁は各地にある。肉が柔らかめで、味付けが濃いなと思うくらいの、普通の牛肉駅弁。価格は2016年の購入時で1,100円、2022年時点で1,200円。
※2022年4月補訂:値上げを追記2006(平成18)年に発売か。東北の駅弁では特によく見かけると思う、プラ製トレーを接着した容器に透明なふたをかけて輪ゴムでしばり、牛と牛舎の風景を描いた掛紙を巻いてセロテープで留める。中身は御飯の上に牛肉と錦糸卵とごぼうと人参が載り、わさび菜などの付合せが付く、個性なき牛肉駅弁。肉はうまいが見栄えや雰囲気に千円の価値はなし。「前沢牛めし」があれば、そちらが良い。一年間ほどの販売か。
※2016年11月補訂:終売を追記2008(平成20)年10月12・13日の両日に東京駅構内で開催された「東日本縦断駅弁大会−秋−」で販売されたお弁当で、全8種が誕生した「メガ駅弁」のひとつ。発泡材製の楕円形の容器に白御飯を詰め、焼肉以下、すき焼肉以上のパーツサイズを持った、やや固めの岩手県産牛肉で覆い、シイタケ・ニンジン・コンニャクの煮物類と甘酢生姜を添える。
分量が通常版の1.5倍というが、一ノ関駅弁でこういう商品を思い当たらない。その該当品はどうも、調製元は一ノ関の駅弁屋でも、販売は埼玉県の大宮駅というものらしい。この催事駅弁も東京駅での販売。ウソはないが変な感じはする。
長方形の容器に御飯を敷き、前沢牛のローストビーフを5切れほどぺたぺた並べ、粘り気のあるタレをかけた後にグリーンピースと付け合わせを添えて、ふたをして黄色い掛紙をかける、とてもシンプルな駅弁。下記のとおり名前と見た目を何度か変え、加熱機能付き容器版を残して、2008年頃までの販売か。
※2021年3月補訂:終売を追記上記の駅弁「前沢牛めし」の、2003(平成15)年時点での姿。金色で強度のあるの容器を黄色い掛紙とセロテープで締める。中身のスタイルは前年のものと同じだが、前沢牛のローストビーフが5切れから3切れに減少した分、直径10センチはありそうな巨大で、かつ血がしたたるレアなものにグレードアップ。価格も150円ほど値上げされているとはいえ中身のグレードは格段に向上しており、宣伝次第ではかなり話題を集めそうな駅弁になるぞと感じたが、今のところは従来通り地味な駅弁のままである。なお、現地では要予約。
上記の駅弁「前沢牛めし」の、2005(平成17)年時点での姿。中身と価格は2003年版と同じだが、容器が赤くなり、実態に合わせて駅弁の名前を変えている。これで「前沢牛めし」三種類それぞれに別個の名前が付いたので、注文や整理がしやすくなった。
上記の駅弁「前沢牛めし」の、2008(平成20)年時点での姿。2009年1月の京王百貨店の駅弁大会への出品に向けたリニューアルだろうか。容器がコンパクトになり、付合せがフルーツからわさび菜に変わり、掛紙が大きくなり、値段が100円上がった。味は変わらず、中身が減ったような印象はない。列車内での消費に適した形にバージョンアップした感じ。
2014(平成26)年1月の京王百貨店の駅弁大会で販売。そこでしか売られなかった疑義駅弁と考えられる。商品の名前は、前年の2013年9月8日のIOC総会における、東京五輪の招致プレゼンテーションでの滝川クリステル氏の演説からの流用だろう。この頃はテレビで大いに繰り返し放映された。
中身は、既存の一ノ関駅弁の、前沢牛めしと前沢牛ローストビーフ肉巻にぎり寿司の組み合わせ。半分がローストビーフにぎり寿司が2個と玉こんにゃくとガリ、半分が白御飯の上に牛そぼろと牛肉煮を載せた「牛肉どまん中」タイプの牛めし。その牛めし側がなぜか食感も風味もとにかく固く、同じ調製元の商品ならば肉寿司5個で1,250円のほうが断然にお得だと感じた。
2011(平成23)年7月の新作か。赤いプラ製トレーを接着した長方形の容器に透明なふたをして、平泉の中尊寺本堂前の門と駅弁の中身の写真を印刷した掛紙を巻く。中身は酢飯の上の半分を前沢牛ローストビーフ、半分を牛肉炙り焼きと錦糸卵とわさび菜で覆い、玉こんにゃく、ダイコン味噌漬、しょうゆとねりわさびを添えるもの。
値段も味も高級な牛肉駅弁。東京駅その他の「駅弁屋旨囲門」や仙台駅などでのJRの駅弁催事に出てきているようだが、どうも現地での販売はなさそう。そもそも一ノ関駅のローストビーフ駅弁はすべて、その存在を事前に知り得て予約を入れないと買えない感じ。現地での需要と催事での要求の差が、ここにある。後に現地売りも行われた模様。2015年頃までの販売か。
苦節約20年、2008年の挫折を経て「平泉−仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群」は、2011年6月のユネスコ世界遺産委員会で世界文化遺産に登録された。同年3月の東日本大震災による地震被害とその後の風評被害で、東北地方の観光地は特に観光客数が激減する中、実際に5月のGW期間中の観光客数が85%も減少していた平泉には、登録直後から観光客が押し寄せるようになった。
※2021年3月補訂:終売を追記2010(平成22)年12月20日に一ノ関駅と盛岡駅と大宮駅で発売したという、おそらく既存の駅弁「特製前沢牛ローストビーフ弁当」のリニューアル品。翌年1月の京王百貨店の駅弁大会での実演販売へ向けた投入か、大宮駅の駅弁売店「駅弁屋旨囲門」の息がかかったか。小さな長方形の容器に、商品の名前を書いた白い掛紙を巻く。
中身は名前のとおり、前沢牛のローストビーフを巻いたにぎり寿司が5個に、玉こんにゃくとガリとタレを添えるもの。5カンで1,250円だから、1カン250円と計算してしまい、食べ甲斐という点では以前のローストビーフ弁当が好みだ。今回の京王では切り口を変えてチラシでも推されて好調に売れたようだが、この駅弁の存続はこれからが正念場だと思う。現地ではどうも予約限定商品である模様。価格は2011年の購入時で1,250円、2017年時点で1,350円。2020年までの販売か。
※2021年3月補訂:終売を追記2009(平成21)年9月1日に盛岡駅の駅弁として発売した模様。調製元は一ノ関駅の駅弁屋であり、今回の購入箇所は上野駅で、平泉の名が駅弁の名前に入っているため、とりあえずここに収蔵する。長方形の赤い容器を、商品名を書いた黒い掛紙で巻く。中身は白御飯の上に岩手県産牛肉のカツを載せ、パプリカとわさび菜とソースを添えるもの。
牛カツは今まで臭いか硬いものしか食べたことがなかったが、牛肉を3層にしたというこの牛カツは薄身で無臭とはいえ味とサクッとした食感はいい感じ。しかし平泉との関連性は、何もないのではと思う。翌2010年までの販売か。
※2016年10月補訂:終売を追記1979(昭和54)年9月3日7時の調製と思われる、昔の一ノ関駅弁の掛紙。どんな中身であったかは、資料がないので分からない。東北新幹線の開業に向けて1976(昭和51)年から国鉄と東北六県が実施したキャンペーン「北へ向かって」のロゴマークが見える。
昭和50年代のものと思われる、昔の一ノ関駅弁の掛紙。絵柄は上記の「いわて牛の肉めし」と同じ。国鉄「北へ向かって」ロゴマークがあるので1976(昭和51)年以降、調製元の一関市の市外局番が1979(昭和54)年頃からの4桁でなく5桁なので、上記のものより少し古そうだ。当時も現在も、駅名が「一ノ関」で市名が「一関」なのだが、この掛紙ではそれが逆転してしまった。