札幌駅から快速電車で30分強。小樽市は札幌市の北西で日本海に面した、人口約11万人の港町。北海道開拓の玄関口として19世紀末に貿易港として繁栄、第二次大戦後は大陸側の共産圏化やエネルギー革命などにより衰退し、現在は札幌市のベッドタウンであるとともに、旧市街地の観光で賑わう。駅弁は駅舎の土産物店に置かれることがある。1903(明治36)年6月28日開業、北海道小樽市稲穂2丁目。
小樽駅の土産物店の駅弁売り場で買えた棒寿司。寿司惣菜向けプラ容器に、太巻き寿司1本6切れを横たえ、調製元を代表する商品を書いた掛紙に「ほたて」の名を添えて巻く。この駅で2009年や2014年に買えて、しかし駅での存在が報じられなくなった、今の記事では燻煙棒寿司専門店と記される、朝里駅前の寿司屋の商品が、小樽駅で復活したか、実は売り続けられていたか。酢飯と燻煙ものらしいホタテのみを海苔で巻く、世に珍しいホタテ太巻。店に残る価格表示では、他に「さーもん」と「さば」が、同じ姿と価格で売られるらしい。
小樽駅は、JTB時刻表でも京王百貨店の駅弁大会でも、駅弁を売る駅と紹介される。しかし今の小樽駅で、駅弁の存在を感じることは難しい。今回の訪問では午前中に駅弁はなく、昼下がりにはこの商品を残して完売、予備知識を得て駅舎を出て訪れた国鉄時代からの駅弁屋の弁当店はなんと日祝定休。今はオーバーツーリズムという外来語が使える、観光客で満員の小樽駅で、都会の催事で賑やかな海鮮駅弁たちには出会えなかった。
2023(令和5)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売。長方形のプラ容器に白飯を詰め、炭火牛カルビ焼肉で覆い、アスパラガスと紅生姜と、玉子焼ともやしナムルを添える。アスパラガスがどんと斜めに横たわるのは目新しいが、それ以外は各地とこの催事場でもよくある牛焼肉弁当。今回の小樽駅弁の実演販売は、今までの「海の輝き」を代表とする小樽らしさが、寿司や海鮮や市街や夜景が、内容からも掛紙からも消えていたことが興味深い。これが米沢駅や草津駅の駅弁だと言われても、違和感がない。
2023(令和5)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売。本州や四国や九州で、特に瀬戸内海沿岸ではよくある、しかし北海道では身に覚えのない、穴子飯の駅弁。森駅「はもめし」以来、道内では約60年ぶりのアナゴ駅弁かもしれない。長方形の容器にタレ御飯を敷き、焼き穴子のタレ漬けで覆い、白ごまを振り、山わさび、玉子焼、柴漬けを添える。値段を気にしなければ、柔らかな身とタレや焼きの香りで、姫路駅その他瀬戸内海のアナゴ駅弁に負けないうまさ。今回の小樽駅弁の実演販売は、今までの海鮮一色を改め、焼き穴子、牛焼肉、豚丼を揃えて、印象を変えてきた感じ。
浅い長方形の容器に、カキの煮汁で炊いたという茶飯を詰め、カキ煮とニンジンと刻み海苔を散らし、大根みそ漬を添える。掛紙にはその中身と小樽天狗山ロープウェイの写真を載せる。有名な厚岸駅の駅弁「かきめし」に似ていて、風味は似ず、味も香りも物足りないくらい弱いと感じた。価格は2009年の購入時で1,050円、2014年4月の消費税率改定で1,080円。
※2021年3月補訂:解説文を整理2005(平成17)年11月6日頃の調製と思われる小樽駅弁の掛紙。上記の2009年のものと同じに見えるが、食品表示ラベルの形式に加えて、調製元の社名や所在地、リサイクルマークや駅弁マークの位置も異なるため、版が違う模様。価格や中身は同じ。
偽物の駅弁。スーパーの駅弁催事で、小樽駅の駅弁を名乗る商品。容器の構造は森駅の有名駅弁「いかめし」に似て、中身と風味と価格は福井県の敦賀駅の無名駅弁「越前いかめし」に似る。掛紙では駅弁をうたわないが、左端注記に「容器・空ビン・あき缶等はくず入れにお捨てください。」と、駅弁を臭わせる。
駅弁として疑義を感じる以前に、商品には電話番号「0120-001452」を除いて調製元や消費期限など製造者に関する情報がまったくなく、食品衛生の法令に違反するのではないかと思う。後のスーパーのチラシでは小樽駅弁ではなく「小樽名物」と表示したり、現物に調製元の情報が入ったりしているのは確認している。2022−2023年の秋冬の駅弁大会シーズンでもまだ、性懲りもなく売られている模様。
1981(昭和56)年9月の発売か。小樽の駅弁や実演販売商品で共通して使われる、浅く平たい折箱に御飯を詰め、タケノコ混じりのカニのほぐし身で覆い、シイタケと錦糸卵とグリーンピースで彩り、梅干しを据え、しそ昆布と大根桜漬を添える。掛紙は小樽運河の夜景と中身の写真でできている。値段は長らく850円であったが、2014年時点で980円、2019年時点で1,150円、2023年時点で1,350円へ値上げ。
小樽駅から札幌方面に2駅で小樽築港駅。この駅の脇の旧国鉄用地に建てられた1999年3月開業のマイカル小樽は、開業初年に1,300万人が訪れ大変な話題となったが、マイカル本体の経営破綻に伴い開業2年半にして2001(平成13)年9月に経営破綻(民事再生法申請)。テナントを入れ替えながら営業が続けられ、2003年3月から「ウイングベイ小樽」として営業を再開した。
※2023年6月補訂:値上げを追記2003(平成15)年1月15日に購入した、小樽駅弁の掛紙。中身と小樽駅舎の写真でできていた。
1985(昭和60)年4月19日9時の調製と思われる、昔の小樽駅弁の掛紙。現在の同じ名前の駅弁は中身と駅舎の写真を掲載するが、当時のものは毛ガニの写真と道南の地図を描き、こちらのほうがスケール感がある。
2020(令和2)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売。酢飯をカニ爪とカニ脚とカニほぐし身で覆い、イクラと玉子焼でも覆い、かにしゅうまいとたくあんを添える。見た目で盛り沢山、でも食べれば雑多で殻が扱いにくく、酢飯の使用も味でマイナス。この催事でのみの販売か。
2018(平成30)年1月の京王百貨店の駅弁大会と阪神百貨店の駅弁大会で販売。現地で売られるかは不詳。四角い容器に酢飯を敷き、カニの棒肉をぼぼぼぼっと並べ、カニほぐし身とカニ爪、錦糸卵、玉子焼、甘酢生姜で覆う。飯より多いと感じるくらいのカニだらけ。価格は2018年の発売時や購入時で1,860円、2019年時点で1,890円。2021−2022年シーズンまでの販売か。
※2023年6月補訂:終売を追記2018(平成30)年1月の京王百貨店の駅弁大会で販売。現地で売られるかは不詳。四角い容器に酢飯を敷き、蒸しウニで覆い、カニの脚と爪で彩り、ワサビ漬とタクアンを添えるもの。 飯とウニの間には昆布と炒り卵が入り、ウニの見た目と柔らかさを増量していた。同年の阪神百貨店の駅弁大会でも実演販売。これ以外の場所で売られたかどうか。
2007(平成19)年の秋に駅デビューか。地元で人気とテレビでも紹介される、2006年に朝里駅前で開業した寿司屋と、北海道キヨスクとの共同開発商品だという。今回購入のサバの他に、サーモン版とサンマ版があるそうな。
白い掛紙を巻いた白い紙箱に、太巻きが8切れ。中身は酢飯に燻煙で香りを付けたサバを貼り合わせ、海苔で巻いたもの。海苔の使用を除き、普通のタイプのサバ棒寿司も、味はスマート。駅での販売は2014年頃までか。
※2020年6月補訂:終売を追記上記の小樽駅弁「おたるかきめし」の、加熱機能付き容器版。冬季限定とも、催事限定とも言われる。これは百貨店の駅弁催事での実演販売で購入したのだが、カキから錦糸卵まですべての具の分量が、パッケージの見本写真の半分くらいしかなく、悲しかった。価格は2013年の購入時で1,150円、2014年4月の消費税率改定で1,200円。2017年までの販売か。
※2021年3月補訂:終売を追記2013(平成25)年2月の鶴屋百貨店の駅弁大会で、小樽駅弁とともに実演販売されていたお弁当。上げ底、上げふたの催事向け容器に飯を敷き、ウニ、イクラ、カニなどを盛り、「おたる OTARU」と書かれた、風景写真を使った掛紙をかけていた。味は見た目のとおりで、どこの食べ物なのか分からない内容。価格と本来の商品名は失念。
小樽駅のキヨスクで買えた、土産物タイプの棒寿司。竹皮タイプのボール紙製容器を、商品名を書いた白い掛紙で巻き、セロテープで留める。中身はスモークしたサクラマスの棒寿司を海苔で巻いてスライスした、太巻きに見える棒寿司。調製元は朝里駅前の寿司屋で、他にサンマ、サバ、ニシン、サケのものもある模様。駅では現存しないのではないかと思う。
※2020年6月補訂:終売を追記2008(平成20)年1月の阪神百貨店の駅弁大会で販売。円形の加熱機能付き容器を、中身とカニと小樽運河の写真を美しく豪華に掲載したボール紙の枠にはめる。中身はカニの混ぜ御飯の上にカニほぐし身を敷いた後にカニ脚を3本並べ、レンコンやごぼうサラダなどを添えるもの。
通常のカニ飯駅弁の倍近い価格もあり、カニの風味はもちろん分量もたっぷり、これを食べたら普通に戻れないかもしれない。しかし残念ながらこの商品は、阪神百貨店の駅弁大会限定ながら小樽駅の駅弁を名乗る疑義駅弁だった模様。価格は2009年の購入時で1,890円、2014年4月の消費税率改定で1,950円。現存しない模様。
※2020年4月補訂:終売を追記小樽駅の助六寿司駅弁。小樽の寿司といえば観光の名物だが、この駅弁はそうでなく、昔ながらの駅弁としての普通寿司。折箱に太巻4個、細巻3個、稲荷2個と紅生姜を詰めておしまい。他に同じ調製元で2種類の寿司があったが、掛紙があったのはこれだけで、他は見るからにスーパーの惣菜であった。価格は2004年の購入時で460円、2014年4月の消費税率改定で480円。2019年時点で存在しない模様。
小樽駅の駅弁は、駅弁売店や立ち売りでなく、駅のコンビニで売られる。デパートの駅弁大会での小樽駅弁の盛況と異なり、旅の雰囲気はまるでない。小樽駅でコンビニを収める駅舎そのものは、上野駅を模して1934(昭和9)年竣工の歴史ある建物で、見上げれば吹き抜け風のホールが気持ちよい。
※2020年4月補訂:終売を追記小樽駅の特製幕の内弁当。特製でない幕の内弁当は掛紙のない普通の惣菜弁当なので、こちらだけを購入した。市販の仕出し弁当向けボール紙箱に、道南の地図と北海道最古級の蒸気機関車しづか号のイラストを載せた掛紙をかける。中身は日の丸ご飯に蒲鉾や玉子焼やエビフライ、そしてニシン甘露煮や帆立やイカ・イクラ・数の子和えにシウマイや大学芋など、かすかに北海道らしいうまいものがいろいろ詰まる。価格は2004年の購入時で850円、2014年時点で900円。2019年時点で現存しない模様。
港湾都市として明治期に繁栄した小樽は、札幌の台頭と戦後の日本海側諸国との交易の減少により衰退したが、そのため銀行や倉庫など明治期のレトロな建物が、市街地に多く残った。昭和末期の道路拡幅事業の副産物である運河散策路が予想外に大当たりした結果、現在は押しも押されぬ観光都市。一年中朝から晩まで、観光客が市街地を右往左往している。
※2020年4月補訂:終売を追記昭和40年代頃の調製と思われる、昔の小樽駅弁の掛紙。小樽水族館ができた1958年以降、普通弁当の価格の上限が200円になった1966年以降、小樽市の市内局番が2桁になった1972年頃以前のものか。鰊御殿、日和山燈台、水族館が簡単なスタンプのようなイラストで描かれる。小樽が観光地として認識されるのは1990年代に入ってからだと思うし、その目玉である運河はここに登場しない。
1950年代、昭和30年前後のものと思われる、昔の小樽駅弁の掛紙。収集者は1954(昭和29)年のものとみなした。下記の「寿し」と同じく、商品名と調製元とエビでできているが、こちらは甘えびかボタンエビか、小樽でも水揚げがありそうな姿をする。駅弁の寿司はそんな海鮮でなく、今も小樽駅の駅弁にある助六寿司であるはず。
1950年代、昭和30年前後のものと思われる、昔の小樽駅弁の掛紙。収集者は1953(昭和28)年4月10日の調製としていた。北海道では獲れないイセエビを描いたように見える。小樽は当時有数の貿易港として遠方から何でも手に入れられたと考えるのは空想が過ぎるか。鉄道に関する注意書きなどがないため、駅弁でなく駅前食堂が折詰に使う掛紙かもしれない。
1953(昭和28)年3月1日の調製と思われる、昔の小樽駅弁の掛紙。収集者が箸袋とともに、スクラップブックに貼り付けた。小樽の何かを表したり描いたわけではないように見える。
戦前のものと思われる、昔の小樽駅弁の掛紙。その名前から、弁当ではないと考えられる。1911(明治44)年から1944(昭和19)年まで小樽の名物であった、小樽港で石炭を積み出した手宮高架桟橋の絵柄を、「小樽駅 構内売店 南小樽駅」「小樽 意匠登録願 名物」「代表的名菓」「萬人之嗜好」「創製 太平楽 本舗」「小樽みやげ」「風味高尚」「四味四色」などの文字で囲む。
1923(大正12)年8月7日の調製と思われる、昔の南小樽駅弁の掛紙。函館本線が手宮線を分けた南小樽駅には、現在の小樽駅とは別の構内営業者がいて、駅弁を販売した。第二次大戦中の1943年に小樽、南小樽、銭函、余市駅の構内営業者6名が合併、1948年に解散した後、南小樽駅に駅弁は残らなかった。
1922(大正11)年の調製と思われる、昔の小樽駅弁の掛紙。同年に上野公園で開催された平和記念東京博覧会で英国の皇太子殿下が来日されたことを記念して、全国各地の駅弁屋が同じデザインの記念掛紙を使用したもの。周囲に日本と英国の国旗を配し、右に駅弁の名前、左下に調製元、下部に日英の歓迎文、上部の2枠は広告枠。